05話 レナ 後編
なんとか更新できた。
予定よりも短くなってしまいました。
やっと朝になった。
なんでやっとかって?
それは、レナの手伝いを強制的にさせられているからだ。
なにやら、レナが使える『魔法』なるものを応用して何かを作っているらしい。
それを僕が試しに使ってみる。
そう、ただの『実験台』だ。
けどあんまり悪い気はしない。
前の世界でも見たことのあるモノを作ろうとしているようなのだ。
何やら、魔法を機械(←ほぼガラクタ)に封じ込める。
そうすると、機械の種類によって様々な働きをするのだ。
ここではわかりやすく、『魔道具』と言っておこう。
例えば炎の魔法を封じ込めると、『暖房器具』、『加熱器具』。
氷の魔法を封じ込めると、『冷蔵庫』、『簡易空調』。
雷の魔法を封じ込めると、『照明器具』。
等々、まだまだたくさんある。
驚くのはその種類だけではない。
なんと、その『魔道具』は半永久的に使用できるそうだ。
もし実用化されたら画期的なものとなるのは間違いない。
けど何のために作っているのだろう?
少し不思議に思ったので聞いてみることにした。
「ねえ、それ何のために作っているの?聞いても良い?」
銀髪の少女は目を輝かせて答えた。
「生活をより良くしたいためっていったら嘘にはならないけど、正直お金がほしいからかな?私、あまり裕福な家庭じゃなかったし、お金のない生活の辛さなら誰よりも分かってる。そんな、昔の私と同じような人たちを助けたいっていう気持ちもあるんだよ。」
ナルホド。
思ってたよりもまともな理由だった。
もしかしたら、と思ったが。
ほんの少しだけ、僕の中の彼女の評価が上がった。
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それからというもの、僕は思ったよりも充実した生活を遅れている。
新しい職場にもだいぶ慣れてきた。
レナの実験台になるのも。
それと、冒険者依頼。
昨日は、氷の狼の動向調査をした。
この世界に来て結構時間が立つに連れ僕の能力も徐々に上がってきている。
今一番伸びが大きいのは、体力だ。
もっとも、僕の初期値が低かったというのも関係しているけど...。
僕はこれから、ハンナさんの仕事場で働きつつ休みの日に冒険者依頼を受ける。
それでちょっとしたお小遣い稼ぎができる程度にはなった。
けれど、依頼を受けれる内容は一番難易度の低いものしかない。
中には、炎之竜の討伐。
魔王軍幹部の撃破。
未開拓領域のマッピング。
それこそ、上級の冒険者しか受けられないような内容のものだってもちろんある。
僕は目標を立てた。
「2年以内に魔王軍幹部を一人倒すぞぉお!」
随分と大きく出てしまったのかもしれない。
しかし、大きいくらいが丁度いい。
こうして、僕は新たなる一歩を踏み出すのだった。
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寒い。
お腹が空いた。
のどが渇いた。
地面が硬い。
助けて。
少女は飛び起きた。
悪夢にうなされていたのだろうか?
それとも、過去の記憶。
ーはぁはぁはぁ、久しぶりにこんな夢見た。もうあの頃には戻りたくないー
そう思い、また眠りにつくのだった。
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少女の名前はレナ。
名字?
そんなもの知らない。
生まれてからずっとそう呼ばれてきたからだ。
レナのすんでいたのはアミーぜの北西に位置する町。
貧民町。
この国の唯一の汚点とも言われている場所。
そこでは、毎日人が山のように死んでいる。
飢餓に苦しむもの。
病に冒されるもの。
自ら命を絶つもの。
その死因は多種多様であり、死体の山が築かれていく。
そんなところで彼女は育ったのだ。
彼女は知らない。
ご飯の暖かみを。
人の残酷さを。
家の暖かみを。
家族を。
「お腹すいた。ご飯ちょうだい。」
一生懸命周囲に訴える。
しかし届かない。
聞く耳を持たないからだ。
「お前なんかにやる飯はねえんだよ。あぁこんな子作るんじゃなかった!」
私の方に皿が飛んでくる。
そして、壁と衝突。
その瞬間割れた破片が私の方に向かってくる。
「イタい!」
ほっぺと足に当たり切り傷ができる。
血も出てる。
「イタいよぉお。イタいよぉおお!」
この頃の少女はよく泣いていた。
ほんの些細なことでも。
この町の外には大きな町がたくさんあることを知った彼女は泣いた。
どうしてこんなところで生まれてきたのか。
どうしてこんな世界に生まれてきたのか。
どうして、こんなにも不幸なのか。
彼女は誓った。
復讐すると。
自分にこんな仕打ちをした家族に。町に。国に。
その時から、彼女は生きる理由が変わった。
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はっと目を覚ました。
目がなんだか湿っているような気がする。
起き上がると、水が頬をしたって布団の上に落ちる。
そうか、私は泣いていたんだ。
昔の夢を見て。
あのとき誓ったことは微塵も忘れていない。
やめようなんて思ったこともない。
ただ、1つ思うことがある。
それを成し遂げた後に何が残る?
まあいい。
そんなことは事をすべて終わらせてからでも遅くはないはず。
そう思い彼女はベッドから降りる。
そして。
「おはよう、タクヤ。早く実験始めるよ!」
「うぅう、早いよレナ。あと五分だけ。そしたら起きるから...。」
「昨日はそういってそのまま寝てたでしょ!今日はそんな事させないんだから。」
レナは強引にタクヤの布団を引っ張る。
彼はそれにしがみつきそのまま床に落ちる。
「「イッてぇええええ!」」
こうして、少年少女の物語が始まるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
明日は用事があるので投稿はきっとできません。
次回もよろしくおねがいします。