もう認めるしかないの?
本日二回目の投稿です
「あ・・・・・・」
やってしまったの。
私、どうにも熱くなりやすい性格みたいなの。今初めて知ったの。
まだまだ魔術師として未熟だからお父さんにもお母さんにも使ったらダメって言われてた”青雷砲”をつい使ってしまったの。
いや、これはもう「つい」で済ませられることじゃないの。良くて後遺症が残るほどの重症、最悪死んでしまうの。それほど制御しきれていない最上級魔法は危険なの。
それでも、放ってしまった魔法はもうキャンセルできないの。
私は、さっき知り合ったばかりのクレハちゃんが青い雷に呑み込まれていくのを呆然と眺めていたの。
数秒、いや、数十秒にも及んだかもしれない青雷砲が途切れる。
そこにあった、否、いたのは。
「ウソ・・・・・・」
着ていた服はボロボロ。身体の至る所に火傷を負いながら荒い息を吐いているクレハちゃんの姿だったの。
~~~~~~~~~~リリside
「ハァ・・・ハァ・・・殺す気か!」
つい叫んでしまう。いや、これはもう叫んでも咎めてもいいはず! だって死にかけたもん!
「な・・・どうして、なの・・・・・・?」
「私が聞きたいわよ! 何で青雷砲なんて使うのよ! マジで死ぬかと思ったわ!!」
「普通は死ぬの。それほどの威力なの。火傷程度で済ませられるものじゃないの」
「そうでしょうねぇ! 私だってこれだけで済んで良かったって思ってるもん! ホンット死にかけたんだからね!?」
うん。マジで死んだって思った。
「ごめんなさいなの」
「ごめんで済んだら警察はいらない!」
「警察? それ何なの?」
「こっちの話よ」
この世界には警察ってないのね。それとも、この村だけ?
どっちでもいっか。旅に出れば分かることだし。
とりあえず、息を整える。あれ? なんか痛みが引いていくような・・・・・・何コレ?
疑問に思いつつアルジェを見ると、何かに驚いたかのように口をパクパクさせていた。これもちょっと可愛いわね。
「な・・・なんで・・・・・・」
「? 何よ?」
「どうして、火傷が全部治っていくの!?」
「え!?」
その言葉に驚いて私は火傷を負っていたところを見る。確かに傷が治ってってた。
「何コレ!?」
「何で自分で理解してないの!?」
「だってこんなこと初めてだもん!」
「・・・・・・・・・・・・」
驚きながらも、アルジェは安心したような顔をしていた。私の火傷を心配してくれてたのかな? 優しい子なのね。
お互い落ち着いたみたいだったから、質問してみる。
「で? 何で青雷砲なんて超危険な魔法撃ったわけ? 下手したら死んでたわよ?」
「ごめんなさいなの。私も使うつもりはなかったの」
「いや、使うつもりなかったって、実際使っちゃってるけど?」
「本当にごめんなさいなの!」
九十度以上の角度で頭を下げて、真摯に謝ってくるアルジェ。
「まあ、生きてるからいいけどね」
「ごめんなの」
「で? どうして使ったの?」
できるだけ優しい口調で聞く。
「本当に使うつもりはなかったの。ただ、私、熱くなったら自分が制御しきれないみたいなの」
「みたいって何よ、みたいって」
「私も今日初めて知ったの。私、こんなに熱くなりやすいって」
「そう・・・・・・」
まあ、生まれて一年ちょっとしか経ってないし、自分のことを分かりきれてなくてもしょうがないわね。
「私も質問していいの?」
「何?」
「青雷砲をまともに受けて、どうやって火傷程度で済むようにしたの?」
「気になる?」
「当たり前なの! 青雷砲は普通、一撃必殺にも近い最上級魔法なの! それを真正面から受けて火傷で済むなんて聞いたことないの!」
隠すほどのことじゃないしいっか。
「”水纏”を使ったのよ」
「”水纏”? 水を体に纏うあの魔法? それだと、逆に電気が流れやすくなって死んでしまうはずなの」
一応、こっちの世界にも感電の知識はあるのね。
「百パーセントの純水なら話は別よ」
「百パーセントの純水なの?」
「そ。純度百パーセントの水は電気を通しにくいの」
「そんな話聞いたことないの」
でしょうね。だって、この世界の科学はあまり発達してないみたいだし。
ちなみに、水質は込めた魔力次第で自在に変えることができるみたい。
「多分、知ってる人は少ないと思うわよ?」
ていうか、私くらいだと思う。
「・・・・・・でも、だからと言って火傷程度済むはずはないの」
「私だって出力最大にしなかったらこうして無事になんて立ってるわけないじゃない」
ホントギリギリだった。冗談抜きで死ぬところだったわ。
「それって絶対おかしいの。百パーセントの純水、魔力を最大限使う。これだけの条件だけで青雷砲をやり過ごすなんて完全に化物なの」
「うぐっ・・・・・・」
化物って真正面から言われてしまった。かなり傷つく。
「わ、私は普通の女の子よ!」
そうよ! 断固として認めないわ! 私は化物じゃない、普通の女の子よ!!
「普通じゃないの」
「何を根拠に――――」
「青雷砲を受けて立っていたの」
「うっ・・・」
「百パーセントの純水が電気を通しにくいって知っていたことも普通じゃないの」
「あぐっ・・・」
「そもそも、あれだけの魔法を連発しておいて魔力枯渇の症状が出ていないのもおかしいの」
「くふっ・・・」
「最後に、火傷が一瞬で治ったのは明らかに異常なの!」
「がはぁっ・・・・・・」
もうやめて。私のライフはもうゼロよ・・・・・・。
「あ、あと一つあるの」
「やめて!」
「最初に見た中級魔法で地面を抉り飛ばしていたの。威力的には王級、いや精霊級でも通じるの。それで使った魔力も含めてありえないの。以上のことから化物としか言い切れないの」
「・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう認めるしかないの?
「・・・・・・アルジェはどうなのよ?」
「ココでいいの。私は普通よりちょっと強いくらいなの」
「ちょっと?」
あの魔法の扱いに長けた感じからしてちょっとのレベルじゃ済まないと思うんだけど。
「良かったらステータスカード見る?」
「いいの? そういうのって普通は誰にも見せないって思うんだけど」
実力バレちゃうし。
「問題ないの。どうせ見せようと見せまいとやられる時はやられるの。ステータスオープンなの」
そう言ってステータスカードを私に渡してくる。
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ココ・アルジェ Lv8 1歳 女
種族:狐人族
生命:462/957
魔力:58/1496
物攻:928
物耐:845
魔攻:1397
魔耐:1288
敏捷:812
魅力:500
運:100
スキル
【魔力操作】【血滾:使用可能】【夜目】【透視】【先読】【中級鑑定】【杖術】【身体強化】【豪腕】【豪脚】【気配感知】【魔力感知】
適性魔法
【火系統】【水系統】【風系統】【土系統】【雷系統】【氷系統】【光系統】【幻術】
称号
【幼き魔法使い】【未来の大魔導士】
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驚いた。狐人族はステータスカードを貰ったばかりの時の平均は魅力と運を除けば五百くらい。ココはステータスカードを貰ったのが一ヶ月前だって言ってた。
つまり、魔法の練習をしていたことを考慮してもステータスカードを貰った時点で、一般平均の約二倍近いステータスを持っていたことになる。
で、戦闘中に私の回避方向が分かっていたかのような風弾が撃ち込まれたけど。あれは、ようなじゃなくて分かっていたのね。多分、スキル欄にある【先読】を使ったんでしょうね。
ていうか、称号まであるし、これがちょっと強いって? ちょっとどころじゃないわよ。
実際、私はお父さんとお母さんのステータスも見せてもらったことがある。
まず、お父さんのステータス。
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カルラ・クレハ Lv98 25歳 男
種族:狐人族
冒険者ランクA
生命:1982/1982
魔力:998/998
物攻:1284
物耐:1378
魔攻:1038
魔耐:994
敏捷:1784
魅力:200
運:80
スキル
【魔力操作】【血滾:使用不可】【夜目】【身体強化】【強化効率Ⅴ】【豪腕】【豪脚】【気配感知】【剣術】【体術】
適性魔法
【火系統】【幻術】
称号
【森の狩人】【剣豪】【大物喰らい】【一騎当千】【竜殺し】
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そして、お母さんのステータス。
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エンリ・クレハ Lv95 22歳 女
種族:狐人族
冒険者ランクA
生命:1385/1385
魔力:2397/2397
物攻:967
物耐:915
魔攻:1894
魔耐:1748
敏捷:863
魅力:300
運:100
スキル
【魔力操作】【血滾:使用不可】【夜目】【透視】【魔力感知】【杖術】
適性魔法
【水系統】【氷系統】【光系統】【幻術】
称号
【森の狩人】【癒しの聖女】
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これがお母さんのステータス。
さて、ここまで見れば分かると思うけど。
「ココ。アンタ、私のお父さんとお母さんといい勝負よ?」
「そうなの?」
「えぇ。これはもうちょっと強いでは済まされないわね」
「気にするだけ無駄なの」
「そうだけどさ・・・・・・」
こうなると、お父さんとお母さんが不憫でならない。
だって、娘の友達にいずれステータスで負けることになるし。
「でも、多分クレハちゃんの方がとんでもないことになってると思うの」
「あははは! 問題ないわ。私は普通の女の子よ!」
「いい加減認めるの」
認めない。認めないったら認めない。
「あ、それから。私はアンタの子とココって呼んでるから、アンタも私のことはリリって呼んで」
「いいの?」
「じゃないとこっちが落ち着かないのよねぇ」
「じゃあ、リリ。これからよろしくなの」
「うん。よろしく」
そう言って、握手をする私とココ。
「とりあえず、ステータスカードを貰ったら見せて欲しいの。リリの化物っぷりを見たいの」
「ふっ。構わないわよ。その時には私が普通の女の子だって認めさせてあげるわ!」
「天地がひっくり返って爆発してもあり得ないの」
「ほう。言ってくれるじゃないの」
「事実なの」
「・・・・・・・・・・・・」
私は絶対に化物なんかじゃないわ! 絶対によ!
これが、これからずっと親友として付き合っていくことになる幼馴染との初邂逅よ。
ステータスに関してはかなりテキトーです。暫定なので修正することもあるかもしれません。