最下層【居住区画】6
「やらかした……」
翌朝。
マスターの忠告空しく僕が目を覚ましたのは午後を回ってから。
完全に寝過ごしである。
「今からじゃ中層は無理だな」
時間は有限、夜は【sc】が活発になるので腕に思えがある人間以外は居住区画からは出ない。
探索に出るならば夜になる前に帰ってくるか、安全な場所に数人でキャンプを張るしかない。
そして僕は一人。
「最悪どっかの募集にでも飛び込むしかないな」
探索自体は一人でこなせないことは無い。
しかし当然、不測の事態という物は起こりえる物だ。
そうなった時一人ではどうすることもできない、と言うのは少なくない。
しっかりと探索するのならば数人一組で出るのが基本だ。
それは仲のいい者同士であったり、酒場でウマの合った者同士だったり様々。
けれど一定数、僕のような、所謂人付き合いを苦手とする者も存在する。
そう言った人間は人数合わせの者を募集している所へ入れてもらうのだ。
「すいません今は募集はかかってなくて」
「そうですか」
交流所兼委託所。
そこには依頼をしに来る人や、メンバーの募集をする人。
果ては。
「お、君可愛いね、どう? 一緒しない?」
「え、あ、その」
ああいった輩も集まる。
しかしまいったな、こうなると今日は下層に行くしかないか
脳裏に、昨日の店長のニヤケ面が浮かぶ。
「実力、ね」
呟きながら、僕は自分の手を睨みつけた。