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9 委員長な彼

 新入生歓迎会は入学して2カ月くらいの頃に開催される。実際の夜会よりも短い時間で内容は主にダンスの練習を兼ねたダンスパーティーだ。


 生徒会主催のこの会はデビュタントを目前に控えた一年生の夜会デビューの練習も兼ねている。


 学園生以外の参加は不可としているので、婚約者と参加が出来るのは学園生同士で婚約を結んでいる生徒だけなので、エスコートは無くても良いとされている。


 生徒会からの説明をクラス委員が受けて、後ほど自分のクラス委員から歓迎会の説明を各クラスで行うのだが、その際に出た質問や事前アンケートの回答についてはクラス委員が内容をまとめて生徒会へ提出する事になっている。


 私とクリストフェルは放課後に残って集めた質問をまとめていた。


「ダンスについての質問が多いですね」


「ここに書かれたダンスをしたくないという意見は却下だな」


 そう言いながらクリストフェルが一枚のアンケート用紙を指で示す。


「ですが一応意見として提出された方がよろしいかと」


「承知した。アンケートには婚約者の有無を記載する欄があるが、我がクラスは学園内に婚約者がいる生徒が意外に少ないな、7人しかいない。いっその事、平等を期す為にAクラスは全員がエスコート無しと提案してみるか?」


 そう言いながら彼は綺麗な字でアンケート用紙に書かれている事を書き写していく。字なんてロクに書いていないような子供だったのに、いつからこんなに綺麗な字が書けるようになったのだろう。


「社交を学ぶ事も大切ですから、婚約者がいるならエスコートもあった方が練習になるかと。男性側からするとエスコートというのは面倒なものなのでしょうか?」


「いや、そういう訳ではないが、学校行事で私的な婚約者という関係を持ち出す事に対して疑問に思っているだけだ」


「委員長も婚約者がいらっしゃったらそのお考えも変わるかもしれませんね」


「……そういえば、クラス内で俺の事を委員長と呼ぶのはロッシュ嬢だけだな」


「失礼かと存じますが、個人的にお名前に違和感を感じていますので」


「……………次は開催時間のアンケートについてまとめる」


「実際の夜会と同じように昼ではなく夜開催にして欲しいとあります。ドレスの色やメイクは昼と夜とで見え方が違いますから同じように思っている令嬢はいるかと思います」


「とりあえず、これも書いておく」


 私たちのやりとりはいつも淡々としている。昔の事はお互いに一切話さない。


 友達になろうと約束をしたのに、私は彼を無視してしまった。当時の彼はきっと私に裏切られたと思っただろう。最後に彼に言われた「嘘つき」という言葉は私の中に刺さったまま膿のようにジクジクと痛んでいる。


 私は彼の琥珀色の瞳と目が合う時、あの時の事を思い出してしまい彼から責められているような気持ちになってしまう。そしてそれを誤魔化すように私は彼と会話をする時は必要以上の事は考えないようにしている。


「………何とかまとまったな。生徒会へは俺が提出をするのでキミは先に帰ってくれてかまわない」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 そう言って早々に教室を出た後に、ひとり教室に残された彼が大きなため息をついていた事を私は知らない。

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