拝啓 荒廃した世界より
遙か昔、まだ地上に【奴ら】が現れる前の事。
今の僕達の暮らしが霞むような文明がそこにはあったらしい。
僕達の先祖はとても賢くて、その知恵のあらん限りを尽くしてその文明を築きあげた。
そして同時に、僕達同様愚かだった。
そんなに繁栄し発展していたにも関わらず、人同士の争いは絶えなかったらしい。
ある日、一つの国が兵器を使った。
それはとても恐ろしいもので、使えば国一つを焼け野原にしてしまうほど。
それを皮切りに、その他の国々も攻撃を開始した。
まるで待ってましたと言わんばかりに、世界中の国から兵器という兵器が乱れ飛んだ。
その結果、高度に発展していた文明は滅び、地上には兵器の残滓である特異生命体が溢れかえり、生き残った人々は地下での暮らしを余儀なくされた。
教科書の通りであるならば、生き残ったのは全人類の一割。
ここ以外の大陸にも生存者がいる可能性はあるが、比較的被害の少なかったここでさえも地上は酷い有様。
希望的観測としても、絶望的な物だった。
そんな話を僕達は聞かされてきた。
けれど、生まれたときから地上は地獄で、平和だった頃なんて物を知らない僕達からすればそんな歴史の事はどうでもよくて。
ただ毎日を生き抜くのに精一杯だった。
「……今日も収穫は無し、か」
大して重くもないバックパックを肩に掛け直しながら、独りごちる。
新暦223年。
人類は、絶滅の一歩手前まで衰退していた。