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空の囁き  作者: 伊月
1/3

1. 空は人に憧れる

カナーディア公国の東には、フェリシア森林帯と呼ばれる広大な森が広がっている。

湖が点在し、それを繋ぐ川が流れ、その豊かな水源を糧にして、青々と生い茂った深い森は、その向こうにそびえる、大陸で2番目に険しいと言われているマッキー山脈もあって、人が通る事は殆どない。


そんなフェリシアの森と接する、人口1000人にも満たない小さな町・ランフォルの片隅に、その店はあった。


裏手は森に接している、ログハウスと言うより掘っ立て小屋と呼べる家には、大分雑な感じで“よろずご相談承ります”と刻まれた、木の板が掲げられていた。

一見して怪しい、なんの商売なのか分からない店に勇気を出して近づいてみると、木の板の下の方に、“失せ物・探し物、必ず見つけます”と小さく書いてある事に気づくだろう。そして大抵の人々は「なんだ、占いの店か」と踵を返すのだ。

そういうわけで、その店はとても繁盛しているとは言えない経営状況だった。


そんな店に、今日は珍しく客が来ていた。

玄関をくぐると、木の切り株を樹皮を削って加工した、でんと存在感のあるテーブルがあり、若干ガタガタする椅子が2脚添えられている。向かい合わせに置かれたその椅子には、入り口に近い方に恰幅のいいご婦人が、反対側には華奢な少女が座っていた。


少女は明るい茶色の髪を後ろで一つに束ねているが、普通の同じ年頃の少女ならば、結わいた毛束が美しく背中にたれる所を、この少女の場合は手箒のように荒々しく立っている。結べるギリギリの長さに髪を切ってしまっているからだ。“おばあちゃんのお下がり”レベルの時代遅れ感ただようワンピースは、華奢な少女を一層貧相に見せている。

そんなどうしようもない身なりだが、この少女こそが、この店の主・ソラだった。


「ソラちゃん、今日は乗合馬車の回数券を探して欲しくて来たの。大丈夫かしら?」

「えっと・・・乗合馬車の回数券、ですか」


頼りない様子でソラが首をかしげる。

婦人は、若干常識が足りない店主に慣れている為、簡単に説明した。


「こう、手のひらに乗るサイズで、表紙が臙脂色で、15枚の紙が皮ひもでくくってあるのよ。この間買ったばかりなのに、なくしてしまって・・・。絶対家にあるのよ?うちの猫のイタズラに違いないわ」

「そうですか。分かりました。少し、お時間をいただきますね」


ソラは愛想よく微笑んで立ち上がると、奥の寝室に当たる部屋へ移動する。

接客に使う居間は床板を張り替えたが、こちらはこの家を譲り受けた時のままになっていて、床板がところどころ抜けている。

とりあえず姿を隠したかっただけのソラは、寝室には最低限しか入らず、すぐ後ろで扉を閉めた。


それを待っていたように、一羽のヒメモリバトが飛んできた。

ソラが差し出した指先に、ふわりと舞い降りて、ちょこんと止まる。

白みがかった灰色の翼は全体的に地味だが、光の加減で緑や赤に輝く首の後ろの羽がうっとりするほど美しい。その色あいがエメラルドのようなので・・・ソラは本物のエメラルドは見たことがなかったが・・・この鳩を“ラル”と呼んでいる。真っ黒でつぶらな瞳と、くちばしの付け根の小さな白い部分が、とても可愛いと思うのだが、あいにく男の子であるこの鳩の前で“可愛い”は禁句だ。


『またミランダ婆さんの仕事を請けるのか?ほぼほぼタダ働きだぜ?』


鳩の声なき声(・・・・)が届くと、ソラは『そんな事言わないの。めったにない大事なお客様なんだから』と、無言で(・・・)返す。


『で?さっきの話しで探し物は分かる?どれくらい掛かるの?』

『回数券なら知ってるぜ?何度か見かけたことがあるからな。うーん・・・4分くれ。どうせ今回もあのやんちゃな孫の仕業なんだろ?濡れ衣着せられるチャーリーの立場になってみろって言うんだよな。チャーリーに聞いてくる。多分、一発だ』


無音の会話はすぐに終了して、ラルが飛んでいく。

その優美な背中を見送って、ソラはミランダの居る居間へ戻った。


「今探してます。4、5分掛かりますが、お待ちいただけますか?」

「わかったわ」

鷹揚に頷いたミランダは、ぎしぎしと椅子をきしませながら、背もたれに寄りかかる。

ソラはちょっとだけ、椅子が壊れたらどうしようと心配したが、ミランダは気にせず肩掛けカバンから小銭入れを取り出した。

「御代は乗車券分でいいかしら」

そう言って3ルドーをテーブルに置く。

ソラは頷いて、代金を受け取った。

「いつもありがとうございます」

「いいのよ。それにしても、あなたの接客は、相変わらずお茶も出てこないのね」

若干嫌味がかった物言いだったが、「ごめんなさい。ここのキッチン、使えないので」とソラは素直に謝った。



その後も、延々とソラの言葉遣いなどにダメだしをするミランダの話しを聞きながら待っていると、ふいに声をかけられたような気がして、心の耳を傾ける。ラルだった。

ソラは「失礼します」と断りを入れて再び寝室へ行くと、壊れて外れかかっている掃き出し口の窓枠に、ラルがちょこんと止まっていた。


『訊いてきたぜ?寝室のチェストの下から二段目、右端の方に紫色の洋服に挟まるようにして隠してあるってさ。やっぱりあのクソガキの仕業だってよ』

『ありがとう、ラル。早速ミランダさんに教えてくるわ』

ラルの最後の暴言は聞かなかったことにして、居間に取って返す。

ミランダは占い・・・だと、彼女は思い込んでいる・・・の結果が出たものと察して、既に席を立ち上がっていた。

「寝室のチェストの下から二段目の引き出しに入っている、紫色の洋服の間に挟まっているそうですよ」

「そう。ありがとう。さっそく探してみるわ」

ミランダは挨拶もそこそこに、店を出て行った。



店がしんと静まったのは一瞬で、ミランダが出て行った扉が閉まると、わらわらと動物たちが出てきて、切り株のテーブルの端に並んだ。リスが3匹、モモンガ2匹、それからアライグマ。もちろんヒメモリバトのラルもそこに加わる。


アライグマのコウシャクが、ミランダの置いて行った3ルドーを摘み上げて愚痴る。

『あ~あ、やっぱり言わんこっちゃない。こんなシケた報酬なんか、ただ働きと同じやん』

鳥は瞼がないので“ジト目”が出来ないが、気分的にはそんな感じで、ラルはコウシャクを見やる。

『お前は働いてないんだから愚痴るなよ。それを言いたいのは俺だ』


先週仲間に入ったばかりのモモンガのツキヨとヤミヨの姉妹は、今日初めて人間の貨幣を目の当たりにして、先ほどまで眠っていたとは思えない興奮度で身を乗り出してきた。

『これが“オカネ”ですか~』

『何が買えるんですか?』

ヤミヨの質問に応えたのはコウシャクで、“侯爵コウシャク”の名前そのものに偉そうにふんぞり返ると、小さな両腕を精一杯広げた。

『林檎なら3つ、パンなら2斤、ミルクなら2瓶、ひまわりの種ならこのくらいの袋一つや』

ひまわりの種、と聞いて、モモンガたちの瞳が輝く。

『そ、そんなに買えるんですか!』

『凄いですね!』

喜ぶ二人(?)に、リスのクルミが水をさす。

『・・・それは私たちが小さいからでしょう?ソラたちが食べる量を考えなさいよ。1日分の食料ってところ?』

『“激貧の”家計ならな。パンを3切れと林檎一つにミルク一瓶って所だから、よく食べる大人なら一食分だ』


目の前でワイワイと盛り上がる動物たちを微笑ましく思いながら、ソラは森の奥にある自分の家で今朝焼いてきた、どんぐりのクッキーをテーブルの上に並べた。



この世界に生きる人間たちは、誰が想像できるだろうか。

動物たちが、これほどおしゃべりだと言う事を。


心を通わせる事で会話をする能力を、念話と呼ぶのだと教えてくれたのは、ソラの名付け親であり、2番目の養い親だった、人間の老婆・シャイラだった。

本来、この地に生ける、人間を含んだ全ての動物が使える能力だったが、言葉をもって同属と話す事に長けてしまった人間は、進化の過程で念話の力を失ったのだと言う。

今でも、赤ん坊のうちは使える者が多いのだが、成長するにつれて、いつの間にか使えなくなるのが普通だ。けれどもソラは、その力を失わずに16歳まで成長した。


それはソラが生まれてまもなく森に捨てられ、オオカミによって育てられたことと無関係ではないだろう。

3歳までソラに乳を与え、育ててくれたオオカミたちは、『同属の元で生活するのがお前の為だ』と、ソラを森に接する人の集落へ送り届けてくれた。

そこでシャイラに出会い、8歳まで育ったソラだったが、人の集落に馴染む事が出来なかった。そのままシャイラも亡くなってしまい、結局森へと逃げ込んでしまったのだ。


フェリシア森林帯をマッキー山脈沿いに移動しながら、動物たちと生きてきたソラだったが、そんな生活を1年前に出会った、ヒメモリバトのラルが全て変えた。

彼はソラに言ったのだ。


『全ての生き物は、子孫を残すために生きてるんだぜ?お前、このまま一人でいいのかよ?ツガイを見つけなくて、幸せになれるのか?』


実は13歳のときにも人の住む村へ行こうとして失敗したソラは、自分の中にある人への憧れを指摘されたような気がして、最初はむっとして『森の方が楽しいもん』と反論していたものだが、人の里と近いところで生きるラルの手引きで、なんとか他の人間と接する事ができるようになって来た所だった。



クッキーをつまみながら、3ルドーの価値談義で盛り上がっていた動物たちだったが、ラルが今回の仕事の報酬として松の実をもらうと、話題はミランダの事になった。

アライグマ(コウシャク)がぼやく。

『大体、あの婆さんはセコイからなぁ。15枚の回数券を見つけてやったのに、一枚分の価値の報酬ってありえへんわ。それも、一枚分が3ルドーっていうのは回数券の価値で、普通の乗車券は一枚4ルドーやで?ソラ。他の客には、“その場で回答できる事は5ルドー。もっと長く掛かる相談事は、一日につき5ルドー”っていう決まりがあんのに、どうしてあの婆さんだけ特別なんや?』

ラルが松の実をついばみながら、こくこくと首を振った。

ソラはクッキーを摘んでいた手を止めて、首をかしげた。

「3ルドーで十分だと思ったから、そうしただけなんだけどなぁ。それに、ミランダさんはこのお店を始めた時から頻繁に来てくれてるし。接客の言葉遣いとかは、ミランダさんに教えてもらったようなものなんだよ?」


まともに人と共に生活していたのは3歳から8歳までの5年間だけであるソラは、敬語も丁寧語もすっとばした、子供のような話し方しか出来なかった。そんなソラは実年齢よりも幼く見られがちで、最初の1年は、仕事を探す事さえ難しかったのだ。

食堂の皿洗いや、店の前の掃除など、少しづつ仕事をしてお金を稼ぎ、石鹸や服など、人の中で暮らす最低限の身だしなみを整えるのに必要な物資を買った。


ちなみに、初めてこの町(ランフォル)に出てきたときには、ドキドキした。なにしろ、ソラが持っていた二着の服は、コウシャクがランフォルのどこかから持ってきたもので。『俺、別に盗んでへんからな?』とは言っていたが、信用できるものでもない。だから、「あ!それ私の服!」と言われたらどうしようと、しばらくびくびくしていたものだ。


そうしてお金を稼ぎ、少しづつ人の営みを学び、今でこそこうして店まで構えているソラだが、開店当時は、丁寧語がままならず、接客はぼろぼろだった。たとえば、先ほどの会話なら、「今探してます」と言ったのを、ミランダは「今探して()ます」だと指摘してくれた。コウシャクもラルも、『細かすぎる』『暇な老人のおせっかいだ』と言うが、ソラにとって、そういうことを根気よく指摘してくれる人間は貴重だった。



モモンガたちが紙幣で遊び始めたのを見て、ソラはそれをさりげなく回収し、小さなポーチに収めた。

「ねぇ、あなた達。お昼寝ついででいいから、店番をお願いできないかな?私、チャーリー(ミランダの猫)にあげるクッキーを焼くのに、キャットニップを摘んできたいの」

『いいよ~』と気前良く応える姉妹の顎の下を、感謝を込めて撫でてから、キッチンへ回る。こちらも奥の方の床板は直していないから穴だらけだ。ここに居る動物たちもここから入ってきた。

一番手前のカップボードを開けて、そこに打ち捨てられるようにぽつんとあった、シミだらけのティーコゼーを示す。

「この中なんて、気持ち良さそうじゃない?」

『うん!ここにする!』

本来夜行性で、昼間は木のうろで昼寝をしているのがモモンガだ。

二匹はキルティングの柔らかいティーコゼーの中に寄り添うように納まると、嬉しそうに丸くなった。

微笑ましくて、「おやすみ」と声をかけて、ティーコゼーをカップボードの上の棚に戻す。ちなみにこの扉も、下の隅がねずみにかじられて穴が開いているので、万が一扉が閉まってしまっても、モモンガたちが閉じ込められる事はない。


ソラが表の扉へ手をかけると、ふわりとラルが肩に飛び乗ってきた。

鳥である彼だけは、床下から出るわけにもいかないし、何より人の町ではソラの先輩であり相棒なラルは、いつだってソラと一緒だ。

出て行くソラに『クッキー、俺にもくれよな!』と調子よく声をかけたのはコウシャクだ。

まったく、動物たちはいつだってマイペースだ。

「はいはい。余ったらね!」

呆れた顔をしながらも、その素直さが可笑しくて、ソラの声は明るい。


扉に“ただいま外出中です。御用の方は、1時間後にお越しください”という、少し不思議な文面の札をかけて、店を後にする。

実は日中、木の実や野草などを集めるのに忙しいソラは、殆どこの店に居る事はない。

それでもソラが商売をしていられるのは、ソラと親しい動物たちが、この店を見ていてくれて、客が来ると念話で知らせてくれたり、ソラのところに教えにきてくれたりするからだ。そのおかげで、ソラは食料を森で探す事ができ、少ない収入でもなんとか生きて行けているのだ。


『おい、ソラ。そっちは森じゃないぞ?』

「ん?うん。小麦粉買って行こうと思って。あと、パン屋さんによって、パンくずを分けてもらうわ」

『・・・そっか』

ラルは少しだけ暗いトーンで頷きを返して、空へ舞い上がる。流石に鳩を肩に乗せたまま街へいく事はできないからだ。


少し心配げなラルの様子にはわけがある。

これからソラがいこうとしている小麦屋もパン屋も、あまりソラを歓迎してくれないのだ。他の客の迷惑になるからと言って、裏口を使わせる始末だ。その態度も、ソラを人として対等に扱っていないと言ってもいいくらいで。

ソラ自身は、「え、だって“パンくず分けてください”なんて言ってる時点で、“可哀想な子”って顔されるのはしょうがないと思ってるし」とあっけらかんとしているふりをしているが、傷つかないはずがない。

第一、それでもパン屋へ通っているのは、ラルをはじめ、ソラの周りに居る動物たちが、パンなど人間の食べ物を物珍しがって喜ぶからなのだ。

あの冷たい態度に心折れずに、それでも笑顔で店に通うことが出来るソラは強いと、ラルは思う。


だからラルは、ソラがその店に行くときは、絶対に傍にいると決めている。

裏口のひさしの上に舞い降りて、扉をノックするソラを見下ろした。

パン屋の主人が扉を開けて、そこに居るのがソラだと分かると露骨に嫌そうな顔をした。

「まだ閉店には早いんだがね」

「ごめんなさい。今日は夕方には来れそうになくて。今ある分だけでもお願いします」

無言で店に戻った主人が、形がいびつになったパンや、サンドイッチなどを作ったときのくずの入った袋を、もってきて投げるようにして渡す。

ソラは小銭を差し出したが、主人は受け取らずに黙って扉を閉めた。

相変わらずの無愛想ぶりだった。

コインを持った手を手持ち無沙汰に振って、ラルにちらりと苦笑を向ける。

視線だけで、次へ行こうと促した。


小麦屋は、パン屋からは裏路地を挟んだはす向かいなので、あっと言う間だ。

そこでもやっぱり無愛想な主人から、古い小麦粉を格安で分けてもらうと、小麦とパンが入った紙袋を両手で抱えるようにして裏路地を進む。

ソラはいつも、街を歩くとき、裏路地を通る。自分が街を歩く格好でない事は分かっていた。何度か表通りを通ったときに無言で向けられた好奇の視線がどれほど恐ろしかった事か。


森の中で動物たちに出会うときにも、どうしてこんなところに人間が?という顔をされる。けれども、彼らの多くは、その疑問を念話でぶつけてきた。だからソラも念話で答え、そこから会話が弾み、時には友人になる事もできた。動物たちは良くも悪くも素直だ。だからソラも、素直にぶつかっていける。


けれども人間は・・・ソラには分からない事ばかりだった。

村で人と共に過ごした子供の頃、動物とすぐに親しくなるソラをうらやましいと言って、仲良くしてくれていた女の子が居た。だが友達だと思っていたのはソラだけで、彼女が母親に、「あの子、かわいそうだから一緒にいてあげてるけど、気持ち悪い」と漏らしていたのを聞いたときにはショックだった。人間は、善意と言う仮面をかぶって、簡単に嘘をつく。それが、ソラには怖い。本当はどう思っているのか、念話も通じず、本心を話してくれない彼らとは、どうしても一緒に居られない。・・・そう、思っていたし、その苦手意識は健在だ。


路地の切れ目から、表通りが視界に入って、思わず足を止める。

流行の服を着た、ソラと同じくらいの年頃の女の子が、サラサラの長い髪を風になびかせながら、颯爽と歩く。隣に居る友人らしい女の子と、楽しそうに笑いながら、お菓子屋へ入っていった。パステルカラーの可愛らしいお菓子屋の店内は、そんな女の子であふれていて、皆楽しそうにしていた。

丁度ソラが立ち止まったのはソープなどを売っている雑貨屋の裏手で、そこから漂ってくる上品でいい香りもあいまって、表通りの様子が、ソラの手には届かない夢の世界のように見えた。あの中に混ざりたい。・・・でも、まだやっぱり、怖いと思っている。特に、同じ年頃の女の子は。


ソラは小さく頭を振った。

(私だって、いつまでも裏路地に隠れているわけにはいかない!)

今日の収入は、自分を磨く事に使おう。

今までは身体を洗う石鹸で一緒に適当に洗っていた、女の子らしくない、このごわごわの髪をどうにかするだけでも、きっと少し、彼女たちに近づける。

そう決めたソラは、心配そうに自分を見下ろすラルに念話を送る。

『ちょっと待ってて!シャンプー買ってくるから』



そうしてソラは、ミランダから受け取った3ルドーで、シャンプーとリンスのセットを買った。

いつか表通りを、人間の友達と歩く日を夢見て。

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