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ぴちゃん、ぴちゃん

作者: 下菊みこと
掲載日:2026/07/13

ぴちゃん、ぴちゃん。


雨の残り香と森の匂い。


静かな水音。


ここに埋められた私。


恋人だと思ってた。


ただの浮気相手だった。


あっちには妻子がいた、私は知らなかった。


バカな私は、正面から問い詰めた。


そして彼は、私を殺して土に埋めた。


「…さて、どうしてくれようか」


この恨みは晴らさないでおくべきか。


いいや、晴らすべきだ。


怨霊に落ちるとしても。


貴方に最大の絶望を。
















といっても。


殺すようなことはしない。


ただ、金縛りして枕元に立つだけ。


顔を覗き込んで、何も言わずにただ見つめるだけ。


それだけで彼は、分かりやすく憔悴していった。


「俺がやりました!!!」


私の遺体は発見された。


供養されたが、天に昇る道は開けていない。


天涯孤独の私は、悼んでくれる遺族もいない。


彼は…遺体が発見されて供養されたのだから、しかも出頭したのだからと赦されると思っていたらしい。


でも、それはない。


拘置所でも、金縛りは止まらない。


私は枕元に立ち、彼の顔を覗き込む。


やがて長い時間を経て、彼は医療刑務所に入れられた。


それでも私は枕元に立ち続ける。


だが、とうとう彼は食事も喉を通らなくなった。


このままだと死ぬのを「私のせい」にされる。


だから、私は枕元に立ち続けるのをやめた。


その後彼がどうなったかは、調べてすらいない。
















枕元に立ち続けるのをやめた私は暇になった。


暇になった私は放浪を続ける。


そして見える人に会う度、この話をして「やりすぎたかなぁ」と相談してる。


「やりすぎ」という人も、「まあねえ」と濁す人も、「わかる」と言ってくれる人もいる。


そのうち、あれだけ苦しかった彼への気持ちが段々楽になってきた。


気付いたら、なんとなく「どこにいけばいいか」わかるようになった。


素直にそちらに行く。


たとえ私がしたことがやりすぎでも。


これから行くのが地獄でも。


私はいよいよ、何の未練もなくそちらにいけるのだからそれでいい。


さようなら、世界。


私は逝きます。


さようなら、世界。


本当は、もうちょっと生きていたかったのだけど…今は、後ろ髪を引かれるほどの思いもないから。


さようなら、さようなら、さようなら。

赦されると思った。


自首したし、遺体は見つかって、供養されたと聞いたから。


でも、赦されることはなかった。


呪われない。


罵倒されない。


ただ、見てくるだけ。


怖かった。


やってしまったことが。


怖かった。


赦されないことが。


俺は精神を病んだ。


医療刑務所に入れられた。


俺はそのうち食事も喉を通らない程病んだ。


そうしたら…彼女は出なくなった。


俺は少しずつ食事を取れるようになった。


少しずつ眠れるようになった。


彼女は、それでも出ない。


赦された?


いいや、あり得ない。


ただ、興味を失っただけなのだろう。


地獄で会ったその時には。


きちんと、君に謝りたい。

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― 新着の感想 ―
怨霊に落ちるとしても、という気概だったけど、立つだけで済ませちゃったね。 悪い子になりきれなかったのかな。 次があるなら変な男に捕まらないようにね。 地獄で会ったその時には > お前さんの認識だと幽…
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