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愚者を仰げ  作者: 柊 要
1章
26/57

11 「人形視点」

人形は鉄球を静かに少年から鉄球をく引き抜くと、軽く振って血を飛ばす。


「…」


主は出来るだけ全員連れて来いと命令をしたが、邪魔なものがいただけ。

だから殺しても仕方がないのだ。問題はない。

もう片方の人形を見る。人形は、視線に気づいたのか、

感情のない瞳で此方を向くと、軽く頷き、大きな斧を出現させた。

抵抗しそうなので、手足を切り落として持っていこうと判断したのだろう。

確かに、そっちの方が良さそうだ。



動き出そうとした刹那、膨大な魔力が空気を震わせた。



その魔力は、先ほど、目の前で少年を貫かれ、絶望していた少女によるものだった。

人形は眉根を顰める。

この少女は多少魔力を持っているだけで、大した力は使えないはずだ。

まず、この少女が纏う魔力は、最初の時では見られないものだった。

ならば、魔力を魔法で隠蔽していたのだろうか?

何にせよ障害になることは変わらなそうだ。

たとえ膨大な魔力を持っていたとして、使い方によっては魔力のない者でも勝利できる。

小賢しいこけおどしなど、数々の経験を積み重ねたく人形にとっては、何の障害でもなかった。

瀕死状態まで追い込み、主に見てもらおう。そうすれば種が分かるだろう。

少女は魔力を纏い浮遊すると、人形を見下ろした。


鮮やかな深緑の髪から、

真っ赤な血が広がるかのように髪色が変わっていく。


主のように、吸血鬼の類だろうか。


だが、これは危険だ。と頭の中が警報を鳴らしていた。

焦りを抑え、鉄球を振りかぶる。



「ごふ、」



気づけば、口から大量の血をぶちまけて膝を着いていた。

腹部からどくどくと血が流れだす。

見やると、鉄球が自らの腹をえぐっていたのだ。


まるで、先ほどの少年のように。


音もなく、少女は人形の前に降り立った。

音もなく、少女は人形の前に降り立った。

顔を上げてはいけない。膨大な魔力を当てられ、

気が狂いそうになるのを抑え込む。

少女は屈むと、此方に視線を合わせて、笑った。


「しね」


その一言が発された瞬間、←痛む腹を無視して後方に全力で飛ぶ。

先ほどまで人形が蹲っていた場所は、

魔力を当てられ、みしみしと悲鳴を上げていた。

魔力を当てた。ただそれだけなのに、


どっと汗が噴き出す。

ふと気づく、右腕が引きちぎられた様な後を残し、消えていた。

激痛が再び襲い掛かる。


感情を表すことが少なく、人形、と呼ばれていたとしても痛いものに痛いのだ。


あれは近寄ってはならない。人形は密かに恐怖を感じ、後退りをする。


しかし、魔力を纏った化け物は、逃がすまいと獣のように目を光らせていた。


手には、なくしたはずの人形の右手があった。



化け物は、咆哮を挙げると、姿を消した。


いや違う。


「後ろかッ!」


後方から魔力を感じ、体制を低くして鉄球を振る。


すると、次は別の場所に出現して、攻撃を入れてくる。


「………可笑しい」


人形は、痛みを抑えながら考える。

捉えたはずの姿は、一瞬で別の場所へと移動している。

そして、少女の入れる攻撃は必ず物理的なもの。

殴る、蹴るなど、必ず体に触れる攻撃。

魔力を持っているにもかかわらず、魔法を一切使っていない。

そして、少女が攻撃を入れた後、

全身が悲鳴を上げるような鈍痛が体を巡り、出血が止まらなくなる。

物理攻撃とは違う、何かの攻撃を受けている。


「…くそ」

このままでは一方的に蹂躙され、何もできないままー

人形は目を見張る。



一瞬、少女の首に掛けてある時計が黒い光を放ったのだ。


その後に少女の場所が移動されている。


もしや、この時計を使い、時間を操っているのではないのだろうか?


時間操作など信じがたいが、この膨大な魔力といい、それなら辻妻もあう。


人形が時計を割ろうと振りかぶった瞬間、頬を殴られ、

二、三回地面にバウンドする。起き上がろうとしても体が動かない。

どうやら体に限界が来たようだった。


「やはり借り物の体じゃ…」


どす黒い色をした魔力が肌を照り付ける。

悪魔は直ぐそこに迫っていた。


「いきてるか?」


少女は笑みを崩さないまま、頭を傾げる。

勢いよく蹴り上げられ、げほげほと咳き込む。


「じゃーな」


少女は黒い瞳で人形を見下ろし、どす黒く染まった時計に手を掛けた。



はずだった。

「あり?」

時計を持った少女の手が地面を転がり、

怯えた表情をした少女の前で止まる。


「ひっ、と、時の腕がっ!」


少女はなくなった手をぶらぶらさせる。


「わるい。あねき」


「えっ」

「と、時?」



「あら?お話し中を邪魔しちゃったかしら?」


月夜に溶け込んだような美しい声が響く。


人形は限界の体を這いずって見上げる。そこには人形が敬愛してやまない(あるじ)が立っていた。


後ろには先ほど共に行動していた人形が控えていた。

どうやら人形が苦戦している間、主を呼びに行っていたのだ。



「おまえ」


魔力を纏った少女は、突然の乱入者に臆することもなく睥睨すると



「じゃま」



目に追えない光の速さで襲いかかった。


「とんだじゃじゃ馬ね」

主は軽くあしらうと、魔法陣を展開させる。


「ただ、物理と魔法じゃ、分が悪いんじゃないかしら?」


「【賢者魁けんじゃかいてい魔術 第二十七魁悌】

戦獄葎極せんごくりつごく】」

魔力を感じさせることなく、魔法を発動させる。

彼女は天才なのだ。

過去に最恐と唄われた賢者の力を、この王だけが扱うことが出来るのだ。


危険を察知したのか、少女は魔力を噴出させながら距離を取ろうとするが、


即座に崩れ落ちる。


「あら、想像よりタフね」



「手加減はしたのだけれど、無傷だとは思わなかったわ」


主は興味深いというように魔力をなくした少女を眺め、

ふと、気づいたかのように此方を向き、軽く指を鳴らす。

するとみるみると体の傷が癒えていく。


「大丈夫かしら?出来るだけ無理はしないで欲しいのだけれど」


「申し訳ありません」


これは大きな失態だ。

人形にとっての一番の恐怖は、彼女に失望されることなのだ。


「別に気にしてないわ。予想外だったもの」


寛大な見心に感謝を述べる。

何を考えているのが分からないところもまた、怖いのだ。


「それじゃあ行きましょうか」


彼女は笑うと、再び指を鳴らした。






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