プロローグ
--------プロローグ--------
某市
そこには、転倒して怪我をしたおばあさんと一組の母子がいた。
「おばあさん、動けますか?」
「痛みが強うて動けませんわ。」
股関節の外側辺りを指すおばあさん。
「ああ、ここは骨折しやすいところですね…。失礼いたしますね。」
股関節の辺りに手をかざす母親。目を瞑り、意識を集中し始める。
「おお…、痛みが退いて来とる。」
数分後、手を離し、目を開ける母親。
「骨は繋がりましたが応急処置です、無理に歩かれない方がいいですね。念のため、救急車呼びますので、病院で検査受けてくださいね。」
「わかりました。どうもありがとう。」
礼を言うおばあさん。
「いえいえ、とんでもないです。失礼いたしますね。」
電話をする母親。
「坊やも、母御の様な治癒術師になれるよう頑張るんじゃぞ。」
「はい。僕にとって母は誇りであり、目標です。おばあさんも気を付けてくださいね。」
「そうじゃな。寝たきりになっては皆に迷惑をかけるし、儂自身辛いからの…。」
「そうですよ、十分気を付けてくださいね。」
電話を掛け終った母親が声を掛ける。
「もうすぐ、救急車来るみたいです。」
「どうもありがとう。何とお礼していいやら。」
「お礼なんて要りませんよ。おばあさんが元気になってもらえればそれで十分ですよ。」
「はあ…、何から何までありがとう。」
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「母さん、僕は治癒術は授からなかったみたいです。」
「残念ね。でも、きっと違う力が眠っているはずよ。それを見つけて、その力を使った道を切り開いていくのよ。」
「はい、母さん。僕は自分が出来る事で、他人の役に立てる事を探します。」