07話 破滅の洞窟 ーその1ー
ここはどこだ。
暗い。
怖い。
何かが迫ってくる気配がする。
やめろ、来るな。
殺意をむき出しにした『何か』。
こっちに向かってくる『何か』。
何かをチャージしている『何か』。
その『何か』は問う。
あたり一面に響く重低音で。
「おマエハ、ナゼここ二きた。」
そう問いかけられる頃には男の魂はこの世になかった。
『何か』いや、『怪物』に恐怖して。
自ら命を絶つという選択をしたのだ。
そして、その『怪物』は動き出す。
何故自分の邪魔をするのか。
何故勝手に自分の住処に侵入してくるのか。
『怪物』はそれだけを冒険者に問う。
そして、殺す。
それだけが『怪物』の望み。
そしてまた問う。
「おマエハ、ナゼここ二きた。」
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なにやら外が騒がしい。
普段この町は楽しそうな雰囲気の騒がしさがある。
しかし、この騒がしさは今までのものとは違う。
3人の中でいち早く異変に気づいた僕は外に出る。
ーおい、また例の洞窟で行方不明者だってー
ーまたかよ。今日俺の友達のパーティーも向かったらしいが大丈夫か?ー
ーあの洞窟きっと呪われているんだー
ーいや、何かヤバいのがいるんじゃないか?ー
あの洞窟?
そんなの聞いたことがない。
そんなにやばい場所がアミーゼにあるのか?
でも、一体どこに...?
「その洞窟はね、この国の南東にあるの。
洞窟の名前は、ドゥーム・ホール。またの名を、破滅の洞窟。
一攫千金狙いにその洞窟に言ったもので帰ってきたものはいない。
かつてそこには最強の竜種の一体、稲妻之竜の住処だったの。
けど突然いなくなったの。気配すら。
その後からだわ、あの洞窟にお宝が眠っているという噂が流れたのは。
後は説明したとおりよ。」
説明してくれたのは、レナだった。
10年ほど前くらいは年に2〜3人程度しか行方不明にならなかったのだが、
ここ数年、行方不明者が急増したそうだ。
冒険者依頼も発令したが、帰ってきたものはいない。
それくらい危険な場所なのだ。
しかし今回はわけが違う。
このアミーゼが誇る上級冒険者ランキング4位の人が帰ってこなかった。
その実力は相当なものである。
炎の竜を単独討伐したこともあるという。
炎の竜は魔物のランク8にもなる。
この世界では魔物を1〜10の数字でランク分けされている。
数字が大きくなるに連れ強くなる。
10の魔物は冒険者ならば単独討伐できる。
しかし、ランクが1上がるに連れ強さが桁違いになる。
単純計算、魔物討伐にはランク×10以上のレベルが必要なのだ。
彼のレベルは83。
ランク8以下の魔物に負ける道理は無い。
それなのに、ランキング4位は負けたのだ。
それこそ、ランク9や10。
それ以上の『化け物』でないと負けはしない。
「なんか、想像以上に大事みたいなんだな。」
僕は思ったことを率直に言う。
周囲の人達も「そうなんだよな。」と真剣な顔で反応する。
しかしこの事件はこれでは終わらないのだった。
この事件から一週間後、洞窟に捜索隊が入った。
そこらの冒険者の集まりではない。
ギルド公認の、上級冒険者30人以上。
平均レベルは驚異の60オーバー。
強さで言ったらそこらの国の軍隊一個相手にできるほどの力。
しかし、彼らは帰ってこなかった。
このことはアミーぜ中で大体的に報道された。
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ーーガッシャーンーー
「レナ!何やってるの!仕事始めて何回目だよ。
また給料から天引きされるぞ?!」
「そんな殺生な。それだけはやめてぇええ!!」
この店の皿割り記録をまた1つ更新した。
今では、ダントツ一位の記録。
2位の記録の3倍以上である。
彼女はこういうの向いてないんじゃね?
そう思うが口にはできない。
した瞬間、僕の命が危うくなるからだ。
この店の常連客はやけにレナのことを気に入っているらしく、レナ目当てで来る人もいる。
なので僕は迂闊に彼女に近づけない。
話しかけると、殺気のこもった視線が僕の方に向かってくる。
「そうそう、タクヤ。ギルドが超高額報酬の冒険者依頼やるって。
なんでも、例の洞窟の調査だとか。
生きて帰ってきて有力な情報を渡すだけで報酬がもらえるらしいんだけど。
その報酬額がとんでもないのよ。
その額なんと、1億5000万ヘルティア。
でも、危険過ぎて引き受ける人なんていないんだけど。」
ハンナさんが全て言い終わる前にレナが口を動かした。
「私、タクヤと一緒に行ってきます!!」
「はぁっ?な、な、なんで僕も?危険すぎだろ。
第一、僕はそんな戦力にならない。レナ一人に任せるなんて。
そんなのダメだろ。」
「別に大丈夫だよ。荷物持ちしてくれればいいし。
こう見えて私、結構戦えるのよ?白兵戦も結構得意。」
驚いた。
魔法だけじゃなくて剣まで使えるとは。
一体何者なんだ?レナは。
しかし、僕達だけで大丈夫なのだろうか。
もし何かあったらどうするんだ?
もし、死ぬようなことになったら...。
「ちょっと、考えさせ」
「明日出発だから今日はもう仕事終わるね!
ハンナさん、そういうことなので後はよろしくね。
じゃあ行こっか。タクヤ!」
最後まで言い終える前にまたもやレナが喋った。
こうなったらもう止まらないのだろう。
僕は不安いっぱいにハンナさんに手を振って店から出た。
レナはなんだかとても楽しそうだ。
僕達がいつも泊まっている宿に着いた。
そして。
「タクヤ、明日の準備は各自ですることにしようね。
じゃあ私は行くとこあるから。明日は早起きするからね!
じゃあ、また明日〜〜!」
僕には発言権が無いみたいだ。
とりあえず手を振っておいた。
なんだかよくわからないがとりあえず非常にまずい状況みたいだ。
僕は不安に押しつぶされそうになっているが決心した。
「こうなったらもう、やるしかねぇえええ!
徹底的にやってやるぅううううう!」
僕は謎の喝をいれ、歩き出すのだった。
新しい旅が始動いたしました。
今後の二人の行く末はどうなるのか。
ぜひ次回以降も読んで楽しんでいってください〜!