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白狐のミソロジー  作者: ヴァイス
末裔の白狐
12/43

大失敗ね

色々とツッコミたいと言われそうですね・・・・・・

~~~~~半月前


「今日は錬成術と錬金術を試してみようと思うの」


 走り込み、筋トレ、魔法の練習、とトレーニングを終えた直後に私はそう言う。普段はここから私なら刀術の、ココなら杖術の鍛練をするんだけど、もう我慢できなかった。


「ついにアーティファクト作成に挑戦するの」

「そうね。できればいいけど、時間はかかりそうね」


 アーティファクト作成は難易度の高い技術みたい。『錬成と錬金』っていう本に書いてあった。自分のスキルについて知ろうと思ったことを知るために読んだのよ。

 生活で使われるタイプのアーティファクトなら、先人の知恵と努力もあって簡単に作成できるようにはなっているみたいだけど。魔法装備タイプのアーティファクトは知識の欠片すら残されてない。まあ、アーティファクトなんて個人の技術だけで作られるものだから文句はないけどね。私も作ったところで誰かに教えようとかは思わないし。むしろ、生活に必要な知識を残してくれただけありがたいけどね。


 そして一時間後。


 やってまいりました。狐人族の宝物庫へ。


 半分冗談ね。この狐人族の村にはいくつか倉庫があって、そのうちの一つが私にとっての宝物庫っていうだけの話。

 どういうことかっていうと。その倉庫は、色々な鉱石を保存してある場所なのよ。種族柄、狐人族の日々の食料は狩りで捕えた魔物と農作物。それ以外の物資は大して必要としていないのよね。つまり、鉱石を必要としてないし、使うこともない。たまに狐人族の人が行商で鉱石やらを王都に売りに行くんだけど、それでも行商よりも探索の頻度が多く、結果的には鉱石が溜まる一方だったのよ。


 それを私が使おうってわけ。言っとくけど、村長には許可もらってるからね?


「よいよい。あんなガラクタいくらでもくれてやる」


 と言われたので、無断使用では断じてないわ。例え、村長が私のスキルを知らないのだとしてもね! ま、気付いてはいると思うけどね。


 倉庫の扉を開くと、中には鉱石の山がある。


「ほえ~。鉱石いっぱいなの」

「マーズ大森林には採掘地点がいくつもあるからね。毎日のようにそこから採ってこいば溜まってくわよ」

「ここにある鉱石でアーティファクトを作るの?」

「えぇ。まあ、そう簡単には行かないと思うけどね」


 そんな会話をしながら家から持ってきたシートを敷いてココと二人で座る。


「まずは何をするの?」

「とりあえず錬成の方から練習ね。アーティファクト云々より先に武器が作れないと意味がないわ」

「確かにそうなの」


 手近な鉱石を手に取る。まるで、磁硫鉄鉱みたいな見た目ね。そして看破。


=====================================

鉄鉱石 ランク2 硬度3 魔力浸透率20%

ありとあらゆる鉄製品に加工することができる鉱石。

現在最も多く使用される鉱石であり採掘量も多い。武器の素材として使用すると強度と切れ味がそれなりに上がる。ただし、上位の魔物になると皮膚が硬く弾かれるか、最悪折れてしまう。

=====================================


 ランクは鉱石の価値を示していて、硬度は文字通り硬さの尺度。数字が大きければ大きいほど硬い鉱物になってるってこと。魔力浸透率は、魔力がどれだけ流れるかのパーセンテージ。仮に流した魔力が1、魔力浸透率が20%とすると、1の魔力で0.2の魔力を流したのと同じ状態になる。ちなみに、全く同じ鉱石でも浸透率に若干の違いが生じることもあるみたいね。


「鉄鉱石って魔力浸透率が悪いの」

「そうね。これだとアーティファクト作りには向かないかも」

「他はどうなの?」


 鉄鉱石を鉱石の山に戻して別の鉱石を手に取る。これは真鍮色で光沢もある立方体の鉱石。


「ちょっと綺麗なの」

「そうね。見た目金ね」

「金なの!?」

「いや本物だったらこんなところに置いてないから」

「・・・・・・言われてみればそうなの」


 金と間違えるかもしれない見た目。確か元の世界にも似たようなのがあったわね。えっと、パイライトだったかしら? 和名は黄鉄鉱よね。看破。


=====================================

パイライト鉱石 ランク3 硬度5 魔力浸透率150%

鉄鉱石が何らかの理由で変質した鉱石。

硬度はそれなりだが、魔力浸透率は優れている。現状使われているアーティファクト作成の素材として重宝される。淡黄色の色調から金と間違われることがある。別名「愚者の黄金」。

=====================================


「そのままじゃない!」

「ふぇっ!? 何の話なの!?」

「あぁごめん。取り乱したわ」

「大丈夫なの?」

「大丈夫だ、問題ない」

「・・・・・・」


 ココ、ジト目は止めて。Mではないから気持ちよくはないのよ。


「これ鉄鉱石なの?」

「分類的にはね。鉄鉱石の変質したものって書いてるし」

「変質した何らかの理由って言うのが気になるの」


 多分、鉄鉱石ができる過程で硫黄と混ざったんじゃない? 硫黄っていう原子がこの世界にあるかは知らないけどね。

 元の世界では工業的価値が結構低いものだったけど、こっちだと武器の素材として重宝されるのね。やっぱり異世界だし似たような物質でも用途が全然違うとか当たり前にありそうね。


「これならアーティファクトに使いやすいの」

「そうね。重宝されるのも納得できる性質ね」


 魔法装備型のアーティファクトにするなら加工しやすい鉱石ね。硬度も十分。使い手次第ではいいとこまで行くんじゃないかしら?


「次はその真っ黒い鉱石を見てみるの」

「ん? 真っ黒い鉱石?」


 ココが指さした先を見ると、確かに真っ黒い鉱石があった。いっそ漆黒と言った方がいいわね。

 手に取ってみる。私の手(小学校低学年くらいの大きさ)でも持てるサイズ。けど、見た目より重いわね。勿論看破する。


「うぇいっ!?」

「と、とんでもない鉱石だったの」


 変な声出ちゃった。いや、でも仕方ないわよ。ココの言う通りとんでもない鉱石なんだから。


=====================================

アーヴァライト鉱石 ランク8 硬度9 魔力浸透率700%

マーズ大森林中心部の地下鉱床から極少量採掘できる鉱石。

世界でトップクラスの硬度を誇りながらも魔力浸透率も高い。アーティファクトの素材としてはかなり優秀である。ただし、この資源は狐人族の独占資源のため、市場にはまず出回らない。

=====================================


 こんなとんでも鉱石を狐人族は独占してるらしい。今度神子様にこれについて聞いてみよっと。


「けど、これでアーティファクト作れば結構なものができるわよ?」

「そうなの。しかも、よく見たらそこら中に沢山あるの」


 確かに、鉱石の山に目を凝らせば色んなところに漆黒の塊が見える。独占資源って凄いわね。あまり大っぴらには使わない方がいいかな?


「アーヴァライトでするの?」

「さすがに初っ端からこんな貴重鉱石を使う気は起きないわね。まずは、鉄鉱石とかで武器の錬成から始めて、慣れてきたら錬金での魔法付与に挑戦って感じかな」

「そうした方が良さげなの。私も応援するの」

「ありがとう」


 というわけで、早速錬成開始。


 十分後。


「なんか、もうできちゃったわ」

「できるようになるの早過ぎなの」


 ココも呆れ気味。それはそうよね。慣れるまでそれなりに時間がかかると思ったら、たった十分でできるようになるとか。錬成したのは八回程度。もう様になってる。


「拍子抜けしちゃったわね」

「もう錬金術にいくの」

「そうね。できるだけ早くアーティファクトを作れるようにはなりたいしね」


 じゃあ錬金術やってみますか。


 最初に作った歪な形の剣を手に取って、スキル【錬金術】を発動する。付与する魔法は火系統。刀身に魔力を浸透させ付与。だけど――――


「失敗なの」


 派手な破砕音とともに剣が砕け散る。


「魔力込めすぎたかな?」


 その呟きと共にまた一つ手に取る。


「次はもう少し抑えめで」

「頑張るの」


 そして、二度目の錬金。―――――これも失敗。


「やっぱり砕けちゃったの」

「魔力制御が甘いかな?」

「なら、逆はどうなの?」

「じゃあ、次は思いっきりやってみましょうか。失敗する未来しか見えないけど」


 三度目、やっぱり砕けた。ていうか、魔法付与する前段階で失敗してる。

 膨大な魔力を刀身に浸透させたら、その直後に砕けちゃったのよ。


「やっぱり過剰魔力は失敗要因の一つね」

「魔力制御しきれないと難しそうなの」


 まあ、失敗なんていくらでもするよ。私もそれを受け入れる。元の世界では素敵な言葉があるじゃない。失敗は成功の母ってね。


 そうやって試行錯誤を重ねて五回。やれることはやりきったわね。まあ、全部失敗だけど。


「何が悪いのかしら?」

「素材が悪かったということはないの?」

「そんなことはないと思うけど。実際、やった中では惜しいとこまでいったものもあったし」

「じゃあ、それ以外の要因なの?」

「そう。惜しいとこまでいったものと明らかに失敗なものの違い。これが、成功のカギだと思うのよね」

「確か。惜しい所までいったのは投擲用の槍だったの」

「あぁ、そうだったわね。魔法付与が成功したと思ったらちょっとしたら自壊したやつね」


 真っ直ぐな鉄棒の先端を尖らせただけのお粗末なもの。まあ、見た目的にはちょっと綺麗だったかも・・・・・・綺麗?


「そういえば、失敗したもののほとんどは錬成段階でミスした粗悪品だったわよね?」

「言われてみればそうだったの。最初の四、五個は完全に壊れちゃったの」

「てことは」


 思い立ったが吉日。鉄鉱石を鉱石の山から取り出して錬成。結構よくできた鉄剣ね。普通の剣だけど、うまくできてはいるわ。剣としてなら割と使えるものになってる。これに錬金術を発動。


 魔力の浸透率も高い。そして、魔法付与。――――成功!


「やった! 付与できたわ!」

「やったの!」

「これで、『炎纏』!」


 鉄の刀身が炎を纏っていって、最終的には上手い具合に炎を纏った刀身になる。


「よし! ・・・・・・あれ?」


 そこまでは良かったわ。けど、その後が大惨事だった。火が燃え広がった。とかではなく、むしろそれより悪質というか。


 まあ、あれよ。刀身が融けだしたのよね。


「リリ! 溶けてるの!」

「溶けてるわね。見事に」


 要はあの炎、千五百度超えてるってことよね。


「触ったら火傷じゃ済まないわね」

「冷静に見てる場合じゃないの! 早く解除するの!!」

「ってそうだった! ・・・・・・あれ?」


 そこで気づいたのよ。刀身に流した魔力が戻ってこないことに。


「魔力のラインが繋がってない」

「え・・・・・・」


 魔力のラインが使用者とつながっていない。その場合、込めた魔力は刀身に籠ったままで魔力が尽きるまでは効果が持続する。


「解除できない」

「それって・・・・・・」


 そして、私は神狐の末裔。ここまで条件揃えば簡単な話ね。


「マズいかも・・・・・・」

「・・・・・・」


 加減なしに込められた莫大な魔力。それは刀身に炎を纏わせるために際限なく使われて、しかもその魔力の質がいいから炎の温度がべらぼうに上がっていく。今じゃ、纏っている炎は青白い炎と化している。


 率直に言うと、膨大な魔力に質の良さが掛け合わさってあっという間に鉄の融解点に到達してしまったと。


 ただ、それだけならよかったのよ。


 融解した鉄(炎を纏っているおまけ付き)は床に落ちる。ここは木でできた倉庫です。お分かりですね?


 そうです。火災発生です。


 何が要因かわからないけど、一気に燃え広がり始めた。


「やばいやばいやばい!」

「”落水”!」


 ココが水魔法を使って消火する。一瞬で鎮火させた上、倉庫にひび割れなどもない。


「ココ。アンタやっぱり魔法の扱い上手いわね」

「褒められるのは嬉しいけど、そんなこと言ってる場合じゃないの!」

「申し訳ない」


 これまでにないくらい真剣に謝った。だって、下手したら死んでたところをココに助けてもらったんだから。しかも、大惨事一歩手前だったし。


「今日はもうここまでにしておくの」

「そうね。今日のアーティファクト作成は大失敗ね」

「なの」


 そして、ココの言に従って今日の錬成と錬金の鍛練は終了した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「思い出したら、ちょっと気分に影が・・・・・・」

「あの時は、大惨事にならなくてよかったの」

「えぇ全くね」


 下手したら森を巻き込んだ惨事になったかもだし。

 最初の錬成と錬金の鍛練が終わった後日、神子様に呼び出しを受けて大目玉をくらいました。すっごい痛かったです。これからは、最新の注意を払ったうえでやるようにと言い含められました。


「思い出したらやりたくなってきたわ」

「前みたいなことにならなければ私はどっちでもいいの」

「じゃあ、ちょっとやってみましょうか」

「なら倉庫に行くの」

「えぇ」


 そうして私とココは倉庫に足を向ける。

ありがとうございました。

これからもよろしくお願いします<(_ _)>

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