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愚者を仰げ  作者: 柊 要
1章
15/54

0 「時視点」



1章も引き続きお楽しみください。



「やめて…」


少年は蹲って必死に訴えかけてきた。


「え〜?どうする?」


隣りで少年を蹴っていた少女は笑いながら此方に問いかける。

手を止める。どうしてやろうか。悩みどころだ。


「う~ん。じゃあ、殺しちゃおっか!」


結局此奴がやり返せるわけがない。

別に此奴一人がいなくなっても問題はないだろう。


手に剣を持ち、振りかざした。




_________________________




「はっ…」



目を覚ます。隣では、心地良い寝息を立てても枕を抱きしめている姉がいた。


「何...?今の」



上手く思い出せない。不思議な夢だ。



「?」



お兄ちゃんがいない….。たしか隣で寝てたはずなんだけど…..。

音を立てないように寝台から降りて階段をあがる。


ここは“リオル”という町の宿屋だ。

村にしか来たことがなかったので、初めて来たときは新鮮だった人が多い。

それに建物も村と比べて大きく、しっかりしている。

宿屋なんて初めて聞いたし初めて泊まった。


因みに私たちの家は山の中にあったので、王都以前にすぐ近くに村すらない場所だ。いつも食事や供えの為に行っていた村も、なんだかんだ遠かった。

この町に来るまで一日中走っていたので、着いた時には体が重かった。

お金はお兄ちゃんが持っていたので、食べ物を買って、此処に泊まった。

使い方は一度お母さんに教えてもらったらしい。


階段をあがった先には、扉があった。


扉を開ける。そこはバルコニーだった。


身を乗り出して夜空を見上げる。

あまりの美しさに、思わず感嘆の声を上げる。

森の中で見渡す星空も綺麗だが、それに劣らないくらいにこの夜空も綺麗だった。

何よりも目を引くのは



「空が…紫色」


「驚いただろ?」


びっくりして後ろを見る。そこには空を見上げている兄がいた。


「此処は昔から月に数回、夜になると空が紫色に変わるんだよ」


「伝説だと腎者がそうしたんだっけ」


何でそんなことを知っているのだろう?

感動するように、どこか懐かしむように空を眺めていた。


「おっと、忘れるところだった」


「おい時、お前が一番疲れてるはずなのになんでしっかり寝てないんだよ」


どうやら気を使って声を掛けてくれたみたいだった。


「本当は寝たいんだけど、寝れなくなったの」


「ふうん。悪夢でも見たか?」


「う~ん。よく分かんないけど見てていい気分なものじゃなかったね」



「どんなの?」



「男の子が殺されそうになる奴」


「なんだよそれ」


やばい奴を見るような目で見られた。やめてくれ。


「でも喋ってる視点は私だったんよね」


「…へぇ」


兄は薄く目を細めると、もう一度光り輝く夜空に視線を戻す。


「もしかしたら時は、別の能力も持ち始めたのかもしれねえな」


「え、そんなことあるのかな」

それだったら私超人じゃん。もう超人だけど。


「もしそうだったら喜んどけ」


「ええ、嬉しいことなのかな?」


「才能があるってのは俺は恵まれてることだと思うぜ」


「そっか....、ありがとう」


「おう。何もやってねえけど」


もしかしたら兄の言うように新しい才能でも目覚めたんじゃないだろうか?

そうだな…周りの記憶を覗く。とか?それはそれで凄そうだ。

一体どんな力が…


「あ、一応言っとくけどあくまで予想だから期待はしない方がいいと思うぞ」


「あ…はい」


空気が凍った。

気まずい。何を言えばいいんだ?

すると兄は空から視線を外すと、此方に向かってくる。


「よし、日が少しずつ昇ってきた」


「色を起こしにいくぞ」


「え、今更だけど何するの?王都に向かうの?」


焦って兄の背を追いかけながら問いかけると






「いいや?」





「まずは誰がルナを殺したのか、犯人捜しだ」






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