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家の前で、ジョウロ片手に途方に暮れる  作者: 荒匙サネル
第一章~死んで若返って異世界で
3/6

その3「結、で終わるワケがない」

最近ヘビーローテーションで聴いてる、わりとジャカジャカしてハードめな曲が耳元で鳴り響いてる、うるせぇ…人様がいい気持ちで寝てんのに邪魔すんなよ疲れてんだよ…あっコレスマホのアラームじゃん!起きなきゃ!


眠すぎてろくに開かない目でなんとかアラームを止めて、曜日を確認する。なんだ日曜日じゃん休みじゃん、なんで昨日の俺は休みなのにアラームセットしちゃったの?思考能力が昇天しちゃったの?二度寝し

ん?昇天?なんか引っかかる…というか昨日の夜帰宅してから



「あ゛ぁ!?」



思い出した、思い出してしまった。昨日の夜自分は恐らくけっこうな重傷を負ってる筈だと。慌てて飛び起きて後頭部を確認する、あんだけ強打したんだ、確実に何かしらの変化があるはず、しかも自分の記憶が間違っていなければ恐らく頭蓋骨イッてると思われる。しかし自分の後頭部は健康的な状態を維持していた、凹みもなけりゃタンコブも無い、何も起きていない。


夢、だったのか?あれが、夢?確かに転倒して後頭部を壁にスマッシュした記憶あるんだけど…気味が悪い、なんか眠気も霧散してしまった、顔でも洗ってコンビニに朝飯でも買いに行くか。


もそもそと布団から抜け出して伸びをする、今日はなんだかすごく調子がいい、なんつーか高校時代の一番フレッシュだった時に体が戻ったみたいだ。不摂生で弛み始めていた不健康ボディーの癖に、超いいかんじ。


洗面所で鏡の前に立つ、そこで新たな異変に気づいてしまった。鏡に本来映るはずなのは、やつれて弛んだアラサーのパンピーのはず、しかし写ってるのは…昔懐かし未成年の俺。とりあえず思いっきり頬をつねる。



「………いてぇ、は?え?夢じゃない?」



二段夢落ちの可能性も無いことはないが、恐らくは現実。死んだと思いきや生きてて若返ってました、はははっ意味不明。そんな風に洗面台の前で呆然としていると、カタンッと玄関のポストに手紙が押し込まれた音が耳に届く。


完全に理解の斜め上を逝ってる現実にふらつきつつ玄関に向かう、土間には一通の封筒が落ちていた。日高大和様と書いてある、消印も何もないそれを拾い上げる。半分動いてない脳みその指令に従いながら封を破り、中を読んでみた。



_____________________________


まちがえて やっちゃった


おわびに いせかい てんい を ぷれぜんと


おうち じょうろで そだてて


なんとか いきのびて みようね


がんば おうえんしてる


かみ

_____________________________



よく土間を見てみると、レトロな真鍮製のジョウロが置いてあった。つまりどういうことなんだ、異世界転移か?何故若返ってる?おうちそだててじょうろでって家じゃなくてアパートなんですが…。と、ここで嫌な予感がした。とりあえずジョウロを引っつかんで玄関からお外に出てみる。


そして嫌な予感はキレイに的中した。



「え?は?……えっ?一軒家?なぜ?…え?うわー大自然…雄大だわぁ…」



そこにあったのは、アパート一室分の一軒家だった。外観は例えるならアレだ、築ウン十年のボロい借家風味の悪意を感じるデザインだ。そしてそんな一軒家が建っているのは小高い丘の上、周囲に鬱蒼と広がる原生林みたいな樹海が、コンクリートジャングルで疲弊した目に優しい、そんな樹海の上を極彩色の巨大な鳥が飛び、その鳥を樹海から飛び出した巨大爬虫類がメシャァアッと捕食した。少なくとも、あんなサイズの爬虫類は地球に居ない。


そしてお話は冒頭に戻る、すごいよね全然理解できないよね、絶賛現実逃避だよね。どこだよ、ここ、異世界転移ならもっとこう…人のいる場所とかにしてよ。どないせいっちゅーねん。


こうして、異世界の樹海のど真ん中、ジョウロ片手に家の前で途方に暮れる元アラサー現青少年の図が完成したのである。

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