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白狐のミソロジー  作者: ヴァイス
末裔の白狐
9/43

これ、チートじゃなくてバグよね・・・・・・。

ツッコミどころが多々あるとは思いますが、よろしくお願いします。

 今日は私の一歳の誕生日。


 であるのと同時に、私が何者かを知ることになる日である。


 ココと出会ってから約四ヶ月。

 諦めたわ。私もう自分が化物の生まれ変わりって言われても納得する。だって、水弾事件のことをココに話したら「まず水弾で壁は壊れないし、その上、木が何本も折れるなんてあり得ないの」って言われて諦めはついたわ。


 とりあえず、寝間着から服に着替える。狐人族は和服のようなもの(最近知ったけど狐服っていうみたい)を着る人が多い。けど、最近の子供は洋服のようなものをよく来ている。機能性に優れてるからね。狩猟するにもこっちの方が動きやすくて安全だし。

 ま、私は狐服だけどね。理由? 和服のまま縦横無尽に駆け回ることに憧れがあったからですけど? 何か文句がおありで? 一切受け付けませんよ?


 まあそれはともかく。

 どちらにしても、祝い事の時は種族衣である狐服を着る必要がある。それが狐人族の仕来りの一つでもあるのよ。普段、洋服(?)のような子はこういう日に着付けに手間取るみたい。私には関係ないわ。だって、私の家の狐服は自動洗浄サイズ調整機能付きのアーティファクトだもん。何でも、お母さんの実家、マイル家は家宝の狐服を着まわすみたいね。中に着る襦袢は自分たちで用意しないといけないみたいだけど。それもお父さんの家が用意してたから、私が生まれてバタバタとかはしてないわね。洗う必要もないから余計に。


 余談だけど、お父さんの家系であるクレハ家は先祖代々男家系だったみたい。でも、女の子が生まれて欲しいという願望もあった、というか、めちゃくちゃ強かったのよね。その願望故か、女物の自動洗浄サイズ調整機能がついた襦袢を作ったみたい。でも、中々生まれない。


 そんな中で父カルラの代でようやく女の子が生まれた。私のことね。


 お父さんのその報告に一族が歓喜の声を上げまくったみたい。それで村長や隣人の方々に怒られてるんだから世話無いけど。それでも、男家系に悩んでいたクレハ家にようやく待望の女の子が生まれたんだから喜ぶのも仕方ないことだと思うわ。


 ちなみに、お父さんの実家に行くたびに必要以上に私を可愛がり過ぎてお母さんに注意されるなんてことは日常茶飯事になりつつある。お母さんが義父達を叱りつけているのは結構シュールだったわ。


 さて、私が生まれたことでようやくクレハ家が作っていた襦袢が満を持しての登場ってわけね。

 で、今私はそれを着ているわけ。ぶっちゃけ、普通に着れば袖に腕を通した瞬間に私の身体にフィットするから重宝してるわ。着付けの面倒がないから尚更ね。

 襦袢は半襦袢で、下はこれまたクレハ家の作品である膝上丈のフレアスカートのようなものを着ている。これも、自動洗浄サイズ調整機能付きになってるわね。

 で、腰にはお母さん特製の自動洗浄サイズ調整機能付きの帯。

 前にデザイン重視の結び目が来るようになってるから、ファッション的には私も万々歳。


 ここまで言っといてあれだけど、アーティファクトってかなり貴重なはずよね? 種族衣とかにポンポン使っていいわけ? どうやって作ってるのかしら? 今度聞いてみよっと。


 最後にマイル家特製の狐服を羽織っておしまい。

 羽織るだけよ? 帯は中の襦袢の方を巻いてるから、そのさらに上から帯を巻くわけにもいかないでしょ? デザイン重視の帯が台無しになっちゃうし。


 お着替え完了。


 この状態で寝室を出る。そのまま食事をとる部屋に行く。襖を開けるとお父さんが椅子に座ってて、お母さんは絶賛料理中だった。


「おはよう。お父さん、お母さん」

「おぉ! おはようリリ! その狐服、似合ってるぞ!」

「おはようリリ。ホントねぇ。リリ用に作った帯もバッチリ決まっているわね」

「うん。この服大好き。これからはこの服装で動くね」

「おう。そうしろそうしろ」

「えぇ。是非そうしてちょうだい。可愛い娘がもっと可愛くなって自慢になるわ」

「えへへ。ありがと」

「「っ!!」」


 直後、私の認識を超えるスピードで私に抱き着いてほっぺすりすりをする私の両親。電気タイプの技ではないから安心していいわ。


 まあ、十分に分かっているけど。この二人は親バカよね。前世の両親には見習って欲しいわよ。


「お母さん、焦げ臭い。お父さん、汗臭い」


 私が端的な事実を述べると、お母さんは大慌てで台所へ直行する。手遅れだと思うけどね。

 お父さんは「臭い・・・・・・臭い・・・・・・」とつぶやいて両手両膝を床につけて、分かりやすく凹んでいた。楽しい家族ね。


 朝食を食べ終えてから三人で喋っていると、家の扉をノックする音が聞こえてきた。

 お母さんが玄関に行き、私とお父さんは遂にか。という感じで待っていた。

 いくつか喋る声が聞こえた後、お母さんが食事部屋に戻ってくる。そして、その後ろから一人の女性が入ってきた。


 年齢的には二十代前半くらいね。燃えるような赤いロングヘアー&狐耳のある超が付く美人なお姉さん。狐服と襦袢を着崩して両肩を露出させていて、大人の色香を振りまいている妖艶な美女だった。ん? どっかでみたことあるような?


 あ、私が転生した日に私を覗き込んだお姉さんか。一年振りだから思い出すのが遅れちゃった。


「おはようございます。神子様」

「うむ、おはようじゃカルラよ。して――――」

「お初にお目に掛かります神子様。リリ・クレハと申します」


 丁寧にお辞儀する。


「うむ、よろしくじゃリリ」

「よろしくお願いします」

「さて。では、用件を済ませて退散しようかのう」


 そう言って神子様は胸の間に手を突っ込んでゴソゴソやりだす。一歳児の前ですることでは確実にない。早急にやめなさい。

 しばらくゴソゴソした後、「おぉ、あったあった」と言って一枚の銀色のプレートを取り出す。


 間違いなくステータスカードだった。アーティファクト大全にも載ってたから間違いない。ていうか、ツッコミ遅れたけどどこに仕舞ってんのよもうちょっとやりようあったでしょうに。


「ほれ、受け取るがよいリリ。ステータスカードじゃ」

「ありがとうございます」


 ステータスカードを受け取ると自然と笑みがこぼれてしまった。


 その時、大人たち三人が私を見て惚けていたことはステータスカードに夢中になってた私には知り得なかった。


「コホン。では、お暇するかのう」

「神子様! ありがとうございました!」


 私の二度目のお礼に神子様は


「うむ。精進するんじゃぞ。リリ」


 と言って、そのまま家を出ていった。どうやってステータスを見るかを伝えずに。


 使い方知ってるからいいけどね。

 迷わず食事部屋にある棚を開いて、お母さんの裁縫セットを取り出す。その中から縫い針を出して、自分の指に傷をつける。少ししてから、プクッと玉のようになった血をステータスカードに擦り付ける。


 すると、魔法陣が白金とも白銀とも言い難い、大仰な言い方をすれば神々しい光を放ち始める。

ステータスカードに血を付けて魔法陣が輝いたとき、その魔法陣の色がその人の魔力の色になるってことみたいだけど。え? 私、こんな神々しい色の魔力なの?


 まあ、そんな疑問はすぐに忘却の彼方へ捨て去り、ステータスを見るためのワードを口にする。


「ステータスオープン!」


 そう唱えると、カードに私のステータスが表示されていく。表示されきると。


「なっ・・・・・・・・・・・・!?」


 絶句ものである。そこには信じられないものが表示されてた。


====================================

リリ・クレハ Lv1 1歳 女

種族:狐人族


生命:8657/8657

魔力:23681/23681

霊力:39452

物攻:2587

物耐:2691

魔攻:5927

魔耐:5927

敏捷:3598

魅力:測定不能

運:測定不能


スキル

【魔力操作】【血滾:使用可能】【錬成術】【錬金術】【夜目】【透視】【霊視】【眼通力】【霊聴】【神足通】【天耳通】【他心通】【宿命通】【天眼通】【自動再生】【完全耐性】【刀術】【身体強化】【豪腕】【豪脚】【完全看破】【空間把握】【気配感知】【魔力感知】


使用可能魔法

【火系統】【水系統】【風系統】【土系統】【雷系統】【氷系統】【光系統】【闇系統】【幻術】【時空魔法】【魂魄干渉魔法】


称号

【神狐の末裔】

====================================


 おかしい。パラメータの数字が明らかにおかしい。しかも、通常ステータスカードには書いてないような霊力なんてパラメータも表示されてる。

 スキルも聞いたことないような如何にもなものが列挙されてた。しかも、魔法なんて全系統に適性がある上、系統外魔法に該当するであろう魔法が三つもあった。

 特に【魂魄干渉魔法】なんて、人という種が持っちゃいけない魔法だと思うんだけど!?


 ていうかさ。魅力と運のところにある『測定不能』ってなに!? どっち!? どっちの意味で測定不能なわけ!? 悪い方!? それとも良い方!?


 称号には【神狐の末裔】とかいう未知の称号まであったし!


「「「・・・・・・・・・・・・」」」


 お父さんもお母さんも私も、言葉が出なかった。

 一歳時の狐人族の平均ステータスは大体500前後でスキルも魔法も六つあれば、かなり多い方なのよ。で、当然だけど普通は生まれて一年の子供が称号を持つことなんてない。ココは特殊な方なのよ。


 お母さんに聞いた話だけど、ココって結構有名みたい。数百年に一人生まれるかどうかの天才なんだって、称号もステータスカードを貰った時にはすでについてたみたいだし。


 私って魔法の練習をしてても魔力の底が見えないから凄い魔力量なんだろうなぁ。とか、呑気に考えていた時期が私にもありました。これ、チートじゃなくてバグよね・・・・・・。


「ちょっ・・・これおかしくない!?」

「あぁ。リリが神狐の末裔だっていうのは分かっていたが、いざステータスを目にしてしまうと、これはさすがに」

「ちょっと待ってお父さん。今聞き捨てならないことを言ったわね?」

「ん? ステータスを目にしてしまうと、これはさすがにのところか?」

「違う、その前」

「分かっていたが?」

「わざとでしょ? わざとよね? じゃなくて、誰が何だって分かっていたって?」

「うん。リリが神狐の末裔だっていうこと」

「そういうの先に教えてくれる!?」

「いや、ステータスカードを見る時のリリの楽しみの一つにしてやろうかと」

「そういうのは余計なお世話っていうのよ! こんな大事なことは迅速に伝えなさい!」


 このバカ親め。私が頭を悩ませていた原因を一年間も黙っているなんて!


「お父さんなんて大っ嫌い!!」

「なっ!?」


 そのままそっぽを向く私。


「頼むリリ! お父さんが悪かった! だから許しておくれ!! 嫌いにならないでおくれ!!」

「知らない!」

「そんなぁっ!?」


 ちょっと言い過ぎちゃったかな?

 大のしかも男の大人が膝を抱えて背を丸めて泣いてる姿は何とも痛ましい。


「ねぇ、お母さん」

「なぁに?」

「お母さんも知ってたの?」

「勿論よ。我が子のことだもの」

「教えてくれなかったのはお父さんと同じ理由?」

「そうね。それともう一つ」

「?」

「自分が特別な存在だと思って傍若無人に振る舞うかもしれないって思ったから。まぁ、杞憂みたいだったけれどね」

「そっか」


 確かに狐人族は成長が早く、生まれて半年もすれば色んなところに出歩けるようになるし、その過程で友達とかもできるかもしれない。

 成長が早い分、子供として見られる期間はかなり短い。でも、子供心はそう簡単には抜けない。つまり、自分が特別な存在だと知って高飛車に振る舞って友達を無くすかもしれないし、最悪逆に虐められる可能性もある。それを気にしてくれてたのねお母さん。もしかしたらお父さんも。


 私はお父さんの近くまで歩いて行く。側まで行くとお父さんが私を見上げてくる。


「ごめんなさいお父さん。お父さんは私のことを考えてくれてたのに、酷いこと言っちゃって」

「リリ・・・・・・・・・・・・」

「これからも私のお父さんでいてくれる?」

「勿論だとも! リリーーーーッ!!」

「わぁーーーーっ! いきなり抱き着かないでよ! しかも、やっぱちょっと汗臭い!」

「これがお父さんの匂いだ! 存分に堪能するがいい!!」

「堪能したくない! いいから離して!」

「だが断る! さあ、リリよ。俺をもっとぶげらぁっ!?」

「離せって言ってんじゃない!」


 お父さんのステータスは私の約二分の一くらいしかないので、引きはがすのは簡単だった。なんだ。最初からこうすればよかったんじゃない。


 その後も、お父さんがしつこく私に抱き着こうとしては殴り飛ばされ、蹴り飛ばされ、投げ飛ばされて。最終的には雷系統魔法を利用したほっぺすりすりで感電させて行動不能にしたわ。

 え? 威力は大丈夫かって? 大丈夫に決まってるじゃない。加減の仕方なんてとっくの昔に覚えたわよ。ていうか、そうじゃないと使うわけないでしょ。私の感覚でする普通の出力だと確実に感電死しちゃうし。


 まあ、こんなことするのもお父さんに対してだけだしね。その内耐性付くって。


 ちなみに、お母さんは「あらあら、うふふ」的な感じで終始、傍観者になってたわね。


 後、他の男がお父さんと同じようなことをしたら、問答無用で出力増大よ。命の保証なんてしてあげない。死んでも知らない。自業自得。お父さんだからある程度許すってことよ。

 赤の他人が私に引っ付きたいなら、死ぬ覚悟をしてもらうことになるわね。


 こうして、私たち家族の新しい形の生活が始まることになった。

読んでくださりありがとうございました<(_ _)>

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