第2章 創造主のパソコンのストレージ論――問題の定義
2-1. シミュレーション仮説の基本
シミュレーション仮説は、私たちの住む宇宙がより高次の存在によるコンピュータプログラムとして走っている、というアイデアである。
ニック・ボストロムは次のように主張した:文明が十分に高度に進化した場合、過去の歴史や異なる可能性の世界をまるごとシミュレートしようとすることが理にかなっている。もしそのシミュレーションが人間レベルの意識や経験を忠実に再現できるほど洗練されているなら、その“内部”の存在たち(=私たち)は自分たちがシミュレートされているかを判別できないだろう。そしてそうした高度文明が無数のシミュレーションを行う可能性を考えると、私たちがオリジナルの現実にいる確率より、シミュレーション世界にいる確率のほうが高いかもしれない。
2-2. 「創造主のストレージ」拡張
「創造主のストレージ」という表現は、このシミュレーション世界をホストしているコンピュータ環境を具体的にイメージしたものだ。
もし創造主――高度文明のエンジニア、あるいは超越的な神――が“宇宙シミュレーション”を運営しているなら、そのデータはどこかのストレージ装置に保存されているはずだ。私たちの星も、銀河系も、さらには私たち一人ひとりの意識や記憶も、そのストレージ上のデータの集合体だというわけである。
2-3. 宗教観との関連
古典的な一神教などでは「神が世界を創造し、その運営を支配する」と説くが、これを情報化社会的に再解釈するなら、神は“宇宙シミュレーションの管理者”と見なし得る。
たとえば創世記での「神が6日間で世界をつくった」という話も、「神がプログラムをセットアップし、最適化を行って完成した」という例えで読み替えられなくもない。
さらに、仮にこの世界が上位存在のコンピュータ内プログラムだとすれば、“奇跡”や“超常現象”はシステムのチートやアップデートという形で説明可能、という考え方もある。




