第36話(累計 第81話) ティナ、大公様と対決する!
「カイト、わたし頑張るね」
「うん、ティナ。僕は君の事を絶対に守るから」
僕達は、とうとう王城内に入った。
帝都に入って後、多くの市民から声援を受けた。
「皆、わたしを応援してくれているのよね」
「そうだね。でも、無理はしなくても良いんだよ、ティナ」
そして今は大公様への謁見前、城内控室には僕とティナ、そして仲間達と共に居る。
僕は、震えるティナをぎゅっと抱きしめる。
<しかし、ここまでティナ様の名声が広まっているなんて思いませんでしたね。ですか、おかげで狙撃や襲撃の心配が要らなかったのは良かったです。そうそう、敵ドローンも城内に入った直後に撃破しておきました。出ていくときにドッカンなんてイヤですからね>
「何かあれば俺が盾になるって!」
「もー、レオンってば雑なの!」
「まあ、アタシやヴィリバルトもいるんだ。そう簡単にはティナちゃんを傷つけさせはしないさ」
「ん!!」
「ははは! 皆、ティナちゃんに過保護だのぉ。まあ俺も可愛がってしまうがな」
「フローレンティナ様が愛らしく素晴らしいのは元よりですが」
冒険者パーティ「紅蓮」の仲間達はいつも通り。
後は、パウル様。
そして、何故かリヒャルト様まで一緒だ。
「あーもぉ、カイトはティナちゃんから離れてください。ちゃんとお化粧直しや服のチェックしないとぉ。わたし、ティナちゃんには『不幸』になって欲しくないんですからね」
「あーん、カイトぉ。ネリーお姉さまのいぢわるぅ」
ネリーは、ティナから僕を引き離して、一生懸命化粧直し。
可愛いティナが、ますます美しさを増していくのを見るのは、実に楽しい。
「でも、市民の皆様の応援、嬉しかったの。わたし、絶対に皆を幸せにしちゃうね!」
街中はティナを一目見たい人で一杯。
城へ向かう目白通りには、あふれんばかりの人々が集まり、兵士さんや騎士の方々が交通整理をしてくれていた。
もちろん一部の兵や騎士はティナを襲おうとするも、周囲の市民や兵士さん達によって捕まり、袋叩きになっている。
リンチにならないようにティナが声を掛けると、争いも止まりティナに命を救って貰った兵士らはバツの悪そうな顔をしていた。
……狙撃をするような兵相手は、容赦しなくても良いけどね。
そして僕達は多くの方々に見守られ、王城内へと入った。
門番さんは笑みを浮かべてティナを通してくれる。
なんと、門内では騎兵も礼儀良く並んで鉾槍を交差に掲げる。
騎士としての礼儀を持って、ティナを迎え入れてくれたのだった。
「これでは、私が露払いに先行した意味が無いですね」
「いえいえ、リヒャルト様。おかげで街中や城内で迷わずに済みましたわ。ありがとう存じます」
苦笑するリヒャルト様。
彼、僕達を大公様の元へ連行するという「名目」で城内を案内してくれている。
……まあ、周囲の苦笑に近い視線だと、リヒャルト様が僕達側なのはバレバレなのかねぇ。
◆ ◇ ◆ ◇
「お久しぶりですわね、大公様」
「ふん。ようもワシの前に顔を出せたモノよ、小娘」
尊大な表情でティナを玉座にて迎える大公様。
しかし、かなり汗ばんだ様子を見るに、見た目ほど余裕がある様にも思えない。
「あら、大公ジークベルト様ともあろう御方が、すっかり礼儀をお忘れかしら? 武装もしていないわたくしの様な少女相手にそこまで警戒をなさらないといけないのね」
「お、お前が出てこなければ孫は、陛下は死ぬことは無かったのだ! 全てはオマエが悪い。何を思ってここまで来たのだ? ワシ自らお前を殺す!」
玉座から立ち上がり、配下に持たせていた剣を抜く大公様。
まるでティナを怖がるかのように、鬼気迫る表情だ。
そして僕の背後の出口扉、そして窓や壁際。
全てに剣を今にも抜きそうな騎士が立ち並び、何かあれば僕らに飛び掛かる勢い。
……僕らが何も武器を持っていないと思って油断したね。控室で武器を預かる様に言われたけど、全部渡すはずないじゃん!
「あらあら。すっかり錯乱なさったご様子ですのね、大公様。お話を十分に聞かずに、わたくしの様な小娘に対し剣を抜きますか。残念ですわ。では、カイト」
「御意!」
僕は瞬間的に魔力を最大放出、身体強化をして幻影と共に大公様へと一気に踏み込む。
大公様は、突然の反撃に反応が遅れつつも僕に切りつけるが、残念。
それは幻影だ。
周囲の騎士らは、全く反応すら出来ていない。
「な、なにぃ!?」
僕は大公様の視界外に回り込む。
そして彼の持つ剣に、隠し持っていた高周波ナイフを叩きつけ、切り折った。
「者ども、こやつらを切り殺せ!」
やや遅れて執事さんらしい人が叫ぶが、遅い!
僕はバックダッシュでティナの側に戻りながら、拳銃を抜き天井へと撃つ。
パンという音で騎士達は一瞬動きが止まる。
また、レオンや姉さんらも隠していた拳銃を抜き、動き出そうとしていた騎士に突きつけた。
……もちろん術者達は、それぞれ攻撃魔法を展開しているんだけどね。
「動かないでくださいませ、大公様。それに皆様。わたくし、先程の様に襲われぬ限り、自ら武器を持つ事はありませんですの。落ち着いて武器を納めて下さいませんか?」
「ええ。皆様が武器を治めましたら、僕も大公様を狙っています銃を下ろします。ただ、もし襲ってくるのなら、どうなるのか……」
僕は、硬直した大公様に銃口を向けたまま周囲に呼びかける。
もし僕らを襲う気なら、容赦なく大公様を射殺すると。
「み、皆。一旦武器を納めよ。小娘、いやフローレンティナよ。お前は何を望んで、この場に来た? もしワシを殺す気なら、先程殺せたはず。なのに……」
「大公様、そんなのお話合いに決まってますわ。わたくし、帝国の皆さまを平和に導きたいのです!」
ティナは震える大公様に向かって、高らかに宣言をした。
平和の為に会談を行うと。
<カイト様。久方ぶりに戦闘がかっこよかったです!>
主人公ですもの、彼にも活躍の場も与えてあげないとね。
では、明日の更新をお楽しみに!




