Ⅰ 「時視点」
この物語は王都というのがあって、王女とか令嬢がいる感じの世界線です。
それでは1話目どうぞ
自然を感じられる美しい小鳥の囁きが響き渡り、目を覚ます。
重い体を起こし、数回、瞬きをする。
意識が覚醒して来たところで
欠伸をしながら顔を洗いにいく。
するとばったり部屋着に着替えた妹に出会した。
「おはよ。時姉ちゃん」
「うん。おはよルナ」
微笑みながら挨拶してくれたので私も微笑んで返す。
この少女は妹のルナ。ふんわりとした桜色の髪が特徴である。
「それじゃ、私は先に兄さんの手伝いしてくるね」
そう言って階段を降りて行った。
一階では、兄が朝御飯の用意をしてくれている。
懐から時計を取り出す。時間が非常に不味かった。
急いで部屋着に着替え、階段を駆け降りていく。
木製の扉をぶっ壊す勢いで入る。やばい音が鳴ったが壊れてはいない。流石である。
「おはよう!遅くなってごめん‼︎」
すると、玉ねぎを切っていた手が止まる。
「おお、時。遅かったじゃねえか」
そう言いながらこっちに包丁向けて来た。怖すぎる。
そういうのは良くないと思う。せめて刺すなら玉ねぎを切ったやつじゃなくてトマトを切ったやつにしてくれ。
「お前今余計なこと考えてんだろ」何故バレた。
「ま、別にそこまで遅くないからいいけどな」
良かった。正座3時間コースかと思った。
まぁ、怒られるのは私じゃないからいいだろう。
「よし、おいルナ〜。お前の分」
「ありがとうお兄ちゃん!!」
そう言いながらオムライスを受け取っていた。いいな。
兄はそれぞれの好みに合わせて作ってくれているので、材料も変わってくる。
どうやら兄以外の朝食は出来ているらしい。
「おい、時、色はどうした?」
お皿を運ぶのを手伝っていると、兄がピーマンを切りながら問いかけて来た。
今更だが姉に会っていないな。通常運転だけど。
「あー、寝てると思うよ」
「あいつ…何回も言わせやがって…」
と、怒りを露わにする兄。
昨日姉がお兄のお気に入りの皿を割ったことは伏せといてあげよう。
「ごっっっーめん‼︎遅れちゃった‼︎」
全員分の食事を並べ終えた時に、姉が転がり込んできた。
扉はものすげえ音がしたが壊れてはいない。流石すぎる。
「おお、おお、色、随分遅かったじゃねえか⁇」
フォークとナイフを姉に向ける。明らかに持ち方が暗殺者である。
南無阿弥陀ー。と念を送っておくことにした。ご愁傷様。
「すいませんでしたッ!今後一切送れません!」
「それは前も聞いたんだよ!」
姉に潤んだ瞳でこちらを見られた。
でも助けてあげるとこちらも巻き込まれそうなので目を逸らしておく。
「裏切り者ぉぉぉおおおおぉぉぉッ‼︎」
叫んでいる姉を無視して妹と席に着く。
「いただきます」
今日はオムライスだ。相変わらず美味しすぎる。
これはもう王都の料理人と並ぶくらいだと思う。
姉もどうやらご飯が冷めるという理由で解放されたらしく、
私がオムライスを食べ終わる頃によろよろと椅子に座った。
私と妹が食べ終わったのと同時に、デザートが出てくる。
なんだかんだこれも一日の楽しみの一つだ。
私は抹茶ケーキ。ルナには桃ケーキ。
今の気分にピッタリだったので、ご機嫌でフォークを進める。
ほんのりとした苦みに少し濃いスポンジがうまくマッチしていて美味しい。
妹もどうやら気に入ったようで、目を輝かせていそいそとフォークを進めている。
さっきまで萎れていた姉も一口目でツルツル(笑)になった。
「ごちそうさまでした」
食べ終わると、そう言ってみんなで食器を運ぶ。
洗い物担当は姉なので各自歯を磨いてから行動する。
何もやることがないので、部屋でゆっくり考えるとしよう。
思考を駆け巡らせているといきなり肩を掴まれる。
「おい時、ちょっといいか?」
一瞬誰かと思い身構えたが、どうやら兄だったらしい。
「どうしたの?」
「悪いんだが今からルナと一緒に買い出しに行ってくれないか?」
そう言って紙とかごを渡して来た。
「うん。わかった」
そう言って受け取る。少々めんどくさいが、仕方ない。
「おう、助かる。ただ、夕方には帰ってこいよ?」
「は〜い」
と、気の抜けた返事をしながら妹の部屋に向かうのであった。
ありがとうございました。それではまた次回