第7章 この仮説がもたらす意義
7-1. 倫理観や死生観への影響
もし世界が創造主のストレージに存在する仮想現実で、魂の増減やコピーが自在だとしたら、「人の死」が単に“セーブデータの消去”や“アバターの変更”にすぎなくなる可能性がある。そうなれば倫理や死生観も根底から覆るかもしれない。殺人や事故なども“データの上書き”に過ぎないという見方をしてしまうなら、人間の尊厳がどこにあるのかという問題も提起される。
7-2. 宗教・神学の再定義
伝統宗教で説かれる神や天国、地獄も、「創造主のプログラム」や「別サーバー環境」であるとすると、古い神学を“情報論的”に翻訳する作業が必要になる。一部の新宗教やスピリチュアル界隈では、すでにコンピュータやネットワークのメタファーを使いながら聖典を読み解こうとする動きがある。
7-3. 科学と哲学の境界
この仮説は科学というよりも形而上学や哲学に近い領域に属する。しかし量子力学や宇宙論の最先端が示唆する「情報こそ物理の根底」「時空は実在ではなく現象としてレンダリングされている」などの議論は、仮想現実説を単なるSFの空想以上のものとして捉える余地を与えている。
今後の理論的発展や新発見次第では、私たちの認識が大きく変わる可能性も否定できない。




