これ、オーパーツなのよ
ココのステータスを見た翌日。
私もココもステータスに関しては完全になかったことにしようと、そのことには全く触れないということを暗黙の了解とした。
それはともかく、今日から私の森での狩りが始まる。色んな魔物を狩って食材を確保しないとね。
私の得物は錬成の練習で作った刀。刃長一尺一寸。刀は刀でも短刀ね。子供の身体じゃこれが限界。あんまり長いと持ち歩けないのよ。この刀は刃、柄、鞘等全てにおいてパイライトで作っててアーティファクトになってるのよ。名前は狐刀。性能としては、刀身に炎を纏わせることができる”炎纏”、雷を纏わせる”雷纏”、それから風を纏わせる”風纏”ね。これ以外の系統を付与しようとしたら自壊したのよ。
その後の試行錯誤で分かったけど、複数系統の付与は親和性の高い系統同士じゃないと難しいのよ。錬金術を使える者の腕は関係なくて、完全に素材の問題ね。多分、ミスリルとかオリハルコンとかアダマンタイトとか魔力浸透率のかなり高いものじゃないと似た系統以外の系統を同時に付与するのはムリね。尤も、似た系統だったとしてもよっぽど鍛練と試行錯誤を繰り返さないと付与するのは難度高いけどね。
後は、鞘の方にも多少ギミックを盛り込んでるわね。そのおかげで新しいスキルを手に入れることができたのよねぇ。
ココが一緒に行くと言って聞かなかったので、初日だけならと私は今日だけココと狩りをすることになった。
マーズ大森林はアスティア王国領の約四分の一の広さを持っている。四分の一と言われても地図の四分の一が森で埋まってるんだろうなぁという感じしかしないけど、具体的な数字を上げると目の玉が飛び出るくらいの広さということが分かる。
その広さ、なんと――――約二百万ザリア。一ザリアは元の世界で言う一平方メートルと同じくらい。
つまり、マーズ大森林はエジプトとほぼ同等の面積があるということ。これで四分の一ですよ? アスティア王国領はどんだけ広いんですか。もうビックリですよ。このレベルだと森林というより樹海じゃない?
よって、アスティア王国領は約八百万ザリア。それが四つあるようなものなので、大陸アーランドの総面積は約三千二百万ザリア。元の世界でロシア・カナダ・アメリカの面積トップスリーを足してようやく超えられる面積。これだけで相当広いことが分かるわね。
閑話休題。
そんな広大なマーズ大森林を今はココと二人で歩いてる。魔物なんてその辺を歩いてるだけで見つかるから慌てる必要全くなし。のらりくらりとしながら魔物を見つけ次第順次即殺。これが今日の狩りね。
といっても、もう狩る必要がないくらいには既に色々と狩ってドロップアイテムの肉をゲットしていたりする。
ちなみに、このマーズ大森林は場所ごとに跋扈する魔物の種類が違う。今回歩いてるのは二足歩行の豚ことオーク種が生息域にしている場所ね。
オーク種は割とどこにでもいる種族でオーク肉のドロップ率もほぼ百パーセントだから市場によく出回るみたい。食肉としては一般家庭にも当たり前のように使われてるのよ。私も転生してから食べた肉はほとんどオーク肉だったけど、味は普通に豚肉だったわね。
そして、今日はオーク肉を大量にゲットしている。ぶっちゃけ私とココの家。二つの家庭で使っても二、三日は保つレベルの量ね。他の家にもお裾分けしようかな。そうしないと一日での消費ができないし。
ちなみに、一日で消費しないといけない理由がある。狐人族の暗黙の掟(暗黙だから掟として確立されてない)でその日の収穫物はその日の内に消化するというものがあって、作物は別として、狩った魔物からドロップした肉等に適用されるものなのよ。
昔は、今みたいに食料保存のためのアーティファクト(所謂冷蔵庫等)がなかったから、獲ったものはその場で消費しないと無駄になってしまっていたのよ。狐人族は森の中に村があるから特にそれが顕著で、その名残で今代までこの暗黙の掟があるってこと。
「不思議な名残なの」
「狐人は古き教えを重んじる種族だもの。それぐらいの掟があっても不思議じゃないわ。むしろ、アーティファクトが自然と行き渡ってる分、昔よりは進歩してるのよ」
「確かにそうなの」
まあそんな感じでココと無駄話をしながら森を歩く。
しばらくすると、気配感知に引っかかるものがあった。ココも気付いたみたいで、私を見てきた。
「人ね」
「人なの」
人の気配が私とココの気配感知に掛かる。ただ、それだけなら遭難かなとか思ったり、冒険者が魔物に挑んでたりするのかなって思うんだけど。どうも人の気配の配置がおかしいのよね。
三人と二十人に分かれてて二十人の方が三人の方を取り囲むような形になってる。
「盗賊なの?」
「可能性は高いわね」
「バカなの? 死ぬの?」
「このままだと死ぬのは三人の方になると思うけどね」
どこかで聞いたことのある台詞を聞き流しながら考える。
マーズ大森林はアスティア王国とミルフィス連合諸国との国境付近に広がる森で、両国に入国する際は必ず通る必要があるから、マーズ大森林の南端の木を伐採して簡易的な道を作ってるのよ。
この道は色んな人が通るのよね。王族も通るし、行商人も通る。勿論、冒険者だって通る。
で、そこも含めて狐人族の庭みたいになってるのよ。縄張り意識が強いわけじゃないけど、自分たちの行動範囲内ね。そんな中で犯罪行為が行われるのは看過しかねる大問題なのよ。見つけ次第、情け遠慮容赦なんて一切せずに皆殺しすることになってる。これも暗黙の掟の一つね。まあ、おっかな過ぎる掟だと思うけど。
このことを知ってるから、いくら犯罪者でもこの森で悪事を働くことはない。不意打ちだろうと何だろうと殺す為ならできるのよね狐人族って。ココが言ってたのはこういうことよ。要は、私らの庭で好き放題したんだ覚悟しろってこと。
「じゃ、行く?」
「行くの。殺ってやるの」
「・・・・・・」
ココの殺気に当てられて私もちょっと震えちゃった。Mじゃないから気持ちよくはない。
で、私とココはその気配の方に全力で走る。周囲の木が風か何かに吹かれてるかのようにしなってるけどどうしたのかしら? 今日はそよ風がちょうどいいくらいに吹いてる快晴のはずなんだけどね。
接敵まであと数秒ね。
私とココは道に向かって跳ぶ。伐採した後に根っこがあったらまた生えてくるからとわざわざ掘ってから道を作ってるのよね。何も知らなかったら道に出た時に体勢を整えられずに落下ね。私たちは当然知ってるから問題なし。
跳んでる間に状況確認。
やっぱり、三人しか気配がなかった方は馬車を引いててそれを守るように立ってて、二十人いる方はその馬車を取り囲んでる。服装からしてもまさに盗賊って感じね。看破したら全員称号に【殺人者】とか【違法入国者】とか【強奪者】とか【強姦者】とかがあった。特に最後とか許せないわね。同性として。
着地。全員が私とココの登場に驚いて口をあんぐりと開けていた。隙だらけね。
「この森での犯罪行為。見逃すわけにはいかないわね」
「全員死んでもらうの」
私は抜刀し、ココは魔力を練り上げる。
「何だテメェら?」
頭と思われる二メートル近くはあるであろう大男がそう言ってくる。
「私たちを見てそんなことを言うってことは完全に常識知らずってことね」
「そんな奴に生きる道なんて与えてあげないの」
元よりそのつもりじゃなかったココ?
「はっ。小娘二人程度で何ができるっていうんだ。獣人の分際で言うじゃねぇか」
なるほど、コイツらフェゼールの人間ね。あそこは人間至上主義で他の種族を見下す奴らの集まりだからね。
「よく見たら結構可愛いじゃねぇか」
「よっしゃ、傷つけないように無力化して皆で輪姦そうぜ」
「その後は性奴隷として売っぱらっちまおうぜ」
「いやいや。二人ともかなり可愛いし、将来に期待できるから俺たちのもんにしようぜ」
聞くに堪えないわね。女を何だと思ってるのかしら。頭っぽい大男が私たちに向けて顔を向ける。
「獣人の嬢ちゃん。大人しくしとけば痛い目見ずに済むぜ?」
「ご冗談を。アンタたちみたいな屑に犯されるために出てきたわけじゃないわ」
「こりゃあ、ちっとばっかし痛い目を見ないとダメみてぇだな」
思うんだけど。何で盗賊テンプレって相手の力量とかを見極めずに来るのかしらね? あ、そうしないとイベントにならないからか。
「俺らの前に立ったことを後悔するんだな」
「その言葉のし付けて返したげるわ」
「やっちまえ!」
男たちが一斉に襲い掛かってくる。
「”天下氷絶”」
ココが魔法を発動。辺り一面が凍てついていく。私とココ、それから馬車を守っていた三人以外は首から下が完全に凍り付く。
「な、なんだこりゃ!?」
「つ、冷てぇっ!?」
「痛ぇっ! 凍り付いたところが痛ぇっ!」
氷系統神級魔法”天下氷絶”。一定範囲を瞬時に凍て付かせ、一生溶けることのない零下百度の氷に封じ込める広域冷却魔法。威力次第では数百万の軍隊すら容易く凍て付かせることのできる戦略級魔法になるものね。たかが盗賊を殲滅するために使うような魔法じゃないことはまず間違いないわね。しかも、絶妙な加減がされてるのか首より上が凍ってない。意外と残酷ねココ。ていうか私の出番なし。つまんない~。
「さて、お話しを聞きましょうか」
私はそう言いながら狐刀を鞘に納める。ちなみに、刀は常に左手に持ってる。だって帯刀したら歩きづらいもん。
「待て! 待ってくれ! まずこの魔法を解除してくれ! そうしたら何でも話す!」
「ほう。何でも、ねぇ」
「そうだ! 何でもだ! だから――――」
「交渉できる立場だと思ってる?」
私は頭の横にいる凍てついた盗賊に鞘を押し当ててギミックを発動。魔力を使って物理的な衝撃波を発生させる。発生した衝撃波は男の身体ごと氷を粉砕する。これが鞘に仕込んだギミック《衝撃波》。岩なんて簡単に砕けるほどの衝撃を放つ。普通の人間に使っても即死ね。
「ぎゃあああああああああああああっ!!」
唯一凍らされなかった首から上の頭がそんな叫び声を上げながら落下。そのまま事切れる。
「しゃべらなかったらすぐこうなるわよ?」
「ひぃっ!」
いい感じに脅して話を聞く。
話を聞いた結果分かったことが色々とあった。まず、盗賊たちは私の予想通り元フェゼール市国の人間だったこと。フェゼール市国で傭兵をしてたみたいだけど、戦争を仕掛けては敗戦するということを繰り返したせいか最近は疲れたようで戦争を仕掛けないようになったみたい。それが原因で、傭兵の稼ぎで生活していた人間が仕事を失って路頭に迷うってことが多発した。
フェゼール市国の宗教はその国独自のフェゼル教というみたいで、その中の教えには国内の同族を殺してはならないというものがあって、背いた者は全財産を没収、国外追放及び入国禁止が言い渡されて国の外に放り出されるんだって。処刑とか極刑とかじゃなくて追放なのね。どうもこの辺りの罰し方でも宗教の教えは生きてるのね。
この盗賊たちもその口で、生きるに困って犯罪に走ったらしい。どの世界でもこういうバカはいるみたいね。嘆かわしい。
盗賊たちは金品に興味はなくて、食料と女性を強奪してたみたい。一緒に会った宝石やお金はそこら辺に捨てたみたい。ま、宝石とか持ってたって意味ないもんね。犯罪者はどの都市にも入れてもらえないからお金なんて持ってても使いようないしね。
聞きたいことを一通り聞き終えて、私とココは盗賊たちの首を一気に撥ねる。生かしておいたら碌なことにならないし、暗黙だから普通の掟のように拘束力はないけど掟破りには違いないからね。
今言ったけど、普通の掟(お父さんが狐人に書いてた掟のこと)には拘束力がある。大昔の狐人族によって、村に張られた結界が掟を守らせるようにしているの。
村の結界は、村を隠す目的以外にも掟を狐人族の魂魄に刻むための役割を果たしているのよ。多分だけど魂魄干渉魔法が使われているのね。それのおかげで、魔力の繋がりみたいのができて私たち狐人族は村へ迷うことなく帰ることができるのよ。
狐人族は長命種で最強クラスの種族だから、こういう制限掛けないとヤバいからね。主に私とかココとか神子様みたいな化物は単騎で一国とタメ張れるからね。冗談じゃなくてホントよ?
閑話休題。
とりあえず、私とココは助けた三人に顔を向ける。
そこには男性一人、女性一人、性別不詳が一人いた。
一人は茶髪ツンツンヘアーに精悍な顔つきをした男らしい体をしてる男。腰には片手半剣のようなものを帯剣していて、革鎧を装備していて要所要所は鉄鎖で繋いでる感じの防具ね。
もう一人はローブで全体を隠していて男か女か分からないけど、右手に五十センチくらいのロッドを持ってるから多分魔法士ね。
最後の女の人は長い金髪を持っていてそれを三つ編みにして頭の両側でまとめている。幼いながらも大人びた顔立ちで、美少女と十二分に言えるレベルの容姿だった。前を紐締めして腰をほっそりとさせた青いワンピースを着ているわね。コルセかしら?
「大丈夫ですか?」
「けがはなかったの?」
「あぁ、大丈夫だ。すまない助かったよ」
私たちの呼び掛けに剣士の男が答えた。ただ、ずっと気になってたんだけどプルプル震えてるのよね。少し悪寒がするんだけど。
とりあえず全員看破ね。まずは剣士から。
=====================================
レオルド Lv78 25歳 男
種族:人族
冒険者ランクB
生命:793/793
魔力:219/219
物攻:885
物耐:728
魔攻:145
魔耐:98
敏捷:536
魅力:70
運:80
スキル
【片手半剣術】【高速】【身体強化】【限界突破】
適性魔法
なし
称号
【獣人愛者】
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【片手半剣術】・・・・・・片手半剣を使用した戦闘で物理攻撃力と敏捷に上昇補正。片手半剣の扱いも上手くなる。
【高速】・・・・・・使用すると敏捷が二倍になるスキル。任意解除可能で魔力がある限り使用可能。
【獣人愛者】・・・・・・重度の獣人好きに与えられる称号。獣人を愛でる際にステータスが飛躍的に向上する。
悪寒の正体はこれか! 怖いよ! 絶対に近づかないからね!?
ココも鑑定したのか青い顔をして逃げる体勢を整えていた。
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パミエラ Lv81 18歳 女
種族:森人族
冒険者ランクA
生命:1238/1238
魔力:1573/1573
物攻:568
物耐:639
魔攻:1394
魔耐:1265
敏捷:328
魅力:200
運:100
スキル
【魔力操作】【生命感知】【気配遮断】【鑑定遮断】【鑑定察知】【杖術】【身体強化】【強化効率Ⅷ】【豪腕】【豪脚】
適性魔法
【水系統】【風系統】【土系統】【雷系統】【光系統】【精霊召喚魔法】【飛行魔法】
称号
【一騎当千】【竜殺し】【精霊に愛されし者】
=====================================
【生命感知】・・・・・・指定範囲内の生命体を全て感知できるスキル。
【気配遮断】・・・・・・自らの気配を完全に消すスキル。
【鑑定遮断】・・・・・・自らに使われた鑑定を無効化するスキル。ただし、上位スキル看破は遮断できない。常時発動。
【鑑定察知】・・・・・・行使された鑑定を察知するスキル。ただし、感知遮断のスキルを使われた場合は察知できない。完全看破を使われた場合も同様に察知できない。常時発動。
【精霊召喚魔法】・・・・・・森人族固有魔法。自身が最も得意とする系統魔法を司る精霊を召喚できる魔法。残存魔力を全て消費し、
【飛行魔法】・・・・・・森人族固有魔法。自身の思うように空を翔る魔法。使用中は魔力を消費し続ける。
【一騎当千】・・・・・・千以上の敵を単騎で殲滅した時に与えられる称号。殲滅戦の際、全パラメータに上昇補正。
【竜殺し】・・・・・・竜族の魔物を討伐した際に与えられる称号。竜族との戦闘時に全パラメータに上昇補正。
【精霊に愛されし者】・・・・・・精霊召喚に成功し使役できるようになった者に与えられる称号。
強化効率Ⅷ!? お父さんとタメ張れるパラメータでこれはヤバいわね。後は、種族固有魔法の精霊召喚に飛行魔法か。精霊召喚はどうでもいいけど、飛行魔法っていいわね。私だったら【神足通】で同じことができるけど、霊力の消費ハンパないのよねアレ。あまり使う気が起きないわ。
いずれにしてもこれはマズいわね。私は最近取得できた【念話】スキルを使ってココに念話する。【魔力察知】は持ってないから多分バレないと思うけど。
『ココ。聞こえる?』
『聞こえるの』
『ローブの人は鑑定しちゃダメよ?』
『どうしてなの?』
『鑑定察知を持ってるわ。鑑定されたことが分かった瞬間に何をされるか分からない以上、助けた相手だとしても注意した方がいいわ。だからダメ』
『了解なの』
ココに注意を促す。その間も自然な感じを保ちつつ、エルフの女性を観察する。おそらくは気付いてない。
とりあえず、最後の一人も一応看破ね。
=====================================
ミラ=クディト=メリシュラ Lv13 16歳 女
種族:人族
商業ギルド三等級
生命:183/183
魔力:218/218
物攻:98
物耐:84
魔攻:101
魔耐:105
敏捷:40
魅力:300
運:200
スキル
【嘘感知】【感情可視化】【アイテムボックス∞】【錬金術】
適性魔法
【光系統】【再生魔法】
称号
【天才商人】【癒しの聖女】【ポーション作成者】
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【嘘感知】・・・・・・相手の付いた嘘を感じ取れるスキル。常時発動。
【感情可視化】・・・・・・対象の感情を色として視ることができるスキル。
【アイテムボックス∞】・・・・・・異空間に物資を保存できるスキル。容量は表示されている数字が入れられる種類・重量(kg)・数量を示す。∞は制限なしの無限要領。
【再生魔法】・・・・・・生命体の欠損部位、物質の破損部分等を再生できる魔法。
【天才商人】・・・・・・商人としての才能がある者に与えられる称号。
【癒しの聖女】・・・・・・ありとあらゆる人に対し慈悲の心で治癒を施した者に与えられる称号。
【ポーション作成者】・・・・・・錬金術にてポーションの作成に成功した者に与えられる称号。
商人チートじゃね? だってアイテムボックス無限要領だよ? ウソも感じ取れる上に感情そのものを可視化できるのよ? もう商人としては最高でしょ。
ただ、ファミリーネームとミドルネームがあるから大商家か貴族ね。あまり深く関わったらメンドーなことになりそうだし、ノータッチでいきましょうか。
「危ない所を助けていただきありがとうございました」
「いえいえ、狐人族としてやらないといけないことをやっただけなので」
商人のミラさんが一歩進み出て私たちにお礼を言ってくる。それに私は大したことはしてないって感じで返す。いや、やったのは主にココだしね。ま、当の本人は獣人愛者の警戒で忙しいみたいだから私が答える。
「私はメリシュラ商会で商会主をしているミラ=クディト=メリシュラと申します」
「私はリリよ。そっちのさっき魔法で盗賊を氷漬けにした子はココ」
私は簡単な自己紹介だけをする。狐人族は秘匿情報が結構あるからあんまり情報を与えるようなことは言えない。だから、名前しか名乗らない。
「俺はレオルドだ。で、そっちのローブがパミエラ」
「よろしくです」
レオルドさんが自分の名前とパミエラさんの名前を言う。知ってましたけどね。
「よろしくお願いします。レオルドさん、パミエラさん」
「よろしくなの・・・」
警戒するココ。尻尾が立ち上がって警戒度はMAX。ていうか若干殺気出てない?
「リリさん、ココさん。改めて、助けていただいて本当にありがとうございました」
「いいって言ってるのに」
「そうですね。何度も言ってしまうと感謝の価値が下がってしまいますね」
別にそうは思わないけどね。
「それにしても、この道は今まで盗賊なんて出なかったのに。というより何で出なかったんでしょうね?」
「それは狐人族がいるからよ」
「?」
あ、知らない人もいるのね。パミエラさんは見えないからいいとして、ケモナーさんは知っているのか苦笑いだった。
「とにかく。もうそう居ないとは思うけど盗賊には気を付けて、進行方向的には王都でしょ?」
「はい。その通りです。エランデ公国で行商をした帰りだったんです」
「へぇ。商人なんだ。珍しいわね若い女性の商会主なんて」
「よく言われます。ですが、業績は国内一ですのでこれでもかなりやるんですよ私?」
そう言って力こぶを作るミラさん。元気でよろしい。ちなみに、エランデ公国はミルフィス連合諸国の領地内にある小国の一つね。アスティア王国から一番近い国だから、国境越えして行商する人はそこで商品を卸すのよ。
「あ、忘れていました。助けてもらったお礼をしていませんでしたね」
「それならさっき感謝の言葉を貰ったけど?」
「それとは別のお礼です。命を救ってもらって感謝の言葉だけというのはおかしいです」
私たち的には大した苦労をしてないからどうでもよかったんだけどね。
「今はお金かエランデ公国から譲っていただいた物しかないのですが」
もうどうしてもお礼の品を渡さないと気が済まないみたいで何を渡そうか迷っている。こういう時のこういう状態の人って頑なで意見なんて曲げる気がないから諦めることにした。
「どうせ貰えるなら、お金より物ね」
「へ? そちらでよろしいのですか?」
「えぇ。というかむしろ、お金があっても使い道がないのよ」
「そうなんですか?」
「そうなの。狐人の村じゃお金のやり取りが必要なことが何一つないから持つだけ無駄なのよ」
「知りませんでした」
まあ知らない人がいても仕方ないことだと思う。自分が知らない生活圏の人がどんな感じで日々を送っているかなんて想像してもしきれないものだからね。国には国の、都市には都市の、村には村のやり方ってものがあって、それは実際に生活してみないと分からないのよ。当たり前だけどね。
狐人族の村にお金が必要ないのは、狩った魔物の肉や農業によって日々の生活を確保できてるから。生活以外の物資だってマーズ大森林を探索しまくれば腐るほど手に入る。溢れそうになったらそれは王都まで行商に出て売っちゃうけど、売ったところで儲けたお金は村に持ち帰っても倉庫の肥やしになるだけなのよね。村の片隅にある倉庫にはそれこそとんでもない程の硬貨が蓄えてある。正直言って邪魔なだけ。だから、宝石とか売ろうとはしない。無駄金が必要以上に増えるし。もう文字通り宝の持ち腐れ。
「ま、珍しい物でもあるなら頂戴」
「分かりました。少々お待ちください。”アイテムボックス”」
ミラさんがそう唱えると半透明のウィンドウのようなものが空中に現れる。詳細は見えないけど、あれがアイテムボックスなんでしょうね。
何度か指で操作した後、ウィンドウを消す。その直後に左手に一つの水晶玉のようなものが出現。まるでゲームのアイテム取り出しね。
「こちらがエランデ公国から譲っていただいた物です」
「何なのそれは?」
「分かりません。エランデ公国に近い遺跡から出土したようなのですが、鑑定しても何が何だかわからず、色々と試したそうなんですが何も起きなかったために不用品になり、譲っていただいたのです」
体のいい不用品処理じゃない。
「貰っちゃったのね?」
「はい。室内の調度品として使えるのではと思いまして」
透き通った綺麗な水晶玉。しかも、形も歪みのない綺麗な球体。確かにお金持ちのインテリアとしてはいい物かも。
「リリ。それ変なの」
「どうしたのココ?」
「私の上級鑑定でも何にも見えないの」
「マジ?」
ココの上級鑑定で見えないとかどんな代物なのよ。私も看破すると――――
「何ですってぇえええええええええええええええっ!!?」
「ど、どうされたんですか!?」
私のいきなりの絶叫にその場にいた全員が驚いて、そして引く。とりあえず、これを貰うためにミラさんには何でもない風を装わないと。
「何でもないわ」
「今の叫び声で何でもないはムリがありますよ!?」
「じゃあ、乙女の秘密よ」
「じゃあって何ですか! じゃあって!」
「驚かせて悪かったわよ。とにかく、それ貰っていいの?」
「はぁ。構いませんが」
多分、嘘感知に引っかかってるわね。でも、私の適当なごまかしに納得こそいってないものの。上げるためにアイテムボックスから取り出したわけで、ミラさんは水晶玉を渡してくれた。
「それでは、私はもう行きますね」
「えぇ。帰り道は気をつけなさいよ」
「はい。お気遣いありがとうございます。いずれあなた方が王都に来ることがあれば、私のメリシュラ商会へぜひいらしてください。出来る限りのことはさせていただきますので」
「えぇ、機会があればね」
「それでは」
ミラさんは深々と頭を下げた後、ケモナーさんとパミエラさんと共に馬車に乗る。
馬車が出発し徐々にその姿が小さくなっていく。そして、完全に見えなくなった辺りで
「それで、その水晶玉にはどんな秘密があるの?」
ココがそう聞いてきた。
「ま、ココには隠せないわね。隠すつもりもないけど」
「そう言ってくれるのはとても嬉しいの。それで、その水晶玉は何なの?」
「ココの上級鑑定じゃ見えなかったでしょ?」
「見えなかったの」
「私が看破してようやく見える代物だったってことね」
「もったいぶらずに早く教えて欲しいの」
聞いたら驚くわね確実に。なんせ――――
「これ、オーパーツなのよ」
数秒後。
「えぇえええええええええええええええええっ!!?」
ココの絶叫が響き渡る。
=====================================
天玉 ランクオーバー
何でも一つ願いを叶えられるオーパーツ。
叶えられる願いに制限はなく、自分の望むものを手に入れることができる。感情が極限まで高まった時にこのオーパーツが反応し、願いを叶えられる。願いを叶えたら自壊する。
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途中に無理やりな部分があるとは思いますが、作者の力量不足です。すみません<m(_ _)m>
努力してやっていこうと思うので、これからもよろしくお願いします<(_ _)>