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幕間 1
気持ち悪い。
それが目覚めて最初に抱いた感想だった。
次に身体、まったく動かない。まるで自分の物で無いかのように。
そして眼前、眼鏡をかけた年老いた男の顔。
「おはよう」
困惑はしたが、とりあえず言葉を返そうとして、けれどそれは叶わない。
「ふむ、やはりまだ完全ではないか」
そう男がつぶやき、離れていく。
眼だけで姿を追うも、首すら動かせない状態では視界から消えるのはすぐだった。
「混乱しているだろうが、今はまだ説明する時ではない」
自分に話しかけているのだろうか。
声だけ聞こえてくるこの状況が酷くもどかしく感じる。
「もう一度眠りたまえ、次はきっと…」
次第に男の声が遠のいていき、自分の意識が薄れているのだと気づく。
「……っ」
やはり声は出せない。
もはや視界すらも朧げになった状態で、けれど確かに聞こえた。
「おやすみ、アイリ」
それが自分の名前なのか。
その問いは、意識と共に霞んで消えていく。