2. 私のステータス
現在は夜。といっても8時ぐらいだけど。
「おやすみ、ティナ」
「おやすみなさい、おとうさま、おかあさま」
この世界の文明は地球でいう中世にあたるので電気というものが普及しておらず、かわりに魔法が一般常識として存在している。私の部屋の明かりも魔道具であり、光魔法が付与されているらしい。
「おやすみなさいませ」
「おやすみなさい、タリア」
お父様とお母様、メイドのタリアが部屋を出ていった。私は扉がちゃんと閉まるまでベッドの上で大人しくしている。ちなみにお兄様とお姉様はすでに自室で寝ていますよ。
私は扉が閉まったことをしっかりと確認してから起き上がった。明かりは月の光だけで十分ね。よしよし、右よし、左よし、後よし。今この部屋にいるのは私だけなのを確かめて、それからから小さく唱える。
「ステータス」
するとゲームでお馴染みの半透明の画面が目の前に現れた。やっぱりあったよ、ステータス。
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----------ティリーマリナ・フィルトハード
レベル1
種族:人族 3歳
職業:貴族
属性:全属性
魔力:S
状態:健康
称号:転生者 公爵家令嬢
取得スキル
言語LV3(LV8) 体術LV9 剣術LV4 棒術LV4 ナイフ術LV8 工作LV8 地図LV6 料理LV7 演技LV7 交渉術LV8 計算LV7 耐性LV4 尋問術LV7 狙撃LV6
固有スキル
手紙LV1
わーお!素晴らしいね!スキルのほとんどがカンスト気味だよ。これってチートっていうやつ?交渉術とか尋問術とか狙撃なんて、見た目は可愛らしい幼女なのにえげつない。まあ、たぶんだけど、これらのスキルは前世の職業が関係していると思う。だって貴族幼女なのに体術や剣術、その他もろもろなんて3歳児では取得できないでしょ。しかも体術とナイフ術に至ってはカンスト気味だよ?前世の影響を受けているとしか思えないよ。
私の前世の職業は国際犯罪捜査官だったんだ。それの対テロ班に配属されて世界中をあちこち飛び回っていたし、映画のアクションシーン顔負けの銃撃戦や殴り合いをしてきたんだからこれらのスキルには納得がいく。まあ、剣術スキルに関しては疑問に思うかもしれないけど地球でも武術としてしっかり残っているからね。カンフーとか剣舞があるでしょ?それだよ、それ。
ひとまず予想できるところまではしたけど、1つだけ気になるスキルがあるんだよね。
「てがみスキルってなんだろう?」
あ、話すと幼くなるのは身体の年齢のせいだから。成長するとちゃんと話せるようになるはずだからね。
「メールのことかな?」
そう考えると手紙スキルとしては違和感はない。スマホのメールアイコンは便せんマークだったし。でもどこで取得したんだろうか?前世で知らないうちにメールを大量に送信していたとか?だとしたら相手からするとスパムメール並みの嫌がらせだね。
ピロン
・・・・はい?
音が鳴った。顔を上げて部屋を見回しても特に変わったところは見当たらない。なら、もしかしてステータス画面かな?
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手紙を1通受け取りました。
差出人:不明
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「・・・・」
ステータス画面の中央に写っている通知。それを見て私は言葉を出さずに固まった。その一瞬でステータス画面からVRゲームで見慣れたメニュー画面に切り替わり、その中央にたった今受け取りましたよの通知が変わらず表示されている。まるでVRゲームそのままだ。しかも差出人は不明ときた。悩んだ結果、私は手紙アイコンをタップする。誰からか知らないが接触を図ってきたのだから内容ぐらいは読んでみるべきだと思ったのだ。まあ、前世では非通知電話なんて頻繁にあったし手紙くらいはどうってことないしね。
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差出人:不明
やあ、こんばんは。
君のことだから、この手紙を警戒すると思うけど害はまったくないから安心してくれよ。ちょうど君が手紙スキルに気づいたから送らせてもらっただけなんだ。君が予想した通り、このスキルは日本でいうメールだよ。世界の反対側にいても届くからじゃんじゃん使ってくれたまえ。ただ手紙スキルは誰も取得していないから固有スキルとさせてもらったよ。使い方は君次第だ。情報の怖さは十分にわかっているだろう?まあ、君なら大丈夫だと思っているから渡したんだけどね。
あと、君をこの世界に転生させたのは僕だ。疑問に思っているだろうから先に答えておくね。それからありがとう、僕を助けてくれて。君は覚えてないけど死ぬ直前に僕を助けてくれたんだ。あの時、僕が死んでいたら大変なことが起こっていたよ。だから本当にありがとう。だからお礼になるかわからないけど、君が願った新たな人生をプレゼントさせてほしい。剣と魔法のファンタジー世界だよ。君のよく知る乙女ゲームに似た世界に転生させたけどどうかな?僕としてはその世界で自由にやりたいように生きてほしいね。あ、でも世界情勢を壊すようなことはもちろんだめだよ?本当にやめてよね。
それから、このメールを最後に僕とは連絡が取れなくなるから返信しても返事は返ってこないからね。それじゃ第2の人生を楽しんで。
追伸
ゲーム世界と酷似しているけど実際のゲーム世界ではないから、そこには十分気をつけてね。
君の人生が楽しく幸せでありますように。
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読み終えてから私は天井を見上げた。たぶん不明くんは神様とかそんな感じの人なんじゃないかなと思ったから。
「どういたしまして」
聞こえているかわからないけどそう返しておく。確かに私の記憶には不明くんのことは何もない。でもありがとうと言われるのは素直に嬉しかったんだ。
視線をメニュー画面に戻して再びステータス画面を出す。すると驚いたことにスキルが2つ増えていて、新たに加護欄ができていた。
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ティリーマリナ・フィルトハード
レベル1
種族:人族 3歳
職業:貴族
属性:全属性
魔力:S
状態:健康
称号:転生者 公爵家令嬢
取得スキル
言語LV3(LV8) 体術LV9 剣術LV4 棒術LV4 ナイフ術LV8 工作LV8 地図LV6 料理LV7 演技LV7 交渉術LV8 計算LV7 耐性LV4 尋問術LV7 狙撃LV6
固有スキル
手紙LV1 収納LV1 鑑定LV1
加護
最高神の寵愛
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まさかの超便利スキルが増えてました。異世界転生ならではの定番スキル2つ!ありがとう不明くん!便利に使わせていただきます!
それはさておき最高神だって。そんなの初めて見たよ。それに寵愛だよ?普通なら精霊の加護とかじゃない?ゲーム時代でもこれは流石に見なかったから現実となったために現れた神様ってことになるのかな?まあ、どんな恩恵があるかわからないけど悪いものでないことは確信できる。タイミング的に不明くんがくれたものだからね。期待してもいいかな?
「あ、そうだ。これを使えだ1つ1つ詳細が見れるんじゃない?」
さっそく不明くんから貰った鑑定スキルでステータスを確認していこう。まだレベル1だけど物は試しだ。まずは私の名前から。
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ティリーマイナ・フィルトハード
〈フィルトハード公爵家の次女〉
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おー!ちゃんと鑑定できた。ひとまずこれでスキルや加護が何か理解することができる。次。
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レベル1
〈レベルが上がれば身体能力、魔力などが強化されていく〉
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どうやってレベル上げすればいいかとか書かれていないんですけど。ゲームと同じように魔物を倒せば上がるのかな?まあ、鑑定スキルのレベルを上げていけば更に詳しいことがわかるか。今は少しでも詳細がわかればあ御の字なわけだしね。
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種族
〈人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、魔族、小人族が主な種族である〉
人族
〈世界で一番数の多い種族である〉
3歳
〈年齢〉
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凄く短い。ゲームをやっていた人にとっては今更の情報だった。
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職業
〈子供の場合は住んでいる場所から決まる。仕事に就けば変更され、職にあった恩恵がある〉
貴族
〈職業の1つ。動作スキルや言葉遣いスキルに恩恵がある〉
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貴族という職業に恩恵があるのは初めて知ったよ。やっぱり鑑定スキルは素晴らしいね。
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属性
〈魔法を使ううえで必要なもの。魔法適正がない人は無と表記される〉
全属性
〈あらゆる属性に適正がある〉
魔力
〈保有魔力量のこと〉
S
〈最大保有量のこと〉
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属性は火、水、土、風、氷、雷、光、闇、時、無の10属性のはずなのにどうして適正がない人は無だんだろう?心のメモに図書室に行って調べる必要ありと記入する。あと魔力がSって不味くないかな?まあいいや。考えるのは後にして次いってみよう。
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状態
〈身体、精神の状態のこと〉
健康
〈心身ともに健康である〉
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国が指定している禁忌スキルや禁忌魔道具とかあるもんだから、この表記は大事だったりするんだよね。精神を操るスキルや魔道具もあってゲーム時代はこれを見て判断してたっけ。
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称号
〈一定の条件を満たした者に与えられるもの。すべてに1つ以上の恩恵がある〉
転生者
〈転生した者に与えられる称号。前世の知識を忘れることがない。言語関連スキルに補正がかかる〉
公爵家令嬢
〈公爵家の娘に与えられる称号。一般教養を身につけやすくなる〉
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前世の知識を忘れないというのは非常にありがたい。忘れたからもう一度調べるってことができないからね。
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取得スキル
〈一定の条件を満たせば取得できるスキルの総称〉
言語スキル
〈全ての言語を話す、聞くことができる〉
体術スキル
〈護身術の上級スキル〉
剣術スキル
〈剣を使って動作ができる〉
棍棒スキル
〈棒を使って動作ができる〉
ナイフ術スキル
〈ナイフを使って動作ができる〉
工作スキル
〈物作りの上級スキル〉
地図スキル
〈通った道を覚えられる〉
料理スキル
〈料理ができる〉
演技スキル
〈演技ができる〉
交渉術スキル
〈交渉しやすくなる〉
計算スキル
〈計算が早くなる〉
耐性スキル
〈全てに耐性がある〉
尋問術スキル
〈対話で答えが得やすくなる〉
狙撃スキル
〈狙い撃ちしやすくなる〉
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鑑定レベルが1だから仕方がないけど説明が簡単すぎる。でもさすが言語スキルだね。全ての言語が話せるというのは凄くうれしい。どこに行っても言葉が通じるのは心強いよ。ありがとう、転生者の称号さん。感謝です。
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固有スキル
〈本人がもともと取得しているスキルの総称〉
手紙スキル
〈相手とやりとりができる〉
収納スキル
〈物を収納できる〉
鑑定スキル
〈あらゆる物を鑑定できる〉
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私の固有スキルは全て便利な物だと改めて思った。どうにかして優先的に固有スキルのレベルを上げたいね。
そして最後は一番気になっている加護。どんな恩恵がえるのかな~。うふふふ。
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加護
〈称号よりも多大な恩恵を得ることができる〉
最高神の寵愛
〈鑑定できません〉
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はい?鑑定できない?
「スキルレベルがひくいから?」
だとしたらスキルレベルが上がってからもう一度見るべきだね。うーん、なんか少しがっかりしてしまった。だってあんなに固有スキルが便利だんだよ?自然と最高神の寵愛に期待しちゃうって。いや、勝手に期待して落ち込んでいるのは私なんだけどもさ。
さてと、加護の話題はさておき。いくつか問題がある。
1つ。このステータスをどう隠すのか。
2つ。貴族が冒険者になるにはどうしたらいいのか。
3つ。婚約者回避はどうすればいいのか。
以上、3つの問題が浮上するわけです。
まずステータス問題。この世界の子供たちは5歳になるとステータス鑑定は行われ、その結果を見てどういった教育をするのかが大まかに決定される。主に魔法に適正があるのかが重視されているけどね。ちなみに魔法適正があると問答無用に学園の魔法科を選択させられて魔力操作方法を学ぶことになるよ。
ここでの私の心配事とは称号に転生者があるだけでなく全属性もあること。魔法が使える人じたいが世界で見てもだいたい4割いるかいないかだから全属性が珍しいのは簡単に想像できると思う。バレたら国に目をつけられるのは決定だ。
「どうしよう?」
私は頭から枕に突っ込んだ。