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白狐のミソロジー  作者: ヴァイス
末裔の白狐
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異世界転生かぁ。

初投稿です。


何卒よろしくお願い申し上げます。

 あ、これ死んだわ。


 自分に向かって突っ込んでくるトラックを見ながらそんなことを思う私。

 いや、誰でも思うって。スピード的に緊急ブレーキ踏んでも絶対止まんないし、何より運転手寝てるし。居眠り運転とかやめてくれる?


 トラックを見ながら、今までのことを思い出す。


 子供の頃、月に一回くらいの頻度で両親に暴力を振るわれた。冗談抜きで死にかけた。けど、それ以外は基本的に優しく接してくれたわね。

 今思ったら、両親を無条件で信じさせるためのものだったのかもね。


 小学生の頃、暴力の頻度が増えた。それまで月一だったのが週一になった。顔や腕、脚とか人の目に留まりやすそうな部位は避けて暴力を振るわれた。

 ぶっちゃけその部分こそ止めて欲しかったわね。内臓へのダメージがハンパないのよ。


 中学生の頃、暴力の頻度は変わらない。そのかわりに暴力が苛烈になったわね。痛かったぁ・・・・・・。

 ここまでされても絶望しなかったのは、多分だけど慣れと学校生活でしょうね。

 親友もいたし、クラスメイトともかなり仲が良かったから。それがかなり心の支えになったんだって思う。普通逆でしょ・・・・・・。


 高校生になって半年。私は両親から離れて一人暮らしをしていた。あの両親がよく一人暮らしを許してくれたものね。あれ? 一番充実してたはずの高校の思い出短くない?


 ここまで思い出して感じたこと。


 よく歪まずに生きてこれたわね。褒めて欲しいくらいよ。


 時間切れね。もう目の前までトラックが迫ってきていた。まず撥ねられるのは確実。

 痛いかな? 痛いよね。

 己が死は免れない。


 そして――――――――


 すさまじい音とともに、体を衝撃と痛みが襲う。その直後に浮遊感。周りの人の叫び声も聞こえた気がしなくもない。

 すぐに地面に叩き付けられる感覚がして、ごろごろと転がっていく。


 超痛いんですけど。死にそう。あ、死ぬか。


 凄まじい激痛が私を襲う。


 うっすらと目を開けると、これ以上ないほどに最悪の光景。


 横向きのトラックが倒れてくる。そう、トラックの荷台が。

 目、開けなきゃよかった。

 そのままトラックの下敷きになり、私は十五年と数か月の人生に幕を下ろす。


 おかしい。そう思ったのは、一分くらい経ったころ。


 何がおかしいって、おかしいと思っているのがおかしい。

 つまり、意識がまだある。普通こういうのって意識が無くなるものじゃないの? 違うの?

 死んだのとか初めてだからよく分からない。いや分かりたくもないし、分かってたまるかって話なんだけど。


 心地よくはあった。

 トラックに撥ねられた時のとは別の浮遊感が私を包んでいた。


 そして、何かに引き寄せられるかのように意識が覚醒していく。


 目を開けると、綺麗な女性がいた。それはもう綺麗な女性が。

 金色の髪に、マリンブルーの瞳。大人っぽさの中にあどけなさがある顔立ち。美人というより美少女という表現の方が結構しっくりくる。

 ただ、違和感がある。


 分かってる。分かっているのよ。違和感の正体は。正体と言うほどのことじゃないけどね。


 ぶっちゃけちゃうと、頭の上に狐耳。女性の頭に狐の耳が生えていた。もうビックリよ。


 その女性が私の顔を覗き込んで、口を開く。


「――――・・・・――――・・・・」


 何言ってるか全然分かんない...。


「―――・・・―――・・・?」


 分かんないって。だから聞いてみることにした。


「あー、うあうー。うゅ?」


 ほとんど意味をなさないうめき声のようなものが私の口から出た。


 そして、目の前の綺麗な女性に抱き上げられる。そこで自分の体が見えた。


 赤ちゃんだった。


 手のひらも足も小っちゃくて、とても可愛い体だった。親戚の子供を預かったときに目にした赤ちゃんの体と同じでした。ラブリーベイビー。


 そこで私は確信する。


 私は転生というヤツをしたのだろうと。


 確か私が読んでいた小説にそういう感じの話があったと思う。

 そして、目の前にいるのは狐耳の女性。まず、私が暮らしていた世界には絶対にいないであろう人種。


 異世界転生かぁ。


 まさか小説とかで読んだようなことが自分の身に起こるとは思いもしなかった。

 いやだって、普通あり得ないじゃない? あれってフィクションなのよ? 注意書きにもそう書いてたのよ? 私自身、楽しく読んでてもあり得ないよねって思って笑ってたのよ?


 自分の身にそれが起こってから混乱の極致。


 まぁそれも長くは続かず、まいっかで済ませるぐらいにはなったけど。


 そうなると、自分の周囲のことが気になって仕方ないけど、おそらく母親であろう女性に抱かれていて満足に動けない。いや、赤ちゃんの体だからどの道よね。


 そこで、扉が思いっきり開けられたような音が鼓膜を揺さぶる。うっさいわね! ここはラブリーなベイビーがいる部屋なんだから、静かにしてくれる?

 そして、私はベッドに下ろされる。


 今度は男性が私を覗き込んできた。

 明るい茶髪に狐耳で、優しそうな目とスッと通った鼻梁。そして、口角の上がった輝かんばかりの笑顔を見ると、かなりの美形。おそらく父親。


 そこで、さらにお姉さんが覗き込んでくる。

 燃えるように赤いロングヘアー&狐耳。そして、なんか和服みたいな衣装を着崩して両肩を露出させていた。まさに妖艶という言葉が似あう美女だった。


 そこで睡魔が襲ってきたので、そのまま夢の世界へ旅立つ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 赤ちゃんが寝てしまった後、赤ちゃんの両親と赤髪の女性が三人で話し合っていた。


「神子様。やはり、ウチの子は」


 父親が神子と呼ばれた女性に話しかける。


「間違いなく末裔。私も初めて見るのう」


 赤ちゃんを見下ろしながらそう言う神子。


 目線の先には白髪白尾の赤ちゃんが規則的な寝息をしていた。


「ウチの子は特別なのでしょうか?」


 興奮気味に聞く母親。


「まあ、そうじゃな。よくぞ生んでくれた。これで私たち狐人族の未来も安泰じゃ」


 神子は母親の言葉を肯定する。それを聞いた母親と父親は泣いて喜んでいた。


 しかし、神子は別のことを考えていた。


 ――――まあ、この者が狐人族の族長を継承するならば、の話じゃが。

 ――――神狐の末裔。どれほどの力を持ち、その力をどう使うのか。楽しみじゃのう。


 この世に生まれた神狐の末裔。その根拠は白毛と四つの白尾。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

不定期投稿になりますが、これからも読んでいただけると嬉しいです。

図々しいとは思いますが、感想などもいただけると作者の励みになります<(_ _)>

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