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ここです、と小声でランゼが此方に振り返ってそう言った。
そこはまあまあ大きめの廃墟だった。
確かに誰も使わなくなったところなら、絶好の場所だろう。
見張りは4人。結構大きな盗賊組織みたいだ。
「どうしましょう…」
早速此処で既にランゼは頭を抱えた。
「もしかしたら僕の帰りが遅すぎたせいで、怪しまれて人数が増えたのかも…」
「そんなに盗賊って頭回るのかな?」
またしても姉がどうでもいいし失礼すぎる言葉を放つ。
ちょっと声でかいんだよ。聞こえたらどうすんだ。
兄が姉に拳骨を食らわせると、此方を向き、
「もう強行突破したらよくね?」
まさかの脳筋発言。
姉に関してはたしかに、と頷いている。
連れてきて正解だったのだろうか。
「貴方たちは馬鹿なんですか⁉︎流石に貴族だからって舐めすぎですよ!」
「「「?」」」
三人とも同時に首を傾げる。あれ…?今ランゼ君、貴族って言った?
貴族要素のない、ただのド田舎兄弟ですけど?
「え?違うんですか?」
思ったのと違う反応だったのか、困惑したように此方を見てきた。
「うん…、貴族以前に宿屋だって初めて知ったし私たちが住んでたのは山奥だったよ」
「え!?そうなんですか…?」
怪しまれている気がする。どこに怪しむ要素があるのだろう。
「そういう話はあとにしようぜ。今集中すべきなのはこっちだろ?」
そう言われ、当初の目的に意識を戻す。
「あのめんどくさそうなやつどうする?」
廃墟の前に立っている門番みたいなやつらを指さす。
がっしりとした筋肉、鍛えられてるのが目に見えてわかる。
まぁ、盗賊の巣窟だしね。そんな奴ら沢山いるんだろうけど。
それ相手に、ヒョロヒョロの私たちがどう対応できるかなんだけど。
「あれは俺が潰すわ」
お兄ちゃんが余裕。とでも言うように立ち上がる。
「なるべく素早く殺してね!」
姉が物騒なことを言う。やめてくれ。私は基本平和主義なんだ。
「りょーかい」
そのまま敵に向かって歩いていく。ガチで正面から行くつもりなのか?
この瞬間、頭の中で兄が脳筋に分類された。
そういやお兄ちゃんってどれくらい動けるんだろう。
基本何でもできそうな完璧人間だと思うけど。
因みにランゼと言えば、お兄ちゃんに一切興味を示さず、そこら辺にある雑草を眺めていた。
さっきの時もそうだけど、なんでこんなに仲が悪いのだろう。敵意でもあんのか?
二回ぐらい鈍い音が聞こえた後、辺りは静かになった。
兄が容赦なく瞬殺したのである。
簡単に説明すると、まず、兄が敵の前に踊り出る。
そしてなんか言おうとした奴を華麗に殴り飛ばす。
後ろにいた奴も巻き込まれて頭部を打撲。
残った二人が同時に襲い掛かってきたので、ナイフを取り出して頚動脈を掻っ切っていた。
流石〜、というように戻ってきた兄に軽く賞賛の拍手を送っておいてあげた。
ランゼはホントに此奴ら人間か?という目で見ていた。
半分正解。私だけ能力使えるから私だけ人間じゃないね。
「え〜と。弟君を奪還すればいいんだね?」
「はい。同じ組織にいるけど、会えていないだけと聞いていますので」
「じゃあもう潰しちゃおうぜ。そっちのほうが手っ取り早い」
戻ってきた兄が、簡潔な答えを述べる。
確かに後にバレて追跡されるよりはましかもしれない。
「それじゃ、潰しに行こー」
「「お~!」」
軽いノリで言うと、兄と姉がついてきた。
ランゼ君は目を白黒させながら「お、お~?」と合わせてくれた。優しい。
お兄ちゃんが倒せたんだしいけるでしょ。
私は深く考えずに、廃墟の中に入るのであった。
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