Ep.6 『静子の願い』
グレートフォースの4人は一斉に変身した。
青剣士ザンが、雪上戦士ハレルが、サンファイタービーチが、剛力人間ブッチャが、今、ゴッズ総司令の前に並び立った。
『我等、絶対無敵の最強チーム!』
4人の決め台詞が始まった。
本部でモニターを見つめている静子は気が気でなかった。ついに姿を現したゴッズ総司令、そして人類の未来を懸けた戦い。今度こそはスムーズに名乗りを終えて欲しい。しかし彼等にそれが出来るだろうか?
しかしここまで来てしまった以上、信じる他ない。
静子は心配そうに画面に見入った。
4人の決め台詞は個人の名乗りに移っていった。はるか離れたカナラズ本部で静子が心配している事などは微塵も知らずに、極めて遠慮がちな4人の最強ヒーロー達は実にスムーズに名乗りを終えた。
というより、一瞬で終えた。
4人は、4人一斉に、同じタイミングで、同時に自分の名前を言い放ったのである。
これはここに到着するまでの間に4人が相談して決めた、最善の解決策であった。順番を決めようとするから迷うのであって、端から順番など無いものだと思ってそれぞれ勝手に名乗ってしまえば問題無い。そう決めていたのである。
玉座の男からすると、4人が同時に喋った為、何を言っているのか全く聞き取れなかった。
「青力ファイ士ザビーブッチャレル!!」
と聞こえた。
この間抜けな名乗り模様を見ていた静子、竹山、長官は、漏れなくズッコケた。
玉座の男は声を上げて笑った。はっはっはっは、と爽やかなくらいの笑い声を上げた。
そのあまりの笑い声が室内を満たしている最中も4人の名乗りは続いていたのである。
しかし相手は既に笑い転げて全く聞いていない。そんな中、決め台詞を続けると言うのは中々に恥ずかしいものだ。
『この4人……即ち世界を救う凄……まじき力。……聞いて忘れる……こと……なかれ……グレート………フォー……ス』
4人は一応玉座の男を指差しておいた。
相手は指差されたことに気が付くと、「え? あ、すまなかった」と笑うのをやめて4人に向き直って立ち上がった。
グレートフォースは咄嗟に構えを取った。
玉座の男は指をパチンと鳴らした。すると、物陰から一人の怪人が飛び出してきた。
「こいつはゴッズ親衛怪人ジャニンだ。まずは君達のお手並み拝見といきたくてね。こいつの相手をしてもらいたい」
玉座の男はそういうと、再び座り直した。
ジャニンはまるでニンジャのような恰好をしており、目は三日月のように尖っており、両腕に刀を構えた。
グレートフォースの4人は互いに目配せして、誰が戦うかと意思疎通を図り始めた。
それをモニター越しに見ていた静子は再び呆れ返った。この期に及んでこいつらは遠慮をしているのか。それどころではない事くらい、彼等ほどの実力者ならわかっているはずなのだ。なのに、チームだという事を律儀に重視するあまり、遠慮してしまっている。
エースといえど、この作戦には不向きだったと言わざるを得ない。
かつてカナラズにいたエースクラスのヒーロー達は皆もっと主体性があり、俺が俺が、と積極性とやる気に溢れていた。もっと好戦的で、自然とリーダー的な存在も決まったものだった。
あの頃の現役戦士くらいのガッツを見せてほしいものだ、と静子は内心で嘆いた。あの頃のエース達は既に引退してしまっており、ほとんどが現在どうしているのか分からない。仮にもしそんな歴戦の勇士達がグレートフォースの事を鍛えてくれていたら、あの4人ももっと競争意識や主体性を持ってくれていたかもしれないな、と静子は反省した。
しかし、今さらそんな事を考えてもどうにもならない。静子は改めてモニターに目を向けて、4人の勝利を信じた。




