逆じゃん!
私とココは再び鉱石倉庫の前にやってきました。
「今日は何らかの成果を上げたいわね」
「とりあえず、火系統と雷系統は使用禁止なの」
「はい・・・・・・」
使うつもりはなかったけど、釘は思いっきり刺されてしまった。
倉庫に入ってからしばらく。
「スムーズにできるようにはなったわね」
「でも、肝心の完成はまだ遠いの」
おそらく昼前くらい(倉庫の中だから時間が分かんない)ね。その頃には、錬成→錬金の流れをスマートにできるようになったわね。でも、成果はなし。技術が上達したのは嬉しいけど。成功なしはやっぱりね。
「何がいけないの?」
「私にも分かんない・・・・・・」
「もう今日は止めておくの。他の鍛練全然してないの」
「そうしましょうか」
ココの言う通りに今日の錬金術の試行錯誤はここまでにして、明日また頑張りましょうか。とりあえず、明日のためにいくつか武器を作っておいた方がいいわね。
鉄鉱石を手に取る。何の気なしに錬金術を実行した。
「え?」
「どうしたの?」
結果は、成功。上手い具合に鉄鉱石に魔法が付与できた。
「いや、その・・・・・・」
「?」
とにかく錬成を実行。形はとにかく剣ね。一番作りやすかった。
「いきなり錬成してどうしたの?」
「ちょっと実験」
試運転。魔力を流す。うん、魔力のつながりはあるわね。
「『炎纏』」
「やめるの! 半月前のが繰り返されるの!」
「多分、大丈夫」
炎は滑らかに刀身を滑り、見事に刀身が炎を纏う。・・・十秒・・・・・・三十秒・・・・・・・・・一分。
刀身は炎を纏ったままうんともすんとも言わない。つながりを確認する。うん。しっかりつながってるわね。
「解除」
まあ、魔力操作があるから言う必要はないけど、何となくそう言って魔力のラインを切る。刀身を覆っていた炎はすぐに消える。
「ふぇ?」
「ふぅ・・・・・・」
ココが驚いてる中、私はその場で両手両膝を床について、あからさまにガッカリする。
「逆じゃん! 逆にしたら簡単じゃん!!」
「・・・・・・」
いやいやいや、落ち着きなさい私。誰も何も悪くないわ。悪いのは固定観念に捕らわれて別の可能性を考えなかった私よ。
「リリ。今の・・・・・・」
「鉱石の方に魔法付与してから錬成したの」
「そんなやり方聞いたことないの」
「多分、これは一人で二つのスキルを持ってないと気付けないんでしょうね。ほとんどの場合は、錬成か錬金しかスキルを持ってない。だから、完成系に魔法を付与するっていう認識が強かったのよ」
「つまり、前提条件そのものが間違って世に広まっちゃったってことなの?」
「そういうこと。特に家に使われるようなアーティファクトがそうやって製作されているのも勘違いに拍車を掛けちゃったんでしょうね。若しくは、技術を残した先人がそうなるように仕組んだか」
あれ? 後者の方が説得力ない?
とりあえず、それからの私は鉱石に別の魔法を付与して錬成するを繰り返したわ。
結果は、一系統だけならば付与することに成功。ただし、複数になった途端あっという間に自壊して失敗。
「ま、複数系統付与に関しては今後の試行錯誤で何とかしていくだけね」
「単一系統を付与できるだけでも凄いの。普通はそれすらできないの」
「そうね。これについては結構自慢できるわね」
「後は、複数付与できるようになるまで考えるの」
「えぇ、もちろん」
アーティファクトを作ることには成功。ただし、複数系統の付与ができるようになるには時間がかかりそうね。成果としては、成功だけど失敗という感じね。
その後は、日が暮れるまで二人で鍛練をして帰宅する。
帰宅すると、食事はもう準備されてた。
「ただいま」
「おかえり、リリ」
「ディアマイドウタァァァァァァァァァァッ!」
お父さんはいつものほっぺすりすりで撃退。そのまま洗面所に行って手洗いうがい。これ大事。
食事部屋に戻って食卓に着いてから手を合わせる。お父さんはニヤケ顔で気絶中。
「「大自然の恵みに感謝を」」
ちなみに、これは日本で言う「いただきます」ね。こっちの世界だとそれが食事前の習慣みたいね。私はこういうの好きです。向こうでも「いただきます」はちゃんと言ってたわ。お父さんはニヤケ顔で気絶中。
「そうだ。お母さん」
「どうしたの?」
「今日アーティファクト作りに成功した」
食器が落ちる音がする。お父さんはニヤケ顔で(ry
「お母さん。行儀が悪いよ。食べ物は粗末にしちゃダメ」
「リリ。あなた今何て言ったの?」
「食べ物は粗末にしちゃダメ」
「その前」
「行儀が悪いよ」
「もっと前」
「大自然の恵みに感謝を」
「ワザと言ってるわね?」
「冗談冗談。アーティファクト作りに成功したってところでしょ?」
「作れたの?」
「うん」
絶句してるお母さん。まあ、いきなりアーティファクト作れるようになったとか言われても混乱するだけよね。
大体予想通りの反応だったから私は気にせず食事を続行。お父さんは(ry
「すっっっっっっっっっっっごいじゃない!!」
「わぁっ。ビックリしたぁっ!」
唐突に大声出すのは禁止。ビックリして心臓止まっちゃう。お父(ry
「あぁ、やっぱりリリは天才だったんだわ! あなたもそう思うわよね!?」
「当然だ! リリは俺たちの自慢の娘だからな!!」
いつの間に復活したの? 数秒前まで床に倒れてなかった?
この後は、お母さんにもお父さんにも何やかんや聞かれて疲れながら眠りについた。
錬成と錬金に関しては一応ここまでということで、次回は話を進めます。
これからもよろしくお願いします<(_ _)>