序章
異世界放流記の主人公はいつだってポジティブな人ばかりだ。
現実では見れないドラゴンやリザードン、スライム等のモンスター。動物の耳が生えた異人種。そして何といっても魔法の概念があることだ。それは現実離れした世界に飛ばされて最初は戸惑うかもしれないが、なぜか皆状況を受け入れてたくましく生きている。
不思議だ。不思議でならない。
僕には無理だ。そんな「異世界サイコー」とはなれない。
不安にならないのか。家に帰りたくないのか。
なぜ帰る方法を見つけないのか。自分のお布団は恋しくないのか。兄妹と遊びたいと思はないのか。のんびりゴロゴロしたくないのか。
呑気に異世界ライフを楽しんで、もし現実世界に突然戻ったらその先しっかり社会生活できるのか。現実には剣と魔法で解決するものはない。何より一番信頼できるのは、自分の知識と体力とほんの少しのお世辞が大事だと思う。そのために学校にいく。学校が終わったあとの家は最高です。
家は最高の城。水も食料も本も家族、そして安心して寝られるお布団があるからだ。ああ、家に帰りたい。帰りたい。
どこで間違えたのだろう。僕は泣きながらドラゴンが飛び交う空の下一人ぼっちで座っていた。
「うわーん、帰りたいよー!I want to come home 」