第1話(累計 第46話) 僕、女男爵なティナの婚約者になる。
「ねぇねぇ、カイトぉ。お願いがあるのぉ」
「フロ―レンティナ様。今は公務中でございます。私的なお話は仕事後でお願い致します」
先日、秋遅い頃にティナは誕生日を迎え十五歳、この世界での成人となった。
同時に王家より男爵位の爵位を貰った。
ティナ自身、面倒くさいと言っていた。
しかし夜になり、天国の両親へ向かって
「アイレンベルク家が復活したよ」
と、うれし涙を零しながら呟くのを、僕はベットの中で聞いた。
……まだ、ティナに下腹部に彫られた呪詛『淫紋』は解呪できていないんだよねぇ。
そんなこんなで、僕の『蛇の生殺し』は今も続いている。
最近は状況にも慣れたので、僕も抱き枕としてティナを抱っこしてるけれども。
王立大学でも魔神が作った呪詛ということで、ティナの呪詛は研究対象になっている。
興味深いと何人もの高位魔法研究家がルークスに記録されていた映像やら実際のティナに彫られた紋章を見て、ワイワイしていた。
……当の本人なティナは、とても恥ずかしがっていたけどね。
という訳で、それ以降ティナは急いで呪詛を解除しようとせず、今日まで放置されている訳だ。
実際、生活する上で僕さえ「辛抱」すれば何の問題も発生しないのだから。
ぐすん。
「だってぇ。今日は身内、『紅蓮』のメンバーしか部屋に居ないのよ? いつも通り甘えたって良いじゃないのぉ。ね、レオンお兄様、マルテお姉様?」
「一応、公私混同はしないことにしてますが、パンフィリア女男爵様?」
<カイト様、今回は宜しいのでは無いですか? これ以上ティナ様が困るとカイト様にも問題が降りかかりますよ?>
「カイト、いいじゃないか。ルークスも言っている事だし、ティナちゃんの頼みくらい聞いてやっても?」
「レオン、貴方も筆頭騎士に任命されたんだから、ちゃんとしないとティナちゃんに迷惑かけるのよ? あ、あたしもティナちゃんって言っちゃった」
僕達は、新たに入手した屋敷の執務室に居る。
今日は珍しく訪問客も無いので、ティナも僕らに甘えている訳だ。
「カイトぉ。カイトぉ。お願いなのぉ」
ティナは、上目遣いに僕を涙目で見上げてくる。
美少女の憂い顔とお願い、これを無視できる男はまずは居まい。
「はぁ。ティナ、それで一体何を僕に頼みたいの?」
僕はため息ひとつついて、表情を事務的なものから恋人の者に替えた。
「あのね、あのね、カイト。この間、領内を見て回った時に町長さんから相談をされた事なの」
「街に居座る冒険者の事だよね。一度野盗を追い払ってから、我が物顔で居座っている」
冒険者にも、色々な奴らが居る。
街の便利屋として活躍する人たち。
レオンの様に英雄を目指す、乱暴だけど人々を守る気持ちのいい奴ら。
魔物からの素材や迷宮内に存在する遺物を求めるトレージャーハンター。
そして、ただ単に名声を求めている奴ら。
「ええ。彼らの所業は目に余るから、なんとかならないかって話なの。酒場に居座ってお金を支払わないとか、街の人達に難癖つけているらしいの」
「その件は、以前も僕がレオンと一緒に彼らに忠告に行ってきたけれど?」
「まあ、俺らが言っても言う事を聞きそうもなかったんだけどな。あれでもパーティリーダーは伯爵様の次男坊、他の奴らも貴族子息ばかりって話だし」
冒険者には、貴族子息も多い。
元より戦乱で成り上がったり、武勲を上げたものが貴族に任命されてきた歴史がある。
なので、貴族には先祖由来の戦闘系で強いスキル持ちが多い。
遺伝されてきたスキルが強ければ、本人は強いと思い込むのだ。
「お兄様が家督を取るから次男さん以降が冒険者となって、新たなる武勲を得ようと思っているのかしら? 政変以降は周辺国も大人しいですから戦争も起きないですし。でも、傲慢な行動は貴族としてどうかと思いますの、わたし!」
「おそらく大公様は周辺国の支援を受けているから、しばらくは戦争は起きないと思うよ、ティナ。それに、この辺りは先だってまでは天領、王家直轄地だっただけに管理もいい加減だったからね」
<大公の手足になった皇帝家は、最早傀儡ですものね。帝都の管理でやっとでしょう>
天領と言えば聞こえはいいが、政変で力を失っている皇帝家には領地を満足に管理する力も無い。
ティナが男爵とはいえ爵位と領地も貰ったのも、民衆受けと面倒な土地を手放せるという思惑が大公派にはあったに違いない。
「ね、カイト。だからぁ、わたし。その冒険者をなんとかしたいの。これ以上領民が泣くのは領主になったわたしの問題でもあるし。皆、わたしが守るべき人々なんだから!」
立派な胸を前に張り出し、エッヘンとドヤ顔のティナ。
可愛いけど、無理をしていないかと僕は心配にもなる。
……ティナのお父様は立派な方で、領民を守るために命を張るような人だったもの。そんなお父様の姿を見ているから、ティナは立派な貴族になろうと思っているんだね。
「ティナ。僕じゃないけど、一人であんまり背負いすぎないでね。一番大事なのはティナなんだから。さて、これは僕も動かなきゃだね。ここは僻地だけど、僕にとっては美味しい土地だし」
「だな、カイト。ティナちゃんが望むのであれば、筆頭騎士たる俺様が動くときさ!」
「もー、レオンってばカッコつけても遅いよ。ティナちゃん、マルテお姉ちゃんに任せてね!」
「ん!」
「はぁ。皆様、くれぐれも厄介事は増やさないで下さいね。あたし、もう『不幸』になりたくないですから」
皆がやる気を出す中、テンションが一人低いネリー。
彼女はハウスキーパーにはなったものの屋敷は辺鄙で小さいし、仕える人もパーティメンバーだけで他のメイドも居ない。
その上、厄介事を持ってきそうなティナに困っている。
……領地を見回った時に困った人を見たらティナが飛び出しては色々しちゃうから、僕だけでなくネリーも困っていたんだ。ただでさえ、ティナはお貴族様なのに自分の事は自分で出来る上に、僕のご飯とか作りたがっちゃうし。それに屋敷は普通じゃないからねぇ。
「ありがとう、皆。じゃあ、わたし、世直ししちゃうよー!」
僕は心配すると共にドキドキする。
可愛いティナが、また何かをやらかしそうな気がするから。
<ティナ様とカイト様の物語が再開致しました。皆様、更なる応援を宜しくお願い致します>
と、ルークス君が申しておりますが、今後ともよろしくお願い致します。
<ブックマーク、評価、感想、レビューなど頂けると嬉しいです>
「ファンアートはもっと嬉しいのじゃ! ワシ、魔神将チエのも頂戴なのじゃ! ティナ殿のでも良いのじゃ!」
また煩い子達が宣伝し始めましたので、また明日の更新でお会いしましょう!




