第17話(累計 第62話) 僕、陛下と夕食を共にする。
「今日の園遊会でのエッカルトの顔。実に面白かったです。ボクも日頃から彼の父より言いがかりに近い苦言を頂いていますので、実にいいキミでした」
園遊会後、僕らは全員陛下主催の夕食会に呼ばれた。
といっても、こじんまりとした部屋で開催されていて、客は僕達「紅蓮」のみ。
給仕役もコレットさんだけだ。
陛下直属のコックさんが大皿料理を数点一気に持ってきて、一礼後そのまま退場していった。
「さあ、皆さん。一緒にご飯を食べましょう。給仕はコレットに任せて、皆さんはどうぞ。毒などありませんから、御安心を」
そういって、大皿からコレットさんにより小分けされた料理を早速食べる陛下。
僕はそんな欠食児童っぽい陛下を見て、くすりと笑ってしまう。
「あ、あのぉ……」
僕やティナは陛下と何回も個人的にお話しているので慣れているのだが、他の皆は皇帝陛下を前にしてガチガチ。
普段は礼儀なんてどうでも良いというレオンですら、固まった状態だ。
……まあ、それが普通の反応だよね。僕とティナの対応が普通じゃないだけだから。
「ああ、今日は無礼講。ボクはA級冒険者『紅蓮』の活躍を聞きたいから、皆さんをお呼びしました。ですので、お気になさらずに」
にっこり笑う陛下だが、本人からそう言われても気にしないはずも無し。
「もー。皆、固まっていたらせっかくの料理が覚めちゃうわ。陛下、頂きますね。あー、このお肉。ソースが絶品だわ!」
「そうそう。皆、食べちゃお」
ティナが率先して食べ始めたので、僕も一緒になって食べ始めた。
◆ ◇ ◆ ◇
「あの時はすっごくビビったさ、ゴブリン共に囲まれてもう死ぬって。でもな、そんな時にカイトが壁をぶち破って助けにきてくれたんだ」
「ゴブリンは強くないとは聞きますが、数で押されると怖いんですね、レオンお兄さま」
<あの際はワタクシが坑道の情報を調べて、レオン様を助けるのに最適な経路を指示させて頂きました。えっへん>
レオン、お酒が入ったからか饒舌になり、陛下にも話しかける。
陛下も冒険譚を聞くのが楽しいようで、とても表情が嬉しそうだ。
……ルークスも自分の能力を陛下にアピールしちゃうのが困ったねぇ。
「陛下は、いつもどのようにお食事をなさっていらっしゃるですか?」
「普段は冷え切った料理を一人で食べています。毒味だ、規則だ、身分違いだとうるさいですし。今日は、皆さんと一緒に食事が出来てとても楽しいです! ボク、グローアお姉さまの武勇伝もお聞きしたいです」
陛下は姉さんの話を目をキラキラさせ、年相応の可愛い顔で真剣に聞いている。
姉さんも、とても楽しそうだ。
……姉さんって子供好きだものね。姉さんにも良い人が早くできてお子さん産んで欲しいなぁ。
「あたし、『不幸』が随分遠ざかったのかな? 陛下とお食事をご一緒できるなんて光栄なの」
「ネリーお姉ちゃん、そうだよね。あたしも大出世しちゃった。今度兄弟や両親に自慢話出来るの!」
向こうではネリーとマルテが気分よく話してる。
比較的年齢が近くて苦労人の二人。
意気投合する事もあるのだろう。
「そういえば、ティナお姉さま。新シェレンベルク伯爵はどうでしたか?」
「それが普通、いやわたしがテオバルト様を追い出したのを喜んでいらっしゃったんです」
……僕もびっくりしたんだよね。てっきり、エッカルト様と同じ様な対応をしてくるかと思ったんだけどね。
◆ ◇ ◆ ◇
「パンフィリア女男爵様。お初にお目にかかります。私、新たにシェレンベルク伯爵になりました【リヒャルト】と申します」
園遊会に参加中の僕とティナ。
僕達を襲撃してきたエッカルトに大きな「釘」を刺して彼から離れた時、細身の優男が接触してきた。
それがティナを妾にしようとして僕達を苦しめたテオバルトの息子だった。
「は、はい。わ、わたくしの事は既にご存じなのですね、リヒャルト様。ですが、正式にご挨拶を致しますの」
いきなり想定外の人物から挨拶をされたので焦るティナ。
僕も一瞬硬直してしまうが、僕よりも早くお貴族令嬢モードに復帰するティナ。
ここは流石である。
「わたくし、パンフィリア女男爵フローレンティナ・デル・アイレンベルクと申します。お父様にはお世話になりました」
「いえいえ。フローレンティナ様やそちらにいらっしゃる婚約者様、確かカイト様でしたっけ? 父がお二人に多大なご迷惑をお掛けしまして申し訳ありません」
丁重に頭を下げ、ティナと僕に謝ってくるリヒャルト。
父親とは似ても似つかぬ美青年、淡い茶色の髪と灰色な瞳で柔和そうなイメージも感じる。
その様子にテオバルトを良く知るネリーが手を口に当てて驚きの顔をしていた。
……リヒャルト様ってお母様似なのかな?
「え、えっとぉ。わたくし、お父様、テオバルト様を糾弾して爵位を奪ってしまったのですが?」
「その事はお気になさらずに。エドモンという魔神の囁きに耳を貸したのもありますが、父はあまりに多くの罪を犯しました。伯父や祖父、更には母の親族。全て父が殺したのですから」
リヒャルト様は僕らに対してすまなそうな顔で自分の父親の罪を語る。
その目には嘘を言っている様な感じは見られない。
……これは本気でティナに謝ってくれているんだろうか?
「ですが、わたくしがご家族を壊してしまったのも事実。申し訳……」
「もう謝らなくても良いんですよ、フローレンティナ様。元々、我が家は冷え切った家庭でした。また私は幼い頃から家から離され、寄宿舎のある貴族学校で生活していました。学校卒業後も家には帰らず、城で働いていました」
どうやらリヒャルト様自身、父親とは確執らしき物があった様で、家族一緒に暮らせなかった様だ。
……あの奥様なら、息子を守る為にテオバルトから引き離しててもおかしく無いね。
僕は貴族社会の闇をまた見てしまったことに気がついた。
<敵と味方が見えてみましたね。さて、今後どう対処致しましょうか?>
では、明日の更新をお楽しみに!




