Q15 勇者と魔剣と黒い結晶?
戦闘シーン短いかも……
バリバリバリバリッッ!!
俺が作り出した雷の魔剣『雷魔の剣』から迸る雷光があたりを照らす。
刀身の形状は長剣と呼ばれる形で、柄には黄金色の宝玉がはまっていて、その宝玉はほのかに光を放ちつつ、そこから魔剣全体に雷の魔力をいきわたらせている。
かなり強力な魔力を秘めた魔剣だ。こいつの力を使えばあの謎の火竜でもなんとかなるだろう。ただし――
グラッ
(くっ……一気に魔力を使ったから、めまいが)
強力な魔剣の創造の代償として魔剣創造の消費魔力量を増加させたことで、俺の体内魔力の大半がなくなってしまった。体内の魔力の急な大量消費はめまいや立ち眩みなどの症状を引き起こし、ひどい時は気絶してしまうのだ。
(すぐには動けそうにないな……ま、必要なものは創れたからこいつを――)
「――ルインッ! 受け取れ!」
俺は今、俺に被害の出ないように下のほうで火竜との鬼ごっこの真っ最中であるルインにこの雷魔の剣を渡した。
というか、ぶん投げた。
雷魔の剣は空気を切り裂くようにまっすぐ、一直線に飛んでいき――
パシッ
ルインの右手に収まった。
「おおー! この剣カッコいいー!」
「んなこと言ってないで、さっさと火竜をやっちまえ! 残り時間も少ないぞ!」
雷魔の剣を手にしてはしゃいでいるルインにそう叱咤すると、ルインはそうだったと言って剣を火竜に向かって構えた。
「何秒?」
「あと25秒、行けるか?」
「楽勝」
そう言ってルインは目を閉じて、自身の纏う気を変えた。目を開けると、そこにはいつものおちゃらけた様子は鳴りを潜め、鋭い視線で火竜を見つめる勇者がいた。
「いくよ」
ルインはただ一言だけささやくと、火竜に向かって突撃していった。
(この剣なら、火竜を倒せる)
私は、直観的にそれを悟った。同時に、あまり形を保てないことも。そして、この剣に秘められた『魔剣技』のことも。
私は、「いくよ」とだけ言って火竜に突っ込んだ。
火竜は、急に視界から消えた私を探していたようで、突撃してくる私を光のない目で見つけるとすぐに炎の塊を飛ばしてきた。
私はその塊を剣で切り裂いて、できた空間を強引に突破した。
流石の火竜もこれには驚いたようで、さらに沢山の炎弾を放ってきたが、私はその炎弾のうち自分に確実に当たるものだけを切り裂いて、残りはすべて回避した。
(のこり、20秒)
火竜は接近してきた私をその長い尻尾や立派な鈎爪で叩き潰そうとしてきた。
私は剣でそれらすべての攻撃を受け流し、合間を縫って攻撃していった。しかし、火竜のガードは固く、なかなかあの青黒く光る胸部を攻撃することが出来ないでいた。
(のこり12秒、ジリ貧だ)
そう、このままではいけない。剣が存在できる時間ももう少ない。ここらで決めないとかなり不味い状況だ。おそらく学園側にもこの事態は伝わっているとは思うが、ここから学園まではまだまだ距離があった。増援が到着するのもまだ少しかかるはず。
チャンスが、欲しい。
無数の攻撃を繰り返している火竜の体は、同じく無数のカウンター攻撃によってボロボロに傷ついていた。
どんなに傷ついても決してひるまず攻撃を繰り返していた火竜だが、いつまでも倒れない私にしびれを切らしたのか、その大きな翼で羽ばたいて私との距離をとると火竜は大きく空を仰いで力をためた。これで決着をつけるつもりらしい。しかし、それはこちらにとっても好都合だ。
私は、弱点をさらしている火竜に向けて『魔剣技』を使おうと構えた。
しかし……、
『クオオオォォ……』
「えっ」
力をためている火竜から、悲しげな鳴き声が聞こえた気がした。
とっさに火竜を見るが、とてもそんな鳴き声を出すようには見えなかった。だが、火竜の体は私がつけた傷だけでなく、それ以前からついていた傷からも血が流れだしていて、見ていられないような有様だ。
普通なら今にでも倒れてしまいそうなくらい傷だらけな火竜だが、以前力をためている様子は変わりなかった。
しかし私が火竜の光のないうつろな目を見つめると、一瞬だけ火竜の瞳がこちらを向き目が合ったような気がした。その目からは――
「そっか、あなたは……」
「ルインッ! 来るぞ!」
ライ君がそう叫ぶと、火竜の口から今までとは比べ物にならないような大きさのブレスが吐き出された。
「大丈夫だよ。あなたは私が助けるから」
私はそうつぶやき、火竜に向けて剣の切っ先を向けて突きの姿勢をとった。
(のこり3秒)
「魔剣技……」
剣の先を火竜とブレスの一直線上に置き、魔剣技を発動。ライ君の創った雷魔の剣を強烈な雷光が包み込むが、私にはまったく影響はない。
私は火竜から目線を放さずに剣を大きく引いて、そのまま自らブレスに飛び込んでいった。
そして――
「雷魔穿突っ!!」
雷光瞬くその剣の力を開放し、爆音と共にブレスごと火竜の胸を貫いた。
ガシャアアアアアアアアアアアァァァァンッッ!!
それはまるで、真横に落ちる落雷のようだった。
――パキン
「ガアアアアアァァァァ…ァ…ァ…ァ……ァ………ァ…………!」
その瞬間、ブレスのど真ん中を食い破り爆発と共に消滅させた魔剣技による刺突で胸を貫かれた火竜は特大の断末魔を挙げて力尽き、下界の森に落ちていった。
「……こんな形でしか助けられなくて、ごめんね」
渦を巻く雷の残光を残して、サラサラと消えていく雷魔の剣を片手に、私は小さな声でそう言った。すると、火竜を倒したあたりから何か青黒い結晶のような塊が落ちてきた。
私はそれを空中でキャッチした。
大きさはこぶし大位で、何かの結晶のようだが、全く光を反射せず、不気味な気配を感じる。そして、恐らく私の攻撃によってできたであろうヒビが入っている。
私はなぜかその青黒い結晶から目が離せなくなった。見ているとまるで、どこかに吸い込まれてしまうような感じがして――
「おい、大丈夫か? ルイン」
「あっ、ごめんライ君。大丈夫だよ!」
私ははっとしてその結晶から目を離し、彼に向き直った。
……大丈夫か? こいつ
俺が話しかけたとき、ルインは謎の結晶のようなものを見つめていた。
何故か俺は、そのままにしていたらルインが何処か遠いところに行ってしまうような気がしてしまい、つい声をかけてしまったが、ルインは何でもないよと言わんばかりに元気アピールをしてきた。
「ところでルイン、それはなんだ?」
俺はさっきから気になっていた謎の結晶について聞くことにした。
「あぁ、これ? 私もよくわかんないんだけど、あの火竜を倒したところから落ちてきたの」
「落ちてきた?」
それはつまり、火竜の体内から出てきたという事だろうか。そういえば、あの火竜が纏っていた霧とこの結晶は同じ色をしているし、同じような気配を感じる。
ふむ……まぁここで考えても仕方がないか。それに、どうやらやっと来たらしいしな。
「おーい君たち! 今大きな雷がしていたが、火竜は!?」
見ると、例の円盤に乗ったたくさんの種族の人間たちがこちらにやってきた。
「学園の人達かな? 遅いよー」
「ここから学園まで結構離れているんだし、仕方ないだろう。むしろかなり早い。それよりも――」
この状況、どうやって説明しよう……。
戦闘シーン難しいなり(-_-;)