下層【商業区画】3
探索は概ね順調だった。
二人とは言え、索敵の精度が段違いなのもあって移動の効率がすこぶる良い。
時間を割くことなくルートの選択ができるという事は、それだけ探索の幅が広がるという事だ。
その点で言えば、彼女と組んだ事は僥倖だったと言えるだろう。
しかし懸念はある。
道中、彼女はそのキャラクターを一貫として崩さなかった。
非力、それでいて無邪気なその様子は、一見すれば微笑ましいと言えるだろう。
けれどそんなはずはない。そうであるはずがない。あれるはずがない。
生体レーダーを持ち、その操作、判断には淀みがない。見た目に反して体力もある。
そんな人間が一人であそこに居た。
その事実が、彼女への警戒を解かせなかった。
「どうしました?」
「いや、何でもない」
キョトンとした愛らしい表情からは悪意の欠片も感じられない。
『無垢すぎる』
それは今の人類において異常な程に。
だからこそわかる。それが仮面なのだと。
その偽りが、守るためなのか害すためなのかの違いはあれど。
彼女も探索者だというのなら、そこにはきっと理由がある。
「そろそろの筈だ、気を抜かず行こう」
「了解でーす」
どちらにしても、彼女への警戒は怠らない。
自分を偽る理由など、ろくでも無い物に違いないのだから。