Q10 なぜ転生したのですか?
夏休みの宿題ガガガ…………。
……………………なんだろう、なんだかとってもふわふわした気分だ…………気持ちがいい……………………ここは…………どこだっけ?………………確か私は…………………みんなに看取られて…………死んだはず…………――――――――――え?死んだ?
「そうだ、私は死んだはずなのに……」
――どうして生きてるの?
「ってあれ!? なんか私若返ってるし!?」
おかしいな、私70まで生きておばあちゃんになってたのに。
周りを見渡すと、一面に霧のようなものが漂っている真っ白な世界だった。
「ここ……どこ?」
「ここは、天界という場所じゃ」
「っ!? ……あなたは、誰」
その人は、全く気配を感じさせずに私の後ろに回り込んでいた。
いや、まずヒトなのかも怪しかった。
そこに存在していることはわかるのに、一体それがどんな顔をしているのかも、どんな格好をしているのかもわからず、気配も感じない。ただ、少なくとも人の形をしていることは確かだった。
「わしか……わしは&$##’)’#じゃ」
「……え? 今なんて――」
「――あぁ、すまんかったの聞き取れんかったか。……そうじゃな、いうなれば神という存在じゃ」
「えぇ!? か、神様!?」
「まぁ他にも人には管理者とか創造者とかとも呼ばれるな」
「じゃあここって、天国なの? ……なんですか?」
「ふむ、ちと違うな。ここは天界、わしと同じような存在しかおらんよ。お前たちが死と呼ばれる状態になったら天国ではなく、ほかの神が管理している世界に生まれ変わる」
「そしてここは天界の中にある、魂の置き場所じゃよ」
「魂の、置き場所?」
「そうじゃ。大きな力を持った魂は、次に生まれ変わった世界に大きな影響を与える可能性がある」
「そのため、その様な力を持った魂が転生する世界は慎重に決めなければならん。ここは、その魂が転生するまでの間、保管される場所じゃ」
「……でも、周りにはそれらしいものはありませんが」
「説明したところで理解できんじゃろうから、気にするな」
「……分かりました」
「よろしい。……さて、これからはお前さんの話じゃ」
「私の?」
「お前さんは勇者として魔王を打倒し、人間たちを救った……これでいいか?」
「はい」
「お前さんはわしの世界に存在するすべての人間たちの願いを背負って生きてきた。それは魔王討伐後も死ぬまで続いていった」
「それほどのことをなしたことは正に偉業と呼べるじゃろう」
「そのことを称え、本来ならわしが選んだ世界に記憶を消して転生させるところを、お前さんに自由に決めてもらうことにした」
「なぁに心配するな、お前さんならどんな世界に行っても良い影響を与えるじゃろう」
――――――さあ、どんな世界がいい―――――
「私は……」
その言葉を聞いたとき、私は不意にあの魔王のことを思い出した。
「あの、神様。私が倒した魔王は、どうなったんですか?」
「あぁ、あの魔王か。あ奴も強い力を持った魂じゃったからの。つい先ほどまでここに置いてあったが、ちょうどいい世界が見つかったのでな、そこに転生させることになった」
よかった、まだ間に合いそうだ。
「なら、私もその世界に転生させてください」
「……ほう、なぜじゃ」
「また会おうって、約束したので」
「……そうか、よろしい。その世界に転生させよう。ならば、記憶は残したままじゃな?」
「はい」
「魔王のほうも記憶は消さずにおいておこう、よいな?」
「ありがとうございます」
「……では、これから転生させる。お前さんは少し眠っておれ、目が覚めたらそこは別の世界じゃ」
そう言って神様は私の頭に手を置いた。
――――あったかい……。
「その世界は、お前さんがいた世界によう似ている世界じゃ。じゃが、神が干渉できるのはこの程度じゃ、魔王と確実に会えるかは分からん」
私は薄れていく意識の中で、その言葉を聞いた。
「再会を祈っておるよ。それではな」
そこで、私の意識はなくなった。
「てことなんだけどさ」
俺はもう色々と驚きすぎて、感覚がマヒしてしまった。
というか神ってホントにいるんだな…………。
「はぁ、なるほどな。にわかには信じられないが、お前の様子を見ると嘘じゃなさそうだ」
「嘘じゃないよ、ほんとだよ」
「わかったわかった」
というか、こいつがやってきたことって神にも認められるほどだったのか……。
「まぁいいや、こうして会うこともできたんだし」
「ところでお前、さっき前世では好きになった人なんてできなかったっていってたけど、70年間も生きてきて結婚してなかったのか」
「う、……そうだよ! 君に操を立ててたんだだよ!」
「操ってお前……」
「と、とにかく! 君は私の婚約者になったんだから、ちゃんと私を守ってね!」
「はぁ? お前のほうが強いだろ」
「ギリギリだったし、君少し動き鈍かったでしょ。第一、アダマスク家は騎士の家なんだから、王族を守るのは当然だよ」
「都合のいい時に家のこと持ちだしやがって……」
「使えるものは何でも使う、それが私の信条です」
「生意気いいやがって、この野郎」
「野郎じゃないもーん、お姫様だもーん」
はぁ、全く。この先が思いやられるな……。
でも、
悪くはないかな…………。
そして、10年の年が過ぎた。
俺たちは15歳になり、学園に通うことになった。
………………あんな事件が起きることも知らずに。