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BARでカンパイ!

男は俺の目の前に立つとこう言った。

「探したぞ兄ちゃん!こんな所で酒飲みやがって!」

口調は荒々しいが、顔は笑顔だった。

「す、すみません!ついお酒に夢中に……。」

俺がそう言い訳すると、彼は笑顔で言った。

「いいってことよ!それより俺も一緒していいか?マスター!俺もビールを頼む。」

そう言って俺の横に座った。


「おお、マルス、カナデと知り合いだったんか。」

ダンテが尋ねた。

「いや、今日の昼間に仕事を紹介してやるって約束しててよ。」

そう言いながらマルスはビールを飲む。彼も中々良い飲みっぷりだ。


「まあ仕事の話は後にしてまだまだ飲もうぜ!」

アランが言う。

この人たち今日一日酒飲んでるけど仕事とかしてないのかな。


マルスを加えて四人で飲み会を再開した。今日初めて出会ったとは思えない程打ち解け、肩を組み歌を歌って酒を飲んだ。


しばらくして、ダンテとアランが酔い潰れて寝てしまった。


「飲みすぎだぜこいつら。」

マルスはそう言いながらまだ酒を飲んでいた。

俺は特殊な身体になってしまったので泥酔することは無いが、この人は何故酔わないのだろう。もうビールを10杯以上飲んでいる。


マルスは立ち上がり、「そろそろ行くか」と言った。そうだ、この人に仕事を紹介してもらう手筈だった。


「会計はダンテにつけといてくれ。」

そう言い残したマルスと共に食堂を出る。昼間訪れた広場に行くと、2人の男が立っていた。


「よし、一人ずつ自己紹介だ。」

マルスがそう言うと、俺から見て左に立っていた背の低い男が話し出した。

「よお兄弟、俺は木材屋のリッツだ。俺んとこの仕事は簡単だ。風魔法で木を切って加工する。それだけさ。ん?その頭のやつはなんだ?」

風魔法?なんだそれは。そんなものは使えないぞ。

困ったようにマルスを見ると、マルスは察してくれたようだ。

「もしかしてカナデは風魔法は不得意か。それならこの仕事はできねえな。」

不得意というか全く使えないがな。

すると、右側の男、背の高い方が話し出した。

「なら俺のとこに来てくれ!俺はアイスキャンデー屋さんさ。氷魔法さえ使えればそれでいい。あと頭のそれはなんだい?」

こいつもかよ。氷魔法なんて風魔法より難易度が高そうだ。というかアイスキャンデー屋さん?こんな背がデカくて筋肉ムキムキで、前世だったら即通報されそうな見た目のこの人が?可愛いすぎるな。

だが参ったな。俺は魔法なんて使えない。正直にそう言うと、3人が驚いて話し出す。

「まじか、どっちの魔法も使えないのか。そんなのでよく旅に出ようと思ったな。」

ごもっともな意見だが、俺に言われても仕方が無い。


「しかたねぇな。なら3人目に頼むしかないか。あいつらなら上手くやっていけるだろうし。」

マルスはそう言って歩き出した。

着いていくと、先程訪れた食堂に戻ってきた。中に入るとアランとダンテが先程と同じ席で居眠りをしていた。

「おい!起きろダンテ!こいつ雇ってやれよ。」

マルスがそう言いながらダンテの肩を揺する。

3人目はこの人だったらしい。

大丈夫だろうか、今までの流れからすると魔法が使えることが必須条件なのではないか?俺は満たしていないぞ。何だか前世での就職活動を思い出して憂鬱になる。

ダンテは眠そうに目を開き、俺を見て言う。

「ああお前だったのか働きたいってやつは。いいぞ、うちのBARは昼の2時から夜の12時までやってる。週休三日で三食昼寝つきだ。必要なのは元気だけ。」


「明日からよろしくお願いします!」


こうして、俺の働き口が見つかった。


その日は酔っ払ったダンテとアランと共にダンテが経営するBARに帰り、とりあえずBARに置いてあったソファで寝て朝を迎えた。


翌日、改めて仕事について説明を受けた。

このBARはダンテが若い頃からやっているとのことで、アランは3年前から働き出したらしい。2階は従業員が寝泊まりする部屋がいくつかあるらしく、俺もそこで寝泊まりして良いとのことだった。賃金については、給料が出る訳ではないが働いている間の衣食住に関しては全てBARの経費で落ちるとのこと。まあこの世界では物々交換が基本のようだし、住まわしてもらうだけ有難い。


そして昼の2時から店を開いた。昼間は軽食を食べに何人か客が来るだけでそこまで忙しくなかったのだが、夕方以降多くの客が来店した。

とはいっても俺は注文を聞いて出来た料理を運ぶだけだ。学生時代居酒屋でバイトをしていた俺にはこんなの朝飯前だった。

そうして暇になると、常連であろう客が俺たちにお酒をご馳走してくれた。

「飲むのも仕事のうちだ」とダンテが言っていたため、俺も遠慮せずに飲む。

ダンテとアランは酒を飲みつつ料理を作り、たまに客と駄弁る。俺も酒を飲みつつ料理を運び、注文の際たまに客と話す。

楽しい。労働とはこんなに素晴らしいものだったのか。前世では労働などただの罰ゲーム、懲役40年の刑務作業のように思っていたのに。

ダンテやアラン、常連たちと飲みながら話していると、BARの扉が開いた。

目線をやると、白い衣服に身を包んだ金髪の美女が入ってきた。とんでもない美女だったが、ダンテたちはあまり気にしていないようだった。

彼女は俺の目の前に座り、梅酒を注文した。

よく見てみると、耳が少しとんがっていた。どうやら俺の知るところのエルフという存在らしい。エルフって梅酒飲むんだな。

彼女の服装は露出度が高く、白い布を纏っているだけといった様子だった。少し背を伸ばせば胸元が見えそうだったが、俺はもちろんそんな事はしない。

彼女は色気があったが、それ以上に綺麗で、どこか美術品に近い印象を受けた。

つい夢中になり彼女を見ていたせいか、俺は話しかけられてしまった。

「新人さん?私はエルフ族のネルマ、よろしくね。その頭のリボン見たいのは何?」

俺は突然話しかけられたことに驚きつつ、平静を装って答えた。ネクタイの件は適当に長そう。

「はい、今日からここで働かしてもらっています。カナデと申します。この頭のやつは……リボンです。」


でそこから彼女と雑談をした。どうやら彼女はこの村から少し歩いたところにある村に住んでいるらしく、そこはエルフの村らしい。正直興味が湧く。

彼女はしばらく飲んだ後、お会計をした。名残惜しいと思っていると、彼女は俺に顔を近づけて言った。

「私あなたが気に入った。明日の夜ここに来てくれない?」

そう言いながら名刺のようなものを渡してきた。名刺には地図のようなものが書かれており、恐らくそこがエルフの村であろうと推測できた。見るからに水商売の女が渡してくる名刺のようだったが、俺は全く気にしなかった。酔っていたからな。

それ以上に喜びが湧き上がってきた。転生して二日目で美人なエルフに逆ナンパされた。それもいきなり自宅に呼ばれた。それも夜にだ。ここはなんと素晴らしい世界だろう。

彼女が店を出た後、アランに「彼女から何か言われなかった?」と怪しまれたが、秘密にした。アランには悪いが俺は明日存分に楽しむことにする。結果報告はしっかりするから許してくれ。


ちょうど明日は店を閉めるらしいし、早速行ってみようと思った。俺のBAR店員デビューは華々しくスタートを切った。


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