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見抜く女と見抜かれぬ男

この町には、奇妙な能力を持った者たちが、まるでふつうの人々のように暮らしている。

魔法の才、剣技の妙、精霊との対話――。それらを隠し持ちつつ、花屋を営んだり、鍛冶場で火をくべたりしているのだ。


そんな中に、カリナ・ローウェンという一人の女性がいた。三十二歳。未婚。職業:人材鑑定士。

といっても、表向きは書類仕事や町役場の面接補助をしているだけの地味な職員だ。

本当の仕事は別にある。


彼女は、“人の才能の輝き”が見える。


たとえば、町のパン屋の少女には、まだ芽吹いたばかりの「癒しの魔力」が見えた。

旅の剣士には「剣聖の素質」の光がはっきりと浮かんでいた。

その光は、才能を活かすことで鮮やかに輝きを増すし、潰されれば黒ずんでいく。


だからこそ、カリナはいつもため息をつくことになる。

婚活が、地獄だった。


「今日も、才能は……凡人しかいないか……」


通い慣れた『街の出会いパーティー』。町の広場に設けられた大テントで、花瓶のように並べられた男女が、指定の席で少しずつおしゃべりしては次へと移動していく。

カリナにとって、これほど退屈で、これほど心が荒む時間はない。


なぜなら、彼女に見えるのは“可能性”であって、“今の姿”ではないからだ。


口先だけの騎士見習い。賢そうに話すが、才能のかけらもない学者志望。

そして、自分を「ふつう」と言い張る、自信のなさそうな男たち。


(私の目がなければ、騙されていたかも。でも、全部見える……)

ため息をつきかけたそのとき――。


そこに、異常な“光”が見えた。


「……え?」


目の前に座った男。灰色の上着に、風に乱れた髪。背筋は少し丸まり、表情も冴えない。

一見して、ごく普通。いや、むしろ地味な部類だ。


だが、彼の内にある才能の光は、見たこともないほど深く、強く、鮮やかだった。


(なに、この人……。なんの才能? これは……“導く者”? それとも……“未来視”?)


判別できないほど複雑で、大きすぎて、まるでまだ封じられているようだった。

しかも、本人がその才能にまったく気づいていない。


「えっと……カリナさん、ですね。俺、ラゼルっていいます。こういうの、慣れてないんですけど……」


ぼそぼそと、緊張気味に話す彼。人見知りで、ぎこちない。でも――。


(まさか……見つけちゃった?)


この出会いは、もはや偶然ではない気がした。

いや、運命すら導く力をこの男は持っているのかもしれない。


しかしカリナは、思い出す。

――自分の“能力”で誰かを選んでも、結局、その人は自分ではなく「もっと才能ある誰か」を選んでしまう。

これまで、何度そうなってきたか。


(この人に気づかせちゃダメ……!)


そう、ラゼルに自分の才能を悟らせてはいけない。

自分の中に眠るものを、目覚めさせてはいけない。

それを守りきれたなら、彼はずっと「私」を見ていてくれる。


カリナは、小さく微笑んだ。


「ラゼルさん。わたし、こういう場、ちょっと疲れてて……よかったら、少し外、歩きませんか?」


「え、あ、はい!」


手を差し出すと、彼はぎこちなくも、それを取った。

ふつうの手。ふつうの温度。でも、その中に眠るものは――とんでもない“才能”だ。


それに、彼を気づかせずに、私は幸せになれるだろうか?




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