下層【商業区画】
「待ってくださいよー」
あの騒動の後、僕はまだ彼女と行動を共にしていた。
「…………」
より正確に言うなら付き纏われていた。
あんな事があった手前、パーティー探しを続けるのは難しい。
仕方が無いので今日は一人で下層を漁ろうとしていたのだが。
「これも何かのご縁ですし」
「僕にとっては切りたいご縁だ」
「酷いですー」
こいつは先程した自分の行動を忘れているのだろうか。
「こんなに可愛い女の子と探索だなんて、ラッキーだと思いません?」
「自分で言うかそれ」
というか、見た目に反して性格が悪い。
言っている事も、否定できないから癪である。
「大体、探索に行きたかったならさっきの奴と行けばよかっただろ」
「あの人なんか目がやらしかったですし」
「可愛い女の子を相手にしてる男なら普通なんじゃないか?」
「きゃー、可愛いだなんて照れますー!」
……あぁ、疲れる。
素なのか、それともこれも作っているのか、判断に困る所だ。
ただ。
「あ、南三〇先に何かいます」
「……数は?」
「んー、三と少し離れた所に一、です」
「迂回するか。南西方向は?」
「えっととー」
能力は高い。
少なくとも索敵能力に関しては僕よりも遥かに。
「確認できません!」
「じゃあそっちから大きく回ろう」
「了解ですー!」
ボヤいた割にしっかりとパーティーしているあたり、僕も満更ではないのかもしれない。
そんなことを考えて、軽く自己嫌悪した。