34話 邪悪
(なあ、エアさん。調教する方法ってどんななんだ?)
《はい、まずは自身が調教したいと思う対象と意思疎通する必要があります。
その方法は三者三様で、一緒に生活する、何回も戦闘を繰り返す等が挙げられます。
しかし、一番重要なことは対象物と「絆」を深めることだと考えられています》
相も変らぬ声が僕の脳内に響き、淡々と説明してくれる。
最近、出番が少なかったせいか少し口調が怒ったようになっていた気がする。
「タクヤ?ねえ、タクヤ。タクヤってば!!」
「えっ、あ、ごめん。何?」
「フェリスが調教できるようになったきっかけの話をしていたんだけど…、
貴方、最近変だよ?一人で考え事ばっかりしているし…、」
その白い肌には目立ちすぎる瞳がこちらを覗いている。
まるで、心の底から心配しているかのようにしている。
エアさんの事がバレたら説明が面倒なのでうまく隠さないと…、
「ああ、最近、地下迷宮ってやつが話題になっているだろ?
結局のところ、何が起こっているのかな〜って考えていたんだ」
レナは少し不満げに鼻を鳴らす。
後ろからはモコモコの耳を動かしながら一人の猫族の少女が目を輝かせている。
「タクヤってそんなに凄いことを考えるんだニャ!さっすがだニャ!」
上手く騙せたようだが少し胸が痛むのは何故だろう…、
風もそうと言わんばかりに急に強く吹き出す。
いや、こういうのは気にしちゃ駄目だ。
そう自分に言い聞かせると本題に入ることにする。
「フェリスって、なんで調教できるようになったの…?」
僕がそう言うと、彼女の眉間にしわができる。
少し言うのをためらっているのか、目をつぶる彼女。
しかし、数秒経ったら決心がついたのか瞼をゆっくりと開きながら話し始める。
「あれは、ミャーが5歳くらいの時だったニャ。」
フェリスの口から語られる物語は想像の斜め上をいくものであった。
………
……
…
「フェリスがまさか、あの調教師の先駆者、フェドネス公爵の孫だったとはね。
私もまだまだ情報が足りてないようね。流石は公爵だわ。」
彼女はその美しい深紅の双眸でどこか遠くを見つめながらそう言い放つ。
以前、どこかであって面識のあるかのような言い草だ。
そのまま遠くを見つめている彼女を見て僕は居ても立っても居られなくなる。
「なあ、レナはそのフェドネス公爵と面識があるのか?」
彼女は答える。
「ええ、以前少しお世話になってね。」
やはり、面識があったのか。
しかし、調教師の先駆者って…、うん。
少し良くないことを考えつつも話を戻す。
「でも、変ね。公爵は確か、10年前のあの事件以来一線から身を引いていたはず…。いや、でも孫の為なら彼は動くの…?いや、私の考えすぎなの…?でも…。」
なにかレナが小声で呟いている。その表情はどこか悩んでいる様に見えた。
その時、さっきまで澄み渡るように晴れていた空模様が一変。
激しい雷雨が降ってくる。
「「キャぁあ!!」」
僕のパーティーの女性陣は耳をつんざく程の悲鳴を上げながら木陰に走ってゆく。
その後を追いかけて、木陰に近づくも僕の場所はないらしい。
たまにはこういうのもいいか。そうつぶやくと僕は少し雨に打たれることにする。
………
……
…
ここはアミーゼとは似ても似つかない、山岳地帯にあるとある国。
今、この地で平穏を崩す鐘が鳴り響いていた。
太古にこの地に降臨し、数多なる厄災を招き世界を滅ぼしかけた存在。
そして今は、勇者一行により封印され眠りにつく災厄獣。
魔王にも匹敵すると言われた程の存在の封印が今、解かれようとしている。
「王よ、やはり止めるべきです!本来の目的を達成した後の損害が計り知れません!」
「黙れ愚図。」
王と呼ばれた女がそう言い放つと場の空気は凍りつく。
「結局のところ、この国が滅ぼうと滅ばないと我には関係ない。」
そう言い放つ彼女の目はどこか寂しそうだ。
アーツラブ皇国第十八代国王、ヴァーツラフ・フレデリカ。
この国最初で最後の女帝。
その冷酷な双眸は漆黒を纏い、蒼穹の宝玉を眺めている。
そして、時計の短針が刻を刻んだ時。
「では、参るぞ。『地下迷宮』へ。」
めっちゃ久しぶりですね。はい。
うp主が受験期に突入しいよいよという頃になってきました。
受験勉強がてら書いてくので是非ブクマの方よろしくお願いします!




