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01.集めてはならない者達が集まった

馬鹿達による、お馬鹿な騒動の開幕です!


 新たな出会いに胸躍るかもしれない季節。そんなものは掲示板に貼られたクラス表を確認して木っ端微塵に砕け散った。誰だよ、学校の問題児を一クラスに纏めようと考えた発案者は。


「酷いな、これは」


 そんな中にどうして俺が含まれているのか疑問でしかない。確かに腐れ縁の学友たちの騒動に巻き込まれて、それなりに名は広まったかもしれない。それでも俺はいたってまともなはずなのに。


「神出鬼没のタレコミ屋に、喧嘩で負け知らずの女番長。腹黒参謀、新聞部のくノ一。揃いも揃って厄介ものばかりじゃないか」


 この高校に在籍しているのであれば、奴らの噂を聞いたことがないという生徒はいないだろう。誰かしらはその被害者になっているからな。不思議と俺はそれに含まれていない。警戒でもされているのか。


「名前を知らない奴は哀れな子羊か」


 問題児の数にも限りはある。一つのクラスにするとしても他のクラスと人数差があっては駄目だろうと判断されたか。普通の思考で考えるのならば、一年持つかどうか怪しいぞ。


「関わり合いにならないのが最善だな」


 触らぬ神に祟りなしとは言ったものだ。同じクラスだとしても、騒ぎに参加しなければいいだけのこと。悪ノリして乗っかってしまっては俺の評価までおかしな方向に向かってしまう。


「露骨な罠をし掛けやがって」


 新しい学年のクラスにやってきたはいいが、ドアの間に黒板消しが挟まっているのを確認して溜息が出てしまう。どうやら関わり合いにならないのは不可能のようだ。奴らの攻勢は無差別か。


「対処法は簡単だけどな」


 挟まっている黒板消しを取り外してドアを開ければいい。教室に踏み込んだ瞬間に真横から振り子のように黒板消しが襲ってくるとは思わなかったが。反射的に鞄でガードできたのは日々の鍛錬のおかげだ。


「くそ、また防がれた」


「自白、ご苦労さん!」


「おごっ!?」


 素直に喋った奴に向かって取り外していた黒板消しを全力投球。額に硬い部分が当たって悶絶しているようだが、罰は受けないとな。というか、目の周りに痣が出来ているのは俺以外にも仕掛けて報復されたのか。


「よく見ると被害者多数だな」


 制服に白い跡が残っている奴がちらほらと見られる。無差別とは思っていたが、よく飽きもせず同じことをやっていられるな。何でこんな仕掛けを用意したのかは謎だが。むしろ、誰か止めろよ。


「あれか、自分と同じ被害者を増やしたかったとかそんな感じか」


「その線が濃厚だね」


「参謀は無事だったのかよ」


「被害者のすぐ後に入ればセーフだったよ」


「流石は腹黒」


 初対面の相手を早々に囮とするあたり、人でなしだよな。何かしら仕掛けられているの予測していたくせに、それを教えないのだから性質が悪い。しかもその事実を言わないのだから、知らぬ存ぜぬを押し通す。


「そういえば、彼女は一緒じゃないのかい?」


「寝坊だよ」


 腹黒参謀である悟とは、去年一緒のクラスだったので俺の交友関係も把握している。小学校からの付き合いと、赤ん坊の頃からの付き合いのある連中は去年一緒のクラスではなかったのだが、俺のクラスに突撃してくるのはいつものことだったから。


「始業式早々に遅刻とは相変わらず神経が図太いね」


「お前がそれを言うか」


「僕は繊細な人間だよ」


 それはない。俺も人のことは言えないが、このクラスの連中は大概が図太い神経の持ち主ばかりだろう。そんな連中を選抜したような気はする。それでも今年一年を乗り越えられるのは何人なのか。


「奴からの着信か」


「場所を聞いて、窓から侵入する算段かな」


「ここ三階だぞ。幾らあいつでもそれは無理だと思う」


「そこはほら、ロープでも垂らせばやれそうじゃないか」


 ロープを常備している教室とかどんなことを想定しているんだよ。そう思っていたら、友人の一人が必要かとロープを見せてきたのは馬鹿としか言いようがない。脱出用か、あれは。


『総君! 私のクラスはどこ!?』


「G組だ。喜べ、勢揃いだ」


『ひゃっほーい! 楽しい一年になりそうだね!』


 遅刻を逃れるために全力疾走しているはずなのに、何でこんなに元気な声が返ってくるんだよ。体力が無尽蔵なのは知っているが、俺ですら息が切れるような勢いで走っているはず。元気いっぱい天真爛漫な幼馴染は相変わらず理解不能だ。


『ラストスパート、いっくよー!』


「人にぶつかるなよ」


 通話はそこで切れた。さて、あいつはどこまで理解しただろうか。勢揃いしたのが友人たちだけだと思っているのであれば、考えが浅い。問題児が勢揃いだとは誰も思わないだろうけどさ。


「相変わらず彼女は元気いっぱいだね」


「それが取り柄みたいなものだからな」


「それだけじゃないのは知っているよ。彼女の真骨頂は別のところにあるよね?」


「さて、何のことかな」


 幼馴染である近藤勇実は何といえばいいのだろうか。見た目はそれこそ無駄に明るい馬鹿としか言いようがない。だけど、付き合いが長くなればそれが彼女の魅力じゃないと気づくことができる。


「そんな彼女と付き合っている総司も普通じゃないからさ」


「俺はいたって普通だぞ」


「冗談だとしても笑えないって前に言ったよね?」


 率先して騒ぎを起こした覚えはないのに、どうして俺の評価は他の友人たちに比べておかしな方向に向かっている。馬鹿達の騒ぎを鎮圧しているだけだというのに。そりゃ偶には乗っかって騒ぐ場合だってあるけど。


「君たちは見ていて飽きないよ」


「悟が便乗してこなかったのは幸いだな。今年は嫌な予感しかしないが」


「クラスの親睦を深めるために初日はオリエンテーションくらいしか考えていないよ」


「それが不吉だって言ってんだよ」


 腹黒参謀である加賀悟が考えたオリエンテーションというだけで嫌な予感しかしないのだ。大人しく無難に済む確率なんて本当に少ないからな。特にこのクラスの面子を考えるとなおさらだ。


「大丈夫だよ。今日は様子見程度に済ませておくから。流石に奈子の反応を窺っておかないと、被害の程度が分からないからさ」


「武力派の筆頭には、さすがの悟でも慎重になるか」


「正攻法で一直線に挑まれたら絶対に負けるからね」


 負け知らずの女番長と勝手に周りから呼ばれている女子生徒。本人としては好きで喧嘩をしているわけではない。尾ひれがついた噂で勝手に挑まれて、その度に撃退していただけなのだ。どんな街にだってそんな不良みたいな連中はいるということだな。


「頭脳系は背後で動くのが一番だね」


「器用貧乏の俺にとっては羨ましいことだ」


「基本水準が高いオールラウンダーとか、厄介すぎるよ。このクラスで僕が脅威に思っているのは総司と奈子だからさ」


「だったら大人しくしていろ」


 幼馴染に苦労している点ということで俺と奈子は手を組みやすい。去年のクラスは別であったが、学校外の出来事で協力関係を築いたことがある。お互いに愚痴を曝け出したり、それぞれの問題児を捕獲したり、鎮圧したりとそれなりの付き合いが続いている。


「僕が動かなくても、このクラスなら勝手に問題が起こると思うよ」


「基本的に俺は中立を貫くつもりだからな」


「大丈夫だよ。総司の仲間たちが勝手に首を突っ込むさ」


「予測ではなく、事実なのが頭の痛い悩みだ」


 勇実が十中八九突っ込んでいくだろう。そして騒ぎは拡大して、結局は俺が動かないといけない状況になる。そこまでは何となく思い描ける。ただし、その後の展開は全く読めない。


「酷いクラスだな」


「楽しいクラスの間違いだよ」


 現在の状況に対する考えは真っ二つに割れているだろう。俺のように憂鬱に思っている生徒と、悟のように何かが起こると期待している生徒と。それがこのクラスでの立ち位置を表しているともいえる。


 騒ぎを起こす生徒、騒ぎを治める生徒、そしてそれを眺めて笑っている畜生の高校二学年目がスタートした。

何でこれを新規に連載しようと思ったのかは謎でしかありません。

今回の一話目は以前に活動記録で掲載したものとほぼ変わりありません。

ですので、二話目も同時に投稿する次第です。

予定として二週間は毎日一話ずつ公開する運びとなっております。

どうか、よろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] 野放し状態の魔窟W
[良い点] まさにプロローグ。 黒板消しの直撃を受けたのはのちの良識派であった、でしょうか。よき洗礼です。私は受けたくありませんけどね!
[一言] 向こうの後書きが本編になったような作品と考えてる( ˘ω˘ )
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