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ギャングの娘 前世を思い出す

それはゆっくりと

まるで霧の中から埠頭へとやって来る一隻の船舶のような違和感だった。


始めは確か、クォーツ街を一人で歩いていた時の事だったと思う。

煤で汚れたレンガ調の町をぼんやりと歩いていると

ふと「寿司が食べたい」と唐突に思った。

そしてこうも思った。

「寿司とはなにかしら?」


「SUSHI・・・?」と立ち止まり呟いてみた。

聞いたことも無ければ口にしたこともない単語だった。

一体なんだろう。ただ無性に懐かしい響きだった。

ごった返す通行人は道の真ん中で立ち尽くす私を一瞬邪魔くさそうに見たが

私の顔を見るや否やはっと表情を変え、申し訳なさそうに避けた。

大の大人ですら深々と頭を下げて道を譲って通り過ぎて行く。

そんな様子を見て、私は鼻を鳴らす。

街の奥から蒸気機関車の汽笛が空に響いた。顔を向けると石炭から出る黒い雲がどこまでも朦朦と立ち昇っていくのが見えた。


クォーツ街の治安は悪い。住民はみんな盗人か強盗と言っていい。

レンガの壁と石道には煤と血と吐瀉物とが染み込んでしまっている。

そしてそれらの幾重による積み重ねの年輪こそがこの街の歴史を象徴していた。

裏路地では通行人の財布を狙う孤児と品質の悪い酒を浴びるように飲む男が身を潜めている。

とてもじゃないが、うら若き少女が一人で歩ける場所ではない。

少なくとも、私以外の少女には。


二回目は暖炉の前で兄と共に裏カジノの帳簿を見直している時だった。

計算嫌いの長男に頼み込まれて回されてきた大量の紙幣と書類とに目をやりながら

「これではOL時代と同じね。私は会計をする星の下に生まれたのかもしれない」と思った。

「OL」とつい呟くと、隣の安楽椅子に腰かけ煙草を吸いながら書類を眺める次男の兄さんが鋭い視線を向けてきた。ギンガムチェックのズボンに煙草の灰が落ちそうになっている。


「なんの略語だ?」

「Office Ladyよ。兄さん」

「聞いたことがないな。造語か?」

「知らないわよ。急に頭に浮かんだの」

Office Lady,OLか。兄さんはそう呟くと唇の端を小さく上げて笑った。

「これからはこの国も女の時代だ。娼婦でなくとも女は稼ぐようになる。Office Lady。いい響きじゃないか」

一本吸うか?と気怠そうに差し出された煙草を受け取った。マッチを擦って火を灯す。


喫煙は、肺がんをはじめ、あなたが様々ながんになる危険性を高めます。

という謎の文言が頭に浮かんだが、一体どこで見かけたのかは思い出せなかった。



そして三回目は、そう今朝だ。

朝起きて、朝食前に自室で鏡を見ている時のことだ。

冷たい冷水を顔に浴びせ、滴る水滴を拭いながら目の前にある鏡を眺めていた。

そこには赤毛の少女がいた。

夕闇と夜の境目のような深い赤髪を結んだ少女だった。端正な顔立ちをしている。

しかし最も目を引かれたのはその瞳だった。蛇のように鋭い猛禽類のような危険な双眸。

その瞳が彼女の獰猛さを象徴していた。

もしもそれが無ければきっと良家のお嬢様のようだったはずだ。


鏡のなかの少女を見て私は思った。

「誰だこれは?」と。


そこに映っているのは黒髪で、二十七歳で東京で会計事務をしていて、暇さえあれば海外ドラマとアニメをみて過ごす独身の日本人女性では無かった。


ずきり、と頭が痛んだ。

そうだ。私【朝倉 舞】は死んだ。病を拗らせて病室のなかで。

そして何故か此処に居る。

十九世紀調の街で、何故かギャングの娘に転生してしまっている。

ギャングの娘に転生したOLが暴れ回る痛快な物語になる予定です。

魔法もあります。


少しでも続き読んでみたいなって思ってくれた方がいたら嬉しいです。

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