表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第6話 幽霊船の出現


 救出された人質の中にはお宝に引けを取らない大物がいた。帝国の国境を越えた北部には自由都市群がある。その地域一帯を取り仕切る金級の商人、ギルドマスターのリエラと従業員達が捕らえられていたのだ。


 ある意味、お宝よりも財を生む重要人物だ。酷い臭気と汚れにも負けず、救出された喜びのあまりレーナに抱きつこうとして雷撃を食らっていた。


「商人達は海賊に拿捕されていた商船で帰らせるとして⋯⋯幽霊船、彼女達は見たそうだよ!」


 興奮して話すレガト。商人リエラの乗る船は海賊達に追われる内に、霧の海に迷い込み幽霊船に出会ってしまったのだ。気がついた時には、船も積み荷も奪われて海賊達の棲家の牢屋だったという。


「海賊達と商人達の証言から、幽霊船は竜の巣を中心に霧の海ごと周回している可能性がある」


 レガトは海図を広げて、現在地から幽霊船の出没する予想図を書き込む。


「内海には潮の流れはないかわりに、魔力の風による磁場で船の操舵が効かない状況に落ちるそうね」


 レガトの予想図にレーナが、自分自身の感じた魔力溜まりを書き加える。航海中の船が行方不明となるのは海賊達のせいだけではない。内海が魔海のように囁かれる理由は海のダンジョン化のせいだった。


「未発見のダンジョンもかなりある外しだよ。幽霊船にならずとも迷い込んでしまい、果てのない航海へ出てしまった船もありそうだね」


 陸地でも、いわゆる協会戦のないダンジョンは存在するが、少なくとも立ち止まることは可能だ。しかし海上では船が動いてしまう。戻ろうにも気づきにくく戻れない船が大半だろう。

 


 これにより、船を向かわせる進路が決まった。レガトは広い内海を闇雲に探すより、不可思議な現象には魔法で対応する方が効率が良いと判断したのだ。



「レガト! 海面に大渦発見!!」

「大渦に魔物が!!」

「前方に靄! 」

「何か飛んできたよ!!」

「霧が近づいてる、全員注意して!」


 海賊島を出港した「星竜の翼」の船は、事前の会議で絞り込んだ目的の海域に進入していた。急激な天候や海面の変化に、沿岸部や海賊島あたりでは見慣れない大型の魔物。


 幽霊船がダンジョンの生んだ産物なのか、幽霊船自体がダンジョンなのか、魔の海域まで来てはっきりした。


「この動く海域⋯⋯霧の海のダンジョンというのだろうね。幽霊船はダンジョンの中に存在するダンジョンだな」


 レガト達は便宜上、霧の海を内海に存在する湖に例えて「ミストレイク」 幽霊船を「ゴーストシップ」と名付けた。レガトは異常な魔力の流れを追う。大渦は魔力による圧力による変化の前兆だと確信出来たからだ。


 日が暮れ始め暗くなりだした海面に、唐突に巨大な船があらわれた。いくらなんでも、この大きさの船を見逃すのは無理がある。レガト達はシーラスで見た巨大戦艦より大きな幽霊船を見て、喜ぶよりも唖然として固まった。


 内海に浮かぶ幽霊船「ゴーストシップ」は、本当に存在した。御伽話や船乗りの怪談話でよく上がる幽霊船と、この「ゴーストシップ」は違う船なんじゃないかと思われた。


「このダンジョン『ゴーストシップ』は夕暮れ時から夜明けまでしか入れない特殊なダンジョンだな」


 砂漠の国の蜃気楼の街の話しにもそういう類いのダンジョンがあると聞いた事があった。幽霊船も時間制限のあるダンジョンの一種だとレガトは考えていた。


「時間過ぎると次の日の夕方まで出られない?」


「たぶんね。こちらの一日とアチラの一日が同じとは限らないけどね」


 リモニカの不安にレガトは推測した考えを伝えた。砂漠と違ってダンジョンに残るとどうなるのかわからない。ここは海の上だからだ。幽霊船だけでなく「ミストレイク」自体も動く。放り出された先が内海のどこになるか、確証はなかった。


「まあ、考え立って始まらないよね。リモニカ、持ち場はゴブリンスタークに任せて、全員を甲板まで集めてくれ」


 レガトは仲間達の集まる間に自分達の船と「ゴーストシップ」をロープで繋ぐ。巨大なので分かりづらいが、幽霊船はいまも彷徨い動いている。黒い魔力の瘴気が見えるようで、魔物がやって来る心配はあるが「ゴーストシップ」上にベースキャンプを置くよりマシなはずだった。


「パーティーを七つに分ける。その内の一つは船で留守番をしてもらう」


 居残り組はレーナとアリル、それに戦闘能力の低いメンバー達だ。レガトはベネーレをチラリと見たが、目を逸らされる。好奇心旺盛なお姫様のエスコートは彼の仕事と決まった。


「二人が交代で船を守っている間に、最初は六つ、次は編成を変えて三つずつパーティーを「ゴーストシップ」内へ送りだす」


 最初は広範囲に探索班を向かわせ、短時間で地形の把握に務める。疲労や負傷、戦闘能力のバランスを考えて、二度目は三つのパーティーを交代で探索させるつもりだ。可能な限り幽霊船内を調べて回り、魔物の素材やお宝が一杯になったら戻ってくる。


 レーナとアリルが船の番をしていれば、「ミストレイク」からの魔物や不意の訪問者にも対応出来るだろう。


 冒険はするが、無理はしない。何せお宝が目当てなのだから。滞在時間をしっかり考えて、レガトは負荷の少ない方法でとことん働かせる気だとわかり、仲間達はげんなりしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ