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第12話 突然の通知

 名前から判断すれば、木の実にだけ通用する鑑定スキルだ。あいかわらずの用途の狭さだが、以前習得した【鑑定(ビー玉)】よりは実用性がある。そして、予想通りの効果なら、俺にとっては非常に有用なスキルだ。


 視線を手元に落とす。毎食二つ食べるので、もう一つスキルの実が残っている。この実を鑑定してみると……


◆スキルの実◆

品質:S

スキル【農家の心得】を習得できる特殊な木の実


 おお、予想通りだ。スキルの実を鑑定すると、習得可能なスキルが事前にわかる。これは大きいぞ。これで大量にある微妙スキルを避けて、有用なスキルだけを習得することができる。


 手元のスキルの実は【農家の心得】が習得できるようだ。すでにもいでしまったのでこれは食べよう。効果はおそらく収穫効率が上がるとかそんなのだろう。今のところ農業はノータッチだが、あって困るスキルではない。


「ピコ! あ、もう食べちゃったか」

「食べた! うまい!」


 ピコもノアたちもすでに実を食べ終わっていた。どうせなら、食べる前に鑑定しておきたかったが仕方がない。


 まぁいいさ。これからはスキルの実を選んで食べられる。強化の効率が上がるぞ。さて、早速チェックしてみるか。


 スキルツリーになった状態のスキルの実に視線を合わせて、鑑定スキルを発動する。よしよし、採取前でも鑑定はできるな。


 うーん。けん玉技能に長話耐性、オレオレ詐欺看破か。わかっていたことだが、外ればかりだな。


 お、こっちは肉体強化(微)か。これは前に俺が習得したスキルだな。被ることもあるのか。重ねて習得したらどうなるんだろう。強化されるのか、それとも意味はないのか。興味はあるが、まずは他メンバーへの取得を優先させたほうがいいだろうな。


「ケント、どうしたー?」


 夢中になって実を鑑定していたら、ピコが不思議そうに俺を見上げていた。いきなり立ち上がって木の実をジロジロ見ていたら不思議にも思うか。


「ええとな。この木の実には特別な力があるんだけど」

「特別? うまうま!」


 うまうま? よくわからないが、たぶん伝わってないな。


「俺が使う魔法があるだろ?」

「まほー? 泡!」

「そうそう。ああいう魔法がときどき使えるようになるんだ」

「そうなのか!?」


 ピコさん、大変衝撃を受けた模様。耳がピンと立っている。以前にも説明したことはあるんだが……そのときは理解できていなかったようだ。


「泡! ピコも泡、使う!」


 ぴょんぴょん飛び跳ねて、石鹸魔法が使いたいとアピールしてくる。可愛い。


「はは。ピコは泡が好きだな。でも、そのためには泡が使えるようになる実を探さなきゃダメだ」

「探す! 泡の実、どこ!」

「残念ながら簡単には見つからないなぁ」

「うなぁ〜……」


 シュンとするピコの頭を撫でて励ます。


「見つけたら教えてやるからな」

「約束、な!」

「そうだな。約束だ」


 できれば石鹸魔法だけじゃなく、飲み水魔法も覚えさせたいな。だが、全てはスキルの実次第だ。気長に探すしかないだろう。


「にゃ?」


 今度はノアが問いかけるように鳴いた。ピコとの話を聞いて疑問に思ったんだろうな。


「探せるのかって? ああ、さっき食べた実で、どんなスキルが取得できるかわかるようになった」

「にゃ〜」


 興味深そうにノアが頷く。人間なら「ほほう」とか言ってそうな雰囲気だ。


「期待してるとこ悪いが、ぱっと見る限り、クズみたいなスキルばかりだぞ。有用なスキルは少ないみたいだ」

「にゃーにゃ」


 残念そうにノアが首を振る。今度は「そりゃそうか」ってところかな。とはいえ、落胆よりは納得寄りのリアクションだ。まぁ、ノアは俺が妙なスキルばかり取得しているのを知っているからな。そうそう都合よく有用なスキルが手にはいるとは思ってなかったようだ。


「ニャ! ニャ!」


 今度はタイガか。ちらちらノアのほうを見ながら何か訴えている。右前足を繰り出すような仕草をしているから、言いたいことはすぐにわかった。


 どうも、タイガはノアをライバル視しているみたいなんだよな。特に戦いにおいては負けられないと思っているようだ。だけど、現状はノアが一歩も二歩もリードしている。スキルの実でノアの衝撃波が大きく強化されたせいだ。なので、同じスキルを見つけたら直ちに俺に寄越せというようなことを言ってるんだろう。


「あー、はいはい。見つけたらタイガを優先するよ」

「ニャ!」


 約束するとタイガは満足そうに鳴いた。


 うーん、安請け合いしたかな。ノアが取得したスキルが何なのかわからないが、たぶん結構なレアスキルだ。そう簡単に見つかるとは思わないが……まぁ、あくまで“見つけたら”渡すという約束なので問題はないか。流石に何もなしでは可哀想なので戦闘系のスキルを優先的に渡してあげよう。


「フランとチャトルは何か欲しいスキルはあるか?」

「にぃ?」

「ニャ」


 タイガの要望だけ聞くのは不平等かと思って話を振ってみたが、フランもチャトルもあまりピンときていないようだ。まぁ、どんなスキルがあるかわからないだろうし、いきなり言われても困るか。二人にはいくつかの候補を提示して、その中から選んでもらう形で提供してみるか。何度かやれば好みの傾向もわかってくるだろう。


 やー、楽しくなってきたな! 何が出るかわからないワクワク感も悪くはないが、スキル構成を自由に考えられるという魅力には勝てないね。肝心のスキルが微妙なので、そこは玉に瑕だと思うけど。しかし、それすらも組み合わせでカバーできるかもしれない。いろいろ考えるだけで楽しくなるな。


 と、その時だ。まるで冷水を浴びせかけるかのように、淡々とした声が頭に響いた。


“勢力図に変化がありました”


 聞き慣れたシステム音声だ。スキルの実を食べるたびに聞いているので、もはや耳に馴染んでいると言ってもいい。ついさっきも聞いたばかりだ。しかし、今回の通知は何故か妙に冷たく感じられた。


“ユーリッド聖樹国で元首が交代しました”

“ハリム王国が国内勢力『アムレス部族』を排除しました”


 いつものスキル取得通知ではない。おそらく、これがシステム音声の本来の役割なのだろう。勢力変化を知らせる通知だった。


 そうだった。ここは戦乱の最中にあるクロニクル・オブ・ロードの世界。そして、俺たちはウォーゲームの“プレイヤー”だ。呑気にスローライフを楽しめる境遇ではない。戦争を主導し、他勢力を駆逐することを望まれているのだ。


 そんな現実を、改めて突きつけられた気がした。

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