高尚ではない愛について物語
ぽめぽめのポメラリアンはラリって自分のぽめをちょんぎった・ぽめをフライパンでバターでソテーして・その香りがあまりにも刺激的で切れたぽめが勃起してきて・ちょんぎられてたぽめの根元からぽめが生えてきた・けれど時間の経過と共にその匂いが鼻についてきて・気が違ったように鼻をずりずりこすったら鼻血がドボドボでてきて・フライパンの上でジュ~っと・そう一滴一滴零れ落ちるたびに蒸発する・そろそろぽめがいい具合に焼けてきた・食べさせてあげる相手をみつけなくてはならないと思ったポメラリアンは・一度ガスを止めてフライパンの上のぽめが冷めないように・フライパンの上にポメを乗せたままウッドデッキのテーブルの上に置いた・ちょうど今日は太陽がギラギラしていて・フライパンの上に置いたままこのウッドデッキのテーブルの上に置いておけばぽめは多分冷めないんだ。
しばらく道を歩いていると独りの女の子があるいている・ラリアンとしては女の子である必要はないんだけれど・この場合俺が望むのは女の子であって・黒髪のボブで色は病的に青白くて・パッチリおめめは少し吊上がっていて・俺を軽蔑したようにみつめてくれるならば一重だろうが二重だろうがどうでもいいんだ・歩いている彼女はそんな目をしている・丸顔の部類だけれど顎が少し尖っているというよりシュッとなっている・その感覚は彼女を直接感じたラリアンにしかわからない・他にも歩いている女の子も男の子もガキもトシヨリもイヌもネコもネズミもカラスも芋虫もゴキブリも寄生虫も・うわああ…とにかくたくさんいたんだけれどもラリアンが是非ともぽめを食べてもらいたかったのは彼女だけだったんだ・ラリアンは彼女に近づいていく。
なんて声をかけようとラリアンが思案していると驚いたことに彼女の方から近づいてくるんだ・完璧な彼女はラリアンの頭の中で踊っている・醜い生きる悦びでもなく…あれを生命の躍動なんて評する奴がいたらそいつのぽめを覗いてみたいね・とにかく美しさしか感じないんだ・彼女の高貴なダンスからは・彼女はラリアンの目の前に立つかと思いきや通り過ぎていく・刹那自分の勘違いに腹を立てたラリアンだったけど完璧な女性に出会うことなんて短い人生の中で一度あるかないかだと思ったんだラリアンは・それにラリアンにも信じる思想があってそれに従ってこうなることも予想していた・だから彼は彼女を呼び止めたいのだけども比喩を用いてその瞬間を特別にすることはしないさ。
歩くたびに少しだけ揺れる小さく形のよいヒップラインがわかるジーパンの後ろ姿に性的な魅力を感じて・ラリはウッドデッキのテーブルの上に置いたフライパンの上のぽめのことが心配になった・ぽめに翼が生えて何処かにとんでいってしまったら二度とあのぽめには会えない・テーブルの上のフライパンの中のラリを鳥が食べてしまってもラリはぽめに会えない・もしも食べた鳥を運良くみつけてもそいつの腹を切り裂いてぽめを取り出す作業には手間がかかるし動物愛護の類の団体にみられたら訴えられるかもしれない・そのときぽめが形を留めていればせめてもの救いだけどぽめが消化されていたら最悪だ・そんなことをラリは考えながら彼女の後姿をみつめていてこの世界に俺と彼女だけしかいなければ世界は救われるのにと嘆く・すると世界は二人だけになる。
やっとの思いで彼は彼女に声をかける・ドキドキしているのに自分のぽめをためらいなくちょん切るような奴だから彼は話しかけている間も自分の息が臭くないかを気にするような男なんだ・彼の言葉に彼女は言うんだ「私でよければあなたのぽめを頂きましょう」彼の喜びは人類が滅んだときに他の生物が感じたものよりも大きかった・彼は汗ばんだ手のひらを自分のジーパンで拭いて彼女の手を掴んだ・ほんとうはそんな手もちょん切りたくなったけれど・そうしてしまったら同じように汗ばんでいるもう片方の手で彼女の手を掴まなくてはならないし・せっかくぽめを食べてくれるという彼女にその片方の手をちょん切ることを頼むことは俺の行き先を尋ねることよりも気が引けた。
ぽめを食べてくれる相手がみつかって1つ心配が晴れると今度はやっぱりテーブルの上のフライパンの中で冷めないでいるだろうぽめのことが気にかかる・だから心臓からむせ返るような血の匂いを年中罅割れた唇から吐き出しながら走る・そのうち周りの建物が消えていって文明が自然が消えていくから新たな心配ができた・雲が消え空が消えこのまま太陽が消えたらぽめは冷めてしまうのではないか・叫びながら走るのだが直ぐに声は嗄れて・滴る高温の汗に皮膚は焼け爛れて・今の俺は気が狂っているとわかっている俺はまだ気が狂っていないのだと安心する・そうでもしなければ醜くなっていく身体の変化に精神が耐えられなくなるから・やっと家のある場所にフライパンが落ちているのがわかる場所まで来た・こんなにドキドキすることはないけれど・これは走ってきたからなのだろうかと思うがやはり違う・ぽめは無事だったから大切に手のひらに取って・ぽめを食べると不完全な俺は不完全なまま完成され消えていく受け入れた場合は・だからこれは愛の物語なんだ。
これは俺の物語だ。衝動に勝る理性は存在しない。
★★★
彼の死を知ったのは最近のこと・互いを分かり合えると少なくとも僕はそう思っていた・友達が少ない僕はこれまで流した涙を集めたよりもたくさん涙して・気がついたら泣き疲れて随分長い間眠っていたようだ・どうしようもない彼だったけれど憎んだり批難することができなかったのは僕の弱さかもしれない・お日様が淡く雲ひとつなく空は薄緑で風は優しい・だから僕は彼の墓があるという森へ向かうことにした。
ここまでの道すがら僕は13人と目が合って・この数にきっと意味はないのだけど13は彼が唯一愛したあの子の誕生月と誕生日を足した数だったことに気がついた・それでもこの数にきっと意味はないのだと思う・そういえば彼が死んだ正確な日はわかっていないが13日なのかもしれない・もしかしたら受け入れ難い彼の突然の死は連続殺人犯によるもので・彼は13人目の犠牲者なのかもしれない・それともなければ彼は13回目の自殺に成功したのかもしれない。
沢山あって限がないからいま立っている場所を森の入り口にした・道に迷わないよう僕は器用に短刀を使って木々に矢印を刻んでいく・木の寛大さに感謝しながら矢印を刻んだ木の根元には申し訳ない気持ちとして僕の血を数滴垂らす・木からすればこれにもきっと意味はないのだが僕には大切な行為なんだ・指の腹の切り傷を潰すように力を入れると僕の赤黒い血液がポタリポタリと垂れて彼が眠る森に呑み込まれていく。
日が暮れかかったのに彼の墓はまだみつからない・僕は彼とは違い考えているんだちっぽけな脳みそを捻り潰すくらいに・さっきは少し嘘をついたのは僕は心の中では彼を軽蔑し反面嫉妬していた部分がある・意味はないのだけど彼が聞いたら笑うのだろうけど僕はそうだったそうだったと今なら認められる・それなら…彼の墓に出向く意味はないのかもしれないと思うのだから引き返そう。
帰ろうとしたのだが予想していたように木に刻んだ目印は役に立たなくて・僕は僕の目が眩んでいるからか歪んだ満月の下で道に迷っていたら湖の辺にいた・持ってきた水が尽き果てていたから湖の水を飲もうとしたとき・月明かりに照らされた湖面に映し出された僕の顔は彼の顔ではないか!そうだったのか…僕は彼になったのかもしれない・○○と○○を得たのなら怖いものは何一つないのさ・僕はあの彼がしたように昂奮に任せてポメを短刀でスパッとちょん切った。
★★★★
その後の出来事を思い出すと俺はいつも直前の食事とその前の食事を吐き出してしまうから嫌なのだが・奴のぽめはちょん切られた途端どす黒くなって腐っちまった・湖にチャポンッと落ちるぽめを見つめる奴の顔はみるみるうちに紫色になって恐怖に手がぶるぶる震えるせいか手がぶるぶる震えたせいなのか・叫びながら湖に飛び込んだ奴が最後にみたのは汚らしく涙と鼻水を垂らしてぐちゃぐちゃになった醜い自分の顔で戻ってくることは泣く・あんなに色がなく綺麗だった湖は性と軽薄を匂わせる赤に染まってしまった・ということは正確にいうと奴の墓は森の中のあの湖なのかもしれない。