第16話(累計 第61話) ティナ、襲撃してきた貴族を虐め返す。
「あら、エッカルト様。先日は晩さん会にお招き頂き、ありがとう存じました」
「あ、ああ。フローレンティナ様におかれましてはご健勝の事でよ、喜ばしい事です」
皇帝陛下主催の園遊会。
城内にある広大な庭園が会場になっている。
ところどころに丸机が置かれてあり、そこにビュッフェ形式に料理が並べられている。
今日もティナは、頑張ってお貴族お姫様モード。
そして会場内に居たフィエル伯爵家長男エッカルト様を見つけて挨拶をした。
……実は暗殺者からの襲撃後、陛下にお会いして園遊会に招待されたんだ。
急にティナから挨拶されたものだから、エッカルト様は焦り気味。
こちらを襲撃したはずの者達が誰も生きて帰らない上に、何も噂やら追及が来ないので内心ビクビクものだっただろう。
そこにティナの「ジャブ」。
実に効果的な攻撃に違いあるまい。
<ティナ様、ファーストアタックに成功ですね>
僕はティナの側で表情を崩さないようにするが、背後のお付き役なマルテやネリーは笑わないようにするのに必死だった。
……今回、僕も正式に園遊会に呼ばれたから、マルテにお付きをお願いしたんだ。ティナのお付きは、いつも通りにネリー。
◆ ◇ ◆ ◇
「ティナお姉さま、カイトお兄さま。今度、ボクが主催する園遊会に来てくださいませんか? で、終わったら夕食も一緒にしたいです。その後も出来ればゆっくりお話したいです。冒険者のお仲間達も夕食会には全員ご招待しますね」
「はい、喜んで。カイト、良いよね」
「うん、ティナ。陛下、喜んで拝命致します。そこで、陛下にご相談したいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
僕とティナは園遊会参加を即答した。
陛下直々のお誘いという事もあるし、敵を動かす策にも使えるからだ。
僕は陛下に相談事があるとお願いしてみた。
「ええ、お兄さま。一体何ですか?」
「実は……」
僕は、ティナに起こった襲撃事件の事を陛下に話した。
「そうですか。お姉さまは色んな方に嫌がらせを受けているんですね。しかし、逆恨みで命まで狙われるのは大変です。襲った者が何処の手の者かの証拠はありますか?」
「仕手は数名生かして確保できました。後は使用していた幌馬車と兵士が使用していた武具に『とある』方の紋章がありました」
「もー、わたくしとカイトの恋路を邪魔する馬鹿は馬に蹴られちゃえば良いの!」
僕は誰が襲ってきたとかは言わずに、襲われた事実だけを話す。
ティナは、お怒りぷんぷんモードで話すので陛下だけでなく、話せないはずのコレットさんも笑っていた。
「分かりました。では、今度の園遊会に『とある』方も呼びましょうね。これは楽しい事になりそうです」
「陛下、宜しくお願い致します」
「陛下、ありがとう存じますわ。わたくし、精一杯嫌味攻撃しちゃいますね」
陛下、年相応ないたずらっ子の表情で僕の案に乗ってくれた。
◆ ◇ ◆ ◇
「そ、それでだな……」
「はい、エッカルト様。何でしょうか?」
今日は純白のローブ・モンタントに身を包むティナ。
気品と清楚さあふれる衣装に負けていないティナの美貌。
今日はイタズラっぽい表情を浮かべて、長身なエッカルト様を上目使いで見る。
「あ、あのぉ。何か変わった事は無かったですか?」
「そうですねぇ。フィエル伯爵様の晩さん会からの帰り道で……」
ティナが思わせぶりな事を言うので、エッカルト様がティナの言動に注目する。
「帰り道で何かありましたか?」
「わたくし、寝ていましたのでよく覚えていないですわ、おほほ」
ティナがボケかますので、エッカルト様はずっこけるようにバランスを崩した。
……僕は辛抱できたけど、マルテやネリーは辛抱しきれずに爆笑しちゃったよ。
<ティナ様、意図したボケ役も出来るのですね。普段も天然ボケっぽいですが>
ツッコミ役のルークスが言うように、ティナは天然ボケタイプ。
今回もエッカルト様には、存分に精神ダメージを与えた事だろう。
「ただ、わたくしが寝ています間にわたくしの乗る馬車が何者かに襲撃を受けましたの。ですが、わたくしが目を覚ました後はすべてが終わっていましたわ」
「終わってたとは?」
「わたくし、現場は見ていませんがあっという間に倒されたそうです。全員死んでいたそうで、何も証拠が見つからなかったと聞いてますわ」
「そ、そうでしたか……」
ティナから襲撃者の正体が分からないと言われて安心したエッカルト様。
「ですが、エッカルト様。もう、『お痛』は辞めましょうね。おほほ。では、またお会いしましょう」
「う!」
しかし、トドメを刺すティナ。
そして令嬢らしい笑みを浮かべながら、固まったままのエッカルト様から離れていく。
<ティナ様、やりますねぇ。お見事です>
「ティナ、ちょっと待って!」
僕らは急いでティナの後をついていった。
「ティナ、勝負に出ちゃったんだね」
「うふふ。わたしを怒らせたら怖いわよ」
そんな事を話していると、細身な青年がにこやかな顔で僕達に近づいてきた。
「パンフィリア女男爵様。お初にお目にかかります。私、新たにシェレンベルク伯爵になりましたリヒャルトと申します」
……彼がテオバルトの息子か?
僕はリヒャルト様の顔を見つつ、そっと懐の拳銃の安全装置を解除した。
<次々と敵が出てきますね。油断ならないです>
明日の更新を楽しみにね。




