ぴちゃん、ぴちゃん
ぴちゃん、ぴちゃん。
雨の残り香と森の匂い。
静かな水音。
ここに埋められた私。
恋人だと思ってた。
ただの浮気相手だった。
あっちには妻子がいた、私は知らなかった。
バカな私は、正面から問い詰めた。
そして彼は、私を殺して土に埋めた。
「…さて、どうしてくれようか」
この恨みは晴らさないでおくべきか。
いいや、晴らすべきだ。
怨霊に落ちるとしても。
貴方に最大の絶望を。
といっても。
殺すようなことはしない。
ただ、金縛りして枕元に立つだけ。
顔を覗き込んで、何も言わずにただ見つめるだけ。
それだけで彼は、分かりやすく憔悴していった。
「俺がやりました!!!」
私の遺体は発見された。
供養されたが、天に昇る道は開けていない。
天涯孤独の私は、悼んでくれる遺族もいない。
彼は…遺体が発見されて供養されたのだから、しかも出頭したのだからと赦されると思っていたらしい。
でも、それはない。
拘置所でも、金縛りは止まらない。
私は枕元に立ち、彼の顔を覗き込む。
やがて長い時間を経て、彼は医療刑務所に入れられた。
それでも私は枕元に立ち続ける。
だが、とうとう彼は食事も喉を通らなくなった。
このままだと死ぬのを「私のせい」にされる。
だから、私は枕元に立ち続けるのをやめた。
その後彼がどうなったかは、調べてすらいない。
枕元に立ち続けるのをやめた私は暇になった。
暇になった私は放浪を続ける。
そして見える人に会う度、この話をして「やりすぎたかなぁ」と相談してる。
「やりすぎ」という人も、「まあねえ」と濁す人も、「わかる」と言ってくれる人もいる。
そのうち、あれだけ苦しかった彼への気持ちが段々楽になってきた。
気付いたら、なんとなく「どこにいけばいいか」わかるようになった。
素直にそちらに行く。
たとえ私がしたことがやりすぎでも。
これから行くのが地獄でも。
私はいよいよ、何の未練もなくそちらにいけるのだからそれでいい。
さようなら、世界。
私は逝きます。
さようなら、世界。
本当は、もうちょっと生きていたかったのだけど…今は、後ろ髪を引かれるほどの思いもないから。
さようなら、さようなら、さようなら。
赦されると思った。
自首したし、遺体は見つかって、供養されたと聞いたから。
でも、赦されることはなかった。
呪われない。
罵倒されない。
ただ、見てくるだけ。
怖かった。
やってしまったことが。
怖かった。
赦されないことが。
俺は精神を病んだ。
医療刑務所に入れられた。
俺はそのうち食事も喉を通らない程病んだ。
そうしたら…彼女は出なくなった。
俺は少しずつ食事を取れるようになった。
少しずつ眠れるようになった。
彼女は、それでも出ない。
赦された?
いいや、あり得ない。
ただ、興味を失っただけなのだろう。
地獄で会ったその時には。
きちんと、君に謝りたい。




