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恋愛話

 食事を終えて外へ出ると、風が吹いていて涼しかった。


「せっかくだから、前に空夜が教えてくれた店へ行ってみない?」

「璃穏君、今・・・・・・」


 育実が払うことを拒んでいると、璃穏が安心させるように笑った。


「俺が奢るから」

「そんな、駄目だよ!」


 それを聞いた育実は首を横に振った。


「今日、二回目だよ?」

「気にしなくていいから」


 食事だって奢ってもらったのに、その上また奢ってもらう訳にはいかない。


「でも、悪いよ・・・・・・」

「空夜も食べたがっていたから。育ちゃんは食べたくない?」

「食べたい」

「だったら、買いに行こう」


 断る理由がなくなり、店へ向かい、店内に入ると、思っていたより客が少なかった。

 店内は明るく、白を基調としている。ピカピカに磨かれたショーケースの中には数十種類のタルトが綺麗に並べられている。


「空夜、何がいいかな?」


 空夜が何か甘いものを買うときはいつも日によって違う。育実が端から順に見ていると、隣に立っている璃穏とぶつかった。


「あ!」

「育ちゃん、ちゃんと周囲を見ないと・・・・・・」

「ごめんなさい・・・・・・」


 無意識にカニさん歩きをしながら、左から右へ移動していた。


「それと空夜はグレープフルーツのタルトが欲しいみたいだよ」


 さっき、育実が呟いていたことはしっかりと璃穏の耳に届いていた。


「そっか・・・・・・」

「育ちゃんは何にする?」

「私は・・・・・・」


 まだ迷い中の育実は選ぶことに集中しようとしたとき、さっきのことが気になった。


「ちょっと待って」


 ゆっくり選べばいいことを璃穏が言うと、育実はそうじゃないことを言う。


「どうして空夜が食べたがっているものを知っているの?」

「それはね・・・・・・」


 璃穏がポケットから取り出したものは携帯電話。それを操作して育実に読ませたのは空夜が璃穏に送ったメール。そこにグレープフルーツのタルトを食べたいことを書かれていた。


「俺はもう決めたよ」

「何を買うの?」

「洋梨のタルトにしようかな」


 悩んだ末に育実が選んだものは木の実のタルト。それらの金を璃穏に払ってもらい、タルトは育実が持つことにした。


「ふふっ」


 突然笑い出した璃穏を見て、育実は怪訝そうな眼差しを向ける。


「な、何?」

「小さい子が一生懸命持っているから」


 育実の姿が可愛らしく、思わず笑みが零れる。


「だって落としたら大変だから・・・・・・」

「それくらい俺が持つよ?」


 持とうとする璃穏の手を一瞥してから断る。


「大丈夫。これくらいやらせて」

「育ちゃん!前!!」

「きゃっ!」


 電柱に激突しかけた育実を璃穏は力強く後ろに引っ張った。


「怪我をしていない?」

「うん・・・・・・」

「ちゃんと前を見なきゃ駄目だよ?」

「ありがとう、気をつける」


 家に帰ったときに箱を開けると、列が乱れ、璃穏のタルトが少し崩れていた。


「また転んだのか?」

「違うよ・・・・・・」


 空夜が育実の膝や腕などを見る。電柱にぶつかりそうになったことを話すと、空夜は納得した。


「璃穏兄ちゃんがいてくれて良かった」

「ごめんね、璃穏君。壊しちゃって・・・・・・」


 育実が謝罪すると、璃穏はわざとでないから、怒っていない。


「大丈夫だよ。食べよう」

「育実、そっちも美味そうだな。一口くれよ」

「いいよ、はい」


 空夜に一口分けると、空夜も自分のグレープフルーツのタルトを一口育実に食べさせた。


「・・・・・・俺とあいつとは大違い」

「あいつ?」

「おっと・・・・・・」


 気になることを言ったのに内緒にされたので、空夜と育実は再度同じ質問をした。


「内緒」

「とても嫌いな人なの?」

「育実、だから俺達とは大違いであることを言ったんだろ?」

「そうだった」


 育実と空夜が話していることを聞いて、璃穏は首を横に振る。


「違うよ、嫌いじゃない」

「そうなの?」

「ただ、腹が立つだけ」


 璃穏が言ったことはあまり大差がないような気がすることを空夜と育実はそのまま口に出さないことにした。

 次の日の夜、キッチンから自分の部屋に入ると、空夜が寝転がって何かを見ている。


「何を見ているの?空夜・・・・・・あ!」

「ちょっ!何取り上げようとしているんだよ!」

「これは見ないで!」


 育実と空夜が大声で怒鳴っているので、璃穏は気になって二人がいるところまで走った。


「二人ともどうしたの?」

「璃穏兄ちゃん・・・・・・」

「あれ?それは・・・・・・卒業アルバム?」


 空夜が手に持っているものは育実の中学の卒業アルバム。それを育実は必死になって、空夜から奪い取ろうとしている。


「どうしてそんなに嫌がるんだよ!」

「中学の頃の自分なんて見られたくないの!」


 放っていたらさらに大喧嘩しかねないので、璃穏は慌てて喧嘩の仲裁に入った。


「空夜、どうして育ちゃんの卒業アルバムを見ようとしたの?」

「単に見たくなっただけだよ」


 数分前に育実の修正テープを借りていたので、それを返すために育実の部屋に入った。

 そのとき部屋に育実がいなかったので、そのまま自分の部屋へ戻ろうとしたとき、たまたま卒業アルバムを見つけたので、それを開いて見ていた。


「なるほどね」

「な?俺は別に悪くないだろ?」

「空夜が悪いよ」


 育実が呟いたのを璃穏の耳にはしっかりと届いていた。


「どうしてそんなに嫌なの?育ちゃん」

「それは、その・・・・・・」


 中学校であまりいい思い出がないから、育実はそのことを思い出したくなかった。そんな育実の姿を弟に見られることは育実にとっていい気分にはならない。

 そのことを伝えると、空夜が静かに口を開いた。


「俺さ、育実が中学生だった頃も当然知っているから」


 空夜が突然変なことを言うので、育実は驚いた。


「き、急に何を言い出すの!?」

「あの頃だって可愛かったからさ、見たかったんだ・・・・・・」


 育実は顔を赤くして、口をパクパクと動かしてから卒業アルバムをもう一度見て、溜息を吐いた。


「もう、わかったから・・・・・・」

「見ていいのか?」


 育実は頷いた後、あんまり長い時間見ないように空夜に言った。


「よし!あ、それと育実」

「何?」

「俺、もう少ししたら、ちょっと出かけるから」


 コンビニで買うものを買っていなかったので、それを買うために外出する。


「わかった。気をつけてね」

「あぁ」


 空夜が卒業アルバムを持って部屋の外へ出ると、育実はその場に座り込み、璃穏も同じように座った。


「仲直りして良かったよ」

「あんなの喧嘩ってほどじゃないよ?ちょっと言い合いをしていただけ」

「育ちゃん、これ」


 璃穏に手渡されたのは一個の飴玉。オレンジ味でいい香りがする。


「美味しいよ?」

「じゃあ、いただきます」


 口の中に入れると、璃穏の言う通り、美味しさが広がった。


「買ったの?」

「ううん、学校で阿佐部君にもらったんだ」

「私が食べちゃって良かったの?」

「うん」


 璃穏の分の飴はすでに食べたので、気にする必要なんてない。


「育ちゃん、阿佐部君が最近やけに俺に話しかけてくるんだ」

「それっていいことだと思うよ」

「うん・・・・・・」


 人との関わりがあまりなかった璃穏にとって、誰かと話をしたり、一緒に行動することで楽しさなどが増えてくる。

 しかし、他人から話しかけられることも自ら話しかけることもほとんどなかったので、璃穏は戸惑っている。


「今日はどんな話をしたの?」

「それがさ・・・・・・」


 璃穏はちょっと言いたくなさそうで、その先を言おうとしない。

 それでも育実は黙って待っていて、数分後にやっと璃穏の口が開いた。


「れ、恋愛・・・・・・」

「恋愛?」

「そう・・・・・・」


 今から数時間前、いつものように璃穏は育実が作ってくれた弁当を食べようとしているときに友希がやってきた。


「白沢!弁当、一緒に食おうぜ!」

「う、うん」

「今日も美味そうだな・・・・・・」


 璃穏が前に育実に頼んでいた鶏の唐揚げとねぎを入れた卵焼きが入っている。

 育実を見た璃穏が笑いかけると、照れた育実は危うく自分の弁当を床に落としそうになったので、璃穏が声を上げた。


「どうかしたか?」

「ううん、何も!」

「あ!」


 友希も育実が弁当を落としかけたことに気づいた。


「信多って一人でいても騒がしそうだな・・・・・・」

「そ、そうかな?」


 友希はカツレツサンドを大口を開けて食べながら、育実をじっと見ている。

 そのとき英語の先生が教室へ入ってきて、育実に話しかけている。どうやらノートを出し忘れていたようで、育実は慌ててノートを先生に提出した。


「珍しいな。ドジでいろんなものを破壊するけれど、忘れ物なんてしないのに・・・・・・」

「忘れたんじゃないよ。出すのがちょっと遅くなっただけ・・・・・・」

「白沢?」


 育実が少し前に自分のノートを提出しようとしたとき、担任の先生に仕事を頼まれた。そのことを英語の先生も知っていたから、後から提出するように育実に言った。

 璃穏はそれを近くで見ていたので、育実が忘れたのではないことを知っていた。


「どうしてお前がそんなことを知っているんだよ?」

「た、たまたま見たんだよ」

「話が変わるけどさ、白沢が好きな女のタイプってどんな奴だ?」


 本当に話が大きく変わったので、璃穏はその質問にどう答えようか考えた。


「あ、阿佐部君は?」

「お、俺!?」

「教えてよ」

「うーん・・・・・・」


 まさか同じ質問をされるなんて思っていなかったので、友希は腕組をして唸っている。

 しばらく考えてからやっと顔を上げて、璃穏を見た。


「一緒にいて飽きない奴・・・・・・だな」

「そっか。確かに退屈は嫌だよね」


 今度は璃穏が言う番なのに、璃穏は弁当を美味しそうに食べていて、何も言わない。

 そのことに腹を立てた友希は机の上に拳を叩きつける。


「うわっ!」

「俺だって言ったんだから、お前もちゃんと言えよ!」

「あぁ・・・・・・」

「言わないと弁当を没収するぞ」


 友希が璃穏の弁当を狙っていることを知り、璃穏の目つきが変わった。それを見た友希はかなり怯えている。


「な、何だよ・・・・・・」

「言うよ。言うから横取りしないで」


 いつもの表情に戻ったので、友希はほっと胸を撫で下ろした。


「弁当を食べられたら、イライラして何かするかもしれないから」

「ひっ!」


 それを友希は全身が凍りついたので、何も話すことができなかった。


「好きなタイプでしょ?うーんと・・・・・・」


 俯いて考えていると、育実が作ってくれた弁当が見えた。


「やっぱり料理が得意な子かな」

「それってこれを作ってくれている子のことか?」


 友希が弁当を見ると、璃穏は笑って否定した。


「まさか、違うよ」


 まだ互いに話すようになったばかりなので、そんなすぐに恋愛感情を抱いて、好きになったりしない。


「クラスの奴だったら、誰がいいんだ?」


 名前を出したら、完全に本人に誤解されてしまう。


「タイプに近い奴だ。そんなに深く考えるなよ」

「阿佐部君は?」

「また俺からかよ!」


 教室内を見渡し、自分の好みの相手を確認した。 

 誰にも知られたくないので、友希は璃穏にそっと耳元で伝えた。


「今来・・・・・・」

「そうなんだ、今来さんね」

「私がどうかした?」


 本人が友希と璃穏の目の前にいるので、二人して大声を上げた。


「ちょっと何なのよ・・・・・・」

「わ、悪い・・・・・・」

「私に用があるんじゃないの?」

「えっと・・・・・・」

 

 本人を目の前にして本当のことを言うことができないので、何を言うべきか考えていると、先に璃穏が声を出した。


「今来さん、よく係の仕事を阿佐部君の分までやるから偉いなって・・・・・・」

「そうよ!この間も黒板に必要なものを書くように言ったのに、忘れちゃってさ!少しは真面目にやってよ!」


 いつも都合の悪いことを忘れるので、友希は一桜によく注意をされる。


「わ、わかった!気をつけるから・・・・・・」

「絶対だからね?」


 一桜が育実のところへ戻ったので、友希と璃穏は深い溜息を吐いた。


「危なかったね・・・・・・」

「俺はしっかり怒られたじゃねぇか!」

「それは阿佐部君が悪いから・・・・・・」


 何も言えなくなった友希がふと時計を見ると、もうすぐでチャイムが鳴る時間だった。友希と璃穏は慌てて、自分の昼食を食べたので、何度か咳き込んでいた。

 璃穏が昼休みの会話の内容を育実に話すと、自分のことをしっかりと見られていたので、ちょっと恥ずかしかった。


「こんな話をしていたんだ・・・・・・」

「そうなんだ、璃穏君は結局、好きな女の子のタイプを言わなかったんだね」

「言う時間がなかったからね」


 本当のところあったけれど、言いたくなかったので、別の話題で昼休みの時間を潰した。


「言って」

「な、何を?」


 嫌な予感がした璃穏は自分の予想とはずれてほしいことを願う。


「私も聞きたい。璃穏君、クラスの子でどんな子がいいの?」

「あ・・・・・・」


 嫌な予感が的中してしまったので、璃穏は項垂れる。育実を見ると、表情がキラキラとしていて、まるで餌を待っている小動物のようだった。


「育ちゃん、お腹が空いたな。ご飯を作って」

「ご飯?」


 それに対し、育実はきょとんとした。さっき、みんなでご飯を食べたばかりで、璃穏はしっかりとおかわりまでしていた。


「ご飯だったら一時間前に食べたよ?」

「そうだったね・・・・・・」

「お菓子だったらあるよ?食べる?」


 冷蔵庫からチョコレートを取り出そうとしたら、璃穏が育実を止めた。


「ううん、いい、いらない!」

「そう?それよりーー」


 育実が続きを話そうとしたら、チャイムが鳴ったので、璃穏は玄関まで走った。外にいたのは空夜でコンビニから帰ってきた。空夜がキッチンへ行こうとしているので、璃穏と育実もキッチンへ向かった。

 空夜はコンビニの袋から買った商品を出して、冷蔵庫の中へ入れていく。


「それをわざわざ買ってきたの?」

「欲しい飲み物があったから、買いに行ったんだ。そっちはついでだ」


 テーブルの上に置いてあるものはアメリカンドッグとフランクフルト。

 璃穏と育実で分けるように言った空夜はそのまま自分の部屋へ荷物を置きに行った。


「どっちがいい?」

「私はフランクフルトにする」

「はい」


 育実がフランクフルトを食べたのは七、八年ぶりだった。

 璃穏を見ると、アメリカンドッグを食べる前にお茶を飲んでいる。


「育ちゃんもお茶を飲む?」

「うん、飲む」


 璃穏は育実がいつもどのグラスで飲み物を飲んでいるか、すでに把握済み。

 お茶を飲みながら、育実はそんなことを考えていた。


「どうしたの?」

「な、何が?」


 急に璃穏が育実を見たので、持っていたお茶を零しかけた。


「育ちゃん、さっきからじっと見ている」

「璃穏君、ここで生活することにかなり慣れたみたいだから」

「そうかな」


 本人はあまり自覚がないようだった。


「まさか俺と同じ年齢で、しかも同じクラスの女の子と同じ家で生活するなんて、思っていなかった」

「それは私もだよ」


 こんな風に璃穏と話をしたり、何かを一緒に食べたり、外出したりするなんて、少し前の自分が想像するはずなかった。


「楽しいね」

「璃穏君?」

「前よりずっと・・・・・・」


 璃穏はいつも以上に柔らかく、優しい笑顔を育実に向けていて、育実は嬉しい気持ちで満たされた。。



 午前の授業が終わった後に違うクラスの男子生徒に呼ばれて、育実は名前も知らない彼と一緒に非常階段まで行った。

「あんた達さ、最近仲が良いよね?」


 四時間目が終わり、一桜が育実と璃穏を見ながら言った。


「そ、そう?」

「他の子達も言っているよ?二人でいるところを何度も見るようになったしね」


 恋人だと誤解されたくないので、極力目立たない場所で二人きりになっていた。

 しかし、一人が気づけば、次から次へとその人数が少しずつ増える。


「どうして急に仲良くなったの?ちょっと聞かせてよ」

「璃穏君、私は用事を思い出したから」

「待って!」


 踵を返して、再び教室を出ようとする育実の手を璃穏が掴む。


「ず、ずるいよ。育ちゃん!」

「何もずるくない!」

「ちょっと前までそんな呼び方していなかったじゃない」

「いや、これは・・・・・・」


 一桜が質問をしているところに友希が輪の中へ入ってきた。


「友希も気になっていたでしょ?この二人が急に仲良くなったの」

「あぁ・・・・・・」


 友希は自分の昼食のパンを片手に持ったまま、近くにある椅子に座った。


「きっかけは何だったの?育実」

「わ、私!?」


 一桜に指名された育実はすぐに璃穏に助けを求めたものの、璃穏は育実の視線に気づいているが、助けようとせず、弁当を美味しそうに食べている。

 絶対に育実の視線に気づいているに違いない。


「俺にも教えてくれよ」

「えっとね、きっかけは・・・・・・階段」


 璃穏は苦笑を浮かべ、一桜と友希ははてなマークを浮かべている。

 二人に璃穏と一緒に生活している部分を除いて、詳しいことを説明すると、驚いて大声を上げた。


「嘘だろ!?」

「い、い、い、育実!あんた・・・・・・」


 あまりにも衝撃的な話なので、一桜は声が震えている。


「信多、ドジがそこまでレベルアップしたら犯罪・・・・・・」

「私もすごく驚いたよ!」

「俺はそれに加えて恐怖と痛みを感じたよ」


 満面の笑みを璃穏に向けられた育実はひたすら謝ることしかできなかった。


「階段から突き落として、友情が芽生えるなんて信じられないな・・・・・・」

「自然に仲良くなったんだよ」


 璃穏が大怪我をしなかったことを考えた育実は安堵の溜息を吐く。


「ところでさ・・・・・・」

「どうかした?一桜ちゃん」


 一桜がじっと見ているのは育実と璃穏の弁当。それに気づいた璃穏は嫌な予感がした。


「どうして弁当がほとんど一緒なの?」

「うわっ!本当だ・・・・・・」


 友希も弁当に注目したので、育実と璃穏は顔面蒼白になった。このことについて説明を求められたので、育実と璃穏は困り果てた。


「えっと、それは・・・・・・」

「私が料理を教えているの!」


 咄嗟に吐いた嘘。一緒に住んでいて、料理を教えることだってあるので、完全な嘘ではないものの、育実が弁当を作っているときは璃穏はまだ熟睡していることが多い。


「家にまで遊びに行っているのかよ!?」

「ま、まぁ・・・・・・」


 曖昧に返事をした璃穏を信じた友希が口を開きかけたので、育実が慌てて話をする。


「電話でも料理を教えることができるしね!」

「テレフォンクッキング?」


 一桜が呟きながら首を少し傾げる。

 二人であれこれ言って誤魔化したので、育実と璃穏が一緒に生活していることを一桜と友希に悟られずに済んだ。

 昼休みに四人で昼食を食べたのは初めてで、何かと騒がしかったものの、楽しい時間を過ごすことができた。


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