Q11 勇者の襲撃?
タイトル変えました。
ちゅん、ちゅん……
『……ん、…君』
んん、眩しいな、もう朝か……。
『……イ君、……ライ君』
なんだ朝っぱらから、騒がしいな……。今日は何かあったっけ……?
でも、眠いなぁ……。もう少し眠ろうかな。
「起きろーーーーーーーー!!」
「うおおおおおっ!?」
ズルッ! ドシンッ!! ガツンッ!!!
突然の響いた大きな音に驚いたのか、先ほどまで爽やかに朝の到来を告げていた小鳥たちが一斉に逃げ出した。
「いつつつ……な、なんだ!?」
「なんだじゃないでしょ、ラ・イ・君」
「な、なんでお前がここに!?」
そこには、このパンゲア王国の第二王女で俺の婚約者のルイン・ノア・パンゲアが立っていた。
「ふふん、君を起こしに来たに決まってるでしょ?」
「起こしに来たって……」
そして、前世で魔王だった俺を倒した勇者の生まれ変わりだ。
「いくら王都の中にアダマスク家の屋敷があるとは言え、許可もなしに上がり込んでくるのは王族でも失礼なんじゃないのか?」
「え? ちゃんとお父様たちには許可とったよ?」
「……さいですか」
彼女の言うお父様たちとは、この国の王であるロナウド・ノア・パンゲアとその悪ゆ……ゴホン、友人で近衛騎士団長を務めている俺の父親、リオス・レオ・アダマスクのことを指す。
「ライ君、また隠れて遅くまでスキルの修行してたでしょう。分かるんだからね」
ルインは咎める様な口調でそう言った。
「う……ばれてたか、すまん」
「やめろとは言わないけど、体壊さないようにね」
「……あぁ、分かった」
「ほんとかなぁ~」
「本当だ、心配するな」
疑わしそうな目つきで見つめられたが、諦めた様子でため息をついた。
「……はぁ、分かったよ。あっ、そうだそうだライ君! 今日は学園に行く日だよ! そのために起こしに来たのに、すっかり話し込んじゃった。ほらほら早く準備準備。馬車に遅れるよ!」
「ん? 今日だったけ?」
「ライ君ほんと大丈夫? 修行のし過ぎで感覚狂っちゃったんじゃ……」
「だ、大丈夫だって。ほら、準備するんだろう? 着替えるから外で待っててくれ」
「は~い。急いでね、待ってるよ! ……あ、ご飯はちゃんと食べるんだよ」
「はいはい」
「じゃ、あとでね」
そう言ってルインは、バタンと俺の部屋のドアを閉じて出ていった。
「相変わらず嵐のような奴だな……」
もうちょっと王女らしく振舞ったらどうなんだろう。昔は国王たちの前では大人しくしていたはずなのに、いつの間にか気にしなくなってたし。
まぁ、それがあいつの素なのならそのほうが良いだろう。ずっと猫をかぶり続けるのもつらいだろうしな。
この十年で、俺とルインの関係は少々変化していた。
最初はまだよそよそしいところもあったが、互いのことを知るにつれてだんだんと気の置けない関係にまでなった。
……まあ要するに、俺もルインのことを好ましく思うようになったのだ。
最初は精々興味があった程度だったが、俺が前世で魔王になったいきさつを語った時にあいつは心の底から泣いてくれていた。多分、あいつのことが本格的に気になりだしたのはあの時からだと思う。
そのことがきっかけでルインとの関係は進んでいき、今や恋人のような関係だ。
…………いや、恋人というより―――
「おーい、ライくーん! まだーー?」
「今行く」
――――保護者、のほうが正しいかもしれないな……。