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愚者を仰げ  作者: 柊 要
1章
27/57

12 「時視点」



光が差し込み、目を強く瞑る。眩しい。やだ。まだ寝たい。

まだ寝た…


「嫌なんで寝てんの⁉︎」


寝そべっていた体を勢いよく起こす。


「あれ…?」


視線を向けた先は豪奢な部屋だった。私が寝ていたのはふかふかのベッドだった。

困惑しながらも状況を確認しようと辺りを見渡した時。


がっしゃーん‼︎


ガラスが割れるような音が聞こえた。

目を向けると扉を開けたランゼ君がわなわなと震えながら此方を凝視していた。


「.......⁇⁇」


え?何でランゼ君がここにいるの?ていうかここ何処ー?


深く考える間もなく、私の腹に猪突猛進してきた

ランゼ君の重い一撃がクリーンヒットした。


「ぐへふっ⁉︎」


「時さぁあん!良かった!あの人の言ってた通りだった‼︎」


べちゃべちゃと私の服に涙と鼻水を擦り付けながら泣き笑いをする。


「生きててくれて、本当に良かったです…」


会ったばかりなんだけどな…こんなに頼されてもな…。と思わず苦笑してしまう。


「ら、ランゼ君。嬉しいんだけどさ……死にそうだから放してほしいな?」


「あ、はい、すみません…」


ランゼ君は少し残念そうに肩を落とすと少しだけ力を緩めた。


「そういうばランゼ君!そっちこそ大丈夫なの⁉︎」


ベットに腰かけていたランゼ君の肩をがくがくと揺らす。


「え、とと時さん⁉︎」


「大丈夫ですよ!ほら!この通り!」


私から即座に距離を取ると、服を少しめくって、お腹辺りを見せる。


「あれ…。本当だ。傷一つないなんて……」


でも、私が見たのは幻覚の類でもないだろうし…。

本当に訳が分からなくなってきた。


「時さん…。一旦お水でも飲んで落ち着きましょう」


「そうだね…。ありがとう」


ランゼ君は隣にあった机を見て首を傾げる。


「あれ…?ここら辺に置いたはず……っは!」


ランゼ君は何かに気づいたかのように声を上げ、神妙な顔つきで此方を見ると、


「すみません。時さんが起きたのが衝撃的過ぎてコップ割りました」


あの音コップ落とした音だったのかよ⁉︎‼︎

絶対怒られるじゃん⁉︎


「…ん?」


私は少し引っかかるものを感じ、慌てながらガラスの破片を拾うランゼ君を凝視する。


「ちょ、ランゼ君?ちょっと聞いてもいいかな?」


「はい。何ですか…?」


「まず、確認すると私たちはランゼ君達と一緒に王都を目指してたんだよね?」


「はい」


「それから兵士たちに見つかって私の能力で逃げたよね?」


「はい」


「それで、二人組が現れて、ランゼ君はお腹を貫かれたんだよね?」


「はい」

「それから…」


あれ?記憶がないな…。分からない。


「もしかして、覚えてませんか?」


「あ、うん」


もしや、ランゼ君ならなぜこうなったかの成り行きを知っているかも…!


「すいません。ちなみに僕も腹が痛すぎて寝てたんで何も分かりません」


「たしかに…⁇」


じゃあ何でここにいるんだ。


「あ、でも僕たちを襲った人たちが一応匿ってくれたらしいですよ!」

この傷を治したり…、とランゼ君が例を挙げる。


「え、は⁇」


「そこからは私が説明するわ」


扉付近に、鮮やかな水色と紺藍色が特徴的な髪色をした吸血鬼が立っていた。


「初めまして。時、そしてランゼ」


「私は貴方たちを襲った二人組のあるじのレイン・フォン・アイジストよ」


「…は?」


この人今さらっとやばいこと言わなかったか?


「殺すつもりはなかったのだけれど、襲ったのは覚悟を見せてもらおうと思ってね」


「覚悟?」


「ええ、リルを殺すんでしょ?」


「なんで、それを知って…!」


「お母さま、殺されたそうじゃない」


「ーッ」

嫌な記憶が頭によぎる。ランゼ君が驚いたように此方を向いた。


「復讐するって考えるのは自由だけど、今の貴方たちじゃ力不足よ。まず、リルのところに行くどころか、下っ端に殺されておしまいよ。まず王宮すら入れないでしょうね」

口元の笑みを崩さないまま、はっきりと言われる。


「…」


「そんなこと…分かってる」


「でも、それでも私は敵を討ちたいから!だから死んでも足掻ききってやるって決めたから!」


何故かこの人に戦布告しているみたいになったが、

私は既に自分が死んでもいいという覚悟は固めている。

死んでもいいから、ルナとお母さんの敵を取りたいんだ。

例えお兄ちゃんたちに批判されたってこの意思は揺らがない。


「合格よ」


ぱちぱち、と称賛の拍手を送られる。←


「はい⁇何が?」


「リルを殺すために、協力してあげる」


「は?いやいやいや!何で殺しにかかってきた奴と協力しなきゃいけないわけ?」


「だからさっきのは試したって言ってるのに……」


「私がいたほうがいいと思うわよ?だって私、リル直属の部下だし」


がっしゃーん‼︎‼︎

ランゼ君が再び拾い上げ切ったガラスを床にまき散らした。


「そうねぇ…三大将軍って知ってるかしら?」


「三大将軍ってあの⁉︎」


ランゼ君が吃驚したようにレインさんを凝視する。

どの三大将軍だよ。ていうか直属の部下なんて絶対仲間にしちゃだめだろ………。


「なんでそんなすぐ裏切りそうなやつと協力しなきゃいけない訳?

ていうかお姉ちゃんたちはどこ!」

威嚇気味に問いかけると

「嗚呼。色のこと?色なら今私が出したい王都で有名なチーズケーキを食べているところよ」

淡々と答えられた。

は?何もう打ち解けてんの?絶対だめだろ。ていうかチーズケーキするい。


「時、一旦落ち着け。レインは別に悪い奴じゃないからな?」


「お兄ちゃん!」


レインさんの隣に、お兄ちゃんが呆れたように立っていた。

兄を見たランゼ君が一瞬嫌な顔をしたのは気のせいだと思いたい。


「あら、遅かったじゃない。滅茶苦茶怪しまれるんだけど」


「それは明らかにお前の行動に問題があったからだろ」


「ただどれだけ戦えるか試しただけじゃない」


「だからそれが駄目なんだよ…」


呆れたようにお兄ちゃんが苦笑する。


「お兄ちゃん…。その人危険だから離れたほうがいいよ!」


「嫌、レインは本当に大丈夫だから安心しろ」


「何でそう言い切れるの?ていうかなんでそんな仲良さげなわけ?」


「レインと俺は旧友なんだよ」


「え、本当に大丈夫なの…?洗脳されてない…?」


「ひどい言いがかりね。そんなことはしてないわ」


冗談めかした口調で、両手を挙げる。

怪しい、と思いつつもお兄ちゃんが操られているようには見えない。

じゃあ、本当に友達なのだろうか…。

まあ確かに、お兄ちゃんは街とかに結構出歩いていたし、友達が出来ても可笑しくはない…か?でも旧友?ていうかなんで王女直属の部下なのに友達なんだろう…?


「まあ安心しなさい。ちゃんと協力するわ。私もリルが死んだらメリットしかない訳だし」


そんなに王女嫌いなのかよ。


「あの、ちょっと。頭が追いつきません…」


ランゼ君が目をぐるぐるさせながら言った。どうやらパンクしたらしい。

私も同じ気持ちだわ。


「そういや!色さんはともかく、シルファは大丈夫なんですか⁉︎」


「嗚呼。あなたの弟君ね?」


「あの子なら今、訓練をつけてもらってるわ」


「「訓練⁉︎」」


ランゼ君と私の声が被る。


「そのままの通りよ。今、森で貴方をを教しかけてた一人と一緒に戦っているわ」


レインさんはランゼ君を指さしながら面白そうに笑った。

ランゼ君は少し気分の悪そうな顔をして、心配そうに弟の名前を呼んでいた。


「丁度終わったみたいだし、呼んであげるわ」


レインさんが軽く指を鳴らすと、私とランゼ君の前に、

ボロボロのシルファ君と、無表情の人形が姿を現した。


「シルファ⁉︎」


「ランゼ君を襲ったやつ!」


二人同時に叫ぶ。ランゼ君は倒れかけたシルファ君を支え、私は歯止めもきかず、全力でナイフを片手に襲い掛かる。


「はいはい、じゃれあいは後にしなさい」


ぴたり。一瞬、レインさんの魔力にあてられ、体が硬直した。


「…すみません」


この人がお兄ちゃんの旧友で、なお手伝ってくれるなら、仲が悪くなるのも後々動きにくくなるだろう。

信用は出来ないけど、ここは謝っておくのが最善だ。

人形じみた奴は、無言で此方を一瞥してから、レインさんの方を向くと、深々と頭を下げた。


「戦ってみてどうだったかしら?」


「持って5秒でしょう」


悔しそうに、シルファ君が唇を噛んだ。


「まぁ、精々強くなりたいなら、この子たちにしがみつくことね」


シルファ君を見て微笑むと、彼女の後ろから、もう一人の人形が姿を現す。


「さ、挨拶しときなさい。大切な仲間であり、客人よ」


レインさんが二人を前に出して、微笑んだ。


「シキと申します」


軽くそういうと、決まった角度でお辞儀をする。本当に仕草一つ一つが人形みたいだ。


「シゴと申します」

ランゼ君を貫いたほう(それしか印象がない)がお辞儀をする。これまた人形のようだった。


「ランゼ様、時様。申し訳ございませんでした」


人形のような無表情で顔を上げ、そしてまたゆっくりと頭を下げた。軽い謝罪。

そう感じるのは、シゴさんが人形のようなのだからなのだろうか。


「全然大丈夫ですよ!結果、生きてたわけですし!」


「でも…なんでシルファを…」


自分と身内は違ったのか、殺意を込めた視線をシゴに向ける。


「シルファ様自身から提案なされたことです」


「え?シルファ……?」


ランゼ君は吃驚したようにシルファ君を見る。


「別に…兄さんには関係ないし」


「もう一度お願いします。次こそは十秒持つようにします」


ランゼ君を押しのけると、シゴさんに頭を下げる。

シルファ君?本当に何があったんだ?


二人組が去った後、


「もうだめだ……シルファが話してくれない。僕を押しのけて…鳴呼………」


押された当の本人は絶望したように地面に突っ伏していた。


「…ランゼく~ん?」


「嗚呼…シルファ……こんなお兄ちゃんでごめんよ…」


駄目みたいだ。これはもう放置しておこう。そのうち立ち直るだろう。


「レイン様。引き続き調査に参ります」


シキさんはレインさんに頭を下げると、姿を消した。

さっきから思ってたけどレインさんといい、シゴさんたちって滅茶苦茶強いのでは?

あ、でもなんか将軍って言ってたし…

え、絶対的に回したくない。


「それじゃあ今日は各自自由行動にしましょう!」


と、残った私とランゼ君、お兄ちゃんに向かってレインさんが手を叩いた。


「そうねえ、時は折角だから色に会いに行ったらどうかしら?結構心配してたわよ?」


確かにそれは大事だ。お姉ちゃんの安否は確認しておきたい。

ていうかこの感じ、本当に協力してくれるのか……。


「ありがとうございます。そうさせてもらいます」


「ええ、そうね、ランゼ君は…」


「兄弟同士話し合って和解してきなさい!←私だって昔姉とよく喧嘩していたもの!

黙ってちゃ何も分からないわ!一旦話しかけに行きなさい!」


「は、はい…。ありがとうございます」


少しランゼ君の目に光が灯った。

此奴よく今まで弟なしで生きてこれたな。


「では…」


「ええ。また夕飯くらいには呼びに行くわ。それまでは兄弟で水入らずの会話でもしてきなさい。」


「あ、時もゆっくりするといいわ」


「ありがとうございます」


そういって、扉を閉めて歩き出す。


ランゼ君は訓練場を走って探しに行ったため、今は一人だ。


「…」


そういえば、お姉ちゃんがいる場所知らないんだけど。

知っている情報も


「ケーキを食べている」


っていうことだけだし。


「...場所だけ聞きに行こ」


踵を返して、扉近くまで来ると、微かな話声が聞こえた。

声的に、お兄ちゃんとレインさんだろう。丁度関りも気になってたし…。

私は息を顰めて話を聞くのだった。




____________





それにしても久しぶりね、アル」


「…その名は捨てたんだ。やめてくれ」


あら、ごめんなさい。目の前にいる可憐な女は、冗談めかしたように笑った。


「また、貴方に会えてうれしいわ」


「俺もだ」


「それにしても、あの子と達と一緒に過ごしてたのね」


「通りですぐにリルに見つかったわけだわ」


「これでも数年は持った方だ」


「ま、それはすごいことかもね」


「……私はリルを許さないわ。絶対に殺して見せる」


「それは俺も同じ。あいつらの信用が上手く勝ち取れたみたいで良かったよ」


「ええ、それはそうね。どうやら全員能力に目覚めたみたいだし、

このまま行けば上手く駒として使えるわ」


「…お前、悪い奴だな」


「貴方には言われたくないわ」




ばん!



音を立てて、勢いよく扉が開く。

そこには、赤黒い髪をした少女が立っていた。


「あら…」


「バレちゃったわね」



「どういうこと…?」


「駒って…。お兄ちゃんは何を考えているの⁉︎」

「レインさんも、お兄ちゃんも、全てはこの状況を作るためにルナたちを殺したの⁉︎」


「……どうする?記憶でも消しましょうか?」


「………いや、いい」


「時の能力は厄介だし、後々振り出しに戻ったり、怪しまれたりするのは面倒だ」


「もしかして話すのかしら?」


「………鳴呼」


「俺たちがこうやって動く理由が分かったほうが、あっちも納得するだろ」


「まず時。オレとお前が兄弟であることも変わりないし、レインが旧友であることも本当だ」


「ただ、お前らがリルを殺そうとするように仕向けたのは俺だってことだ」


「なっ!」


少女は驚愕の声を上げ、怒りに表情を染める。


そんな少女を横目に、




「俺は、あいつに姉を殺されたんだ」


青年は語った。









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