異世界生活271日目④
「ぬおおおお!これで決まりなのだあああああ!」
「甘いよ、お姉ちゃん!必殺!サスティナブル!ディベロップメント!ゴールズ!」
「ぬああああああ!やられたのだあああ!」
「…………」
なんか知らん子が増えてる。
レノアに魔剣の設定をしてもらってから家に戻ると、家の前でアルアリアとどこぞよりいらっしゃったお嬢さんが良く分からん遊びをしていた。見た感じはけんけんぱに似た遊びのようだが、何やら勝敗をつけることができる競技らしい。これがこちらの世界では常識的な遊びなのか、単に児戯なのかが分からんので、ツッコんで良いのか判断に困る。
「えっと……どこのどなたかな?」
「エトナです!」
「元気でよろしい。いや、名前じゃなくてね?」
「エトって呼んでください!」
「愛称って意味でもなくてね?」
年のころは十歳になるかどうかといったところだろうか?子供らしいショートカットで、日焼けがまぶしい元気溌剌な女の子だ。
「引っ越しをしてる人が珍しくて見に来たそうなのだ」
エトナに聞いても解決しない疑問に、さすがにアルアリアが横から答えた。まあ、そんな感じだろう。村の中で情報が回っているのなら、好奇心が旺盛な子供達がそんな一大イベントを見逃すはずもない。
「それでせっかくなので遊んでいたのだが、ついつい白熱してしまってな。いつの間にか対決をしていたのだ。いや、素晴らしい腕
ったのだ」
「お姉ちゃんもすごかったよ!」
「ふっ、こんな辺境の村で生涯の好敵手と出会ってしまったのだ」
アルアリアはそう言うと二人で肘をぶつけ合い、友情の確認ポーズ。
「……それで、アルアリア、片づけは?」
「…………」
沈黙が返ってくる。音速でそらされた目線もセットで。
「……ていうか、神龍さんは?神龍さんがいれば真面目にやってくれそうなのに」
「いや、あっぱれな良い勝負でしたぞ!」
「…………」
役に立たねえやつらだな。
村に着いたのが昼過ぎで、精霊の契約ついでに村の地理を把握しておこうと少し散歩していたら意外と時間がかかって、既に少しではあるが日が傾きつつある時間帯だ。この後夕飯の準備、片づけ、寝床の準備などを考えると結構慌ただしくなる。
「これは今日の夕飯はレーションかな」
「えええええー……。この前も食べたのだ。もう飽きたから他のがいいのだー……」
「じゃあさっさと片づけをするぞ。そもそも台所があんのかどうか」
「もうお姉ちゃんご飯の時間なの?」
こちらの会話を聞いていたエトナが、アルアリアに問いかける。
「そうなのだ、この悪の手先の策略によってな……。今日のところはこれまでなのだ」
「えー……じゃあ私もお家帰ろっかな。明日もまた遊んでくれる?」
「無論なのだ。いつでも待っているのだ、生涯の好敵手よ」
また肘をぶつけ合うポーズ。随分短時間で強固な友情を育んでくれたもんだ。
「それじゃあ明日もまた来るね!ばいばーい」
「バイバイなのだー」
子供の移動は基本的に走りだ。小さいながらも一生懸命に走っていく背中は、あっという間に遠くに離れていき、やがて見えなくなっていった。
「エトナちゃん、どこの子供だったんだ?」
「さあ?最初は何人か他の子供もいたのだが、最後に残ったのはエトだけだったのだ。多分その辺の農家の方の娘さんだとは思うのだ」
「農家……農家、ね」
その単語を聞くだけで、否応なしに先ほどの二人組を思い出してしまう。特にエトナがランドと言っていた方の関係者だと、またややこしい展開になってしまいそうなので、勘弁願いたいのが正直なところだ。
「……まあ、とりあえず片付けるぞ。さっさとやらないと本当に夕飯はレーションになる」
「そ、それだけは阻止せねばならんのだ……」