下層【商業区画】2
彼女の手の中に納まっている機械。
生体レーダーと呼ばれるそれは、探索の際に必須とされている。
個体による性能差はあるが、低い物でもそこそこの範囲で索敵ができ、
高性能ともなれば広域で索敵できるのでとても重宝される。
当然ながらかなりの貴重品で、市場に出る事はまず無い。
回収したジャンク品を寄せ集めて修理したものが一般的で、状態の良い物が拾える事は殆ど無い。
なので機能の一部が使えなかったり、動作にムラがあったりと問題もある。
それでもその有無で探索の安全性は大きく変わる。
何かがいると事前にわかるのは、作戦を立てる際に非常にやりやすい。
いるかもしれないと警戒するのと、いると断定して警戒するのでは天地の差なのだ。
しかし、便利な生体レーダーではあるがその使用者は多くない。
所持していても、それを使えるかどうかはまた別の話だからだ。
ただでさえジャンクの寄せ集め品だというのに、操作は複雑、表示される情報もまた多く、
使いこなすには知識とセンスが問われる。
このことから、レーダー持ち、通称サーチャーは多くのパーティーから必要とされる。
もしかしたら、先程の優男はこのことを知っていて誘っていたのかもしれない。
先程まで抱いていた彼への認識を改め、心の中で謝罪しておこう。
「周囲反応無しでーす」
「よし、じゃあこのまま進もう」
紆余曲折あったが、行動を共にしてみれば成程悪くない。
多少アレな性格と言動に目を瞑れば、サーチャーとしての働きは十分だ。
「いくら私が可愛いからって、そんなに見つめられると困ります……」
「………………はぁ」
問題は、どこまで僕が許容できるか。
「あ、その反応はちょっと傷つきます」
「だったらその作ってるのをやめてくれ」
「はて、何のことやらわかりません」
「……止める気は無い、と」
彼女の反応に溜息をついて、僕はがっくりと肩を落とした。