第45話 僕、ティナと幸せになる!
「ねぇ、カイトぉ」
「どうしたの、ティナ。まだ、この後も会議や面会が有るんだけど?」
今日も今日とて、ティナは僕に甘える。
お借りしたままの鍛冶神神殿の面会室、ソファーに座っていたティナは背後に立っていた僕を見上げて、可愛い顔で不満を言う。
「だってぇ。貴族のお話なんて面倒くさいだけなんですもの。わたしの家族を皆殺しにしてお家御取り潰しにしたのに、今更わたしを貴族に迎えようって言うのよ?」
「ティナは、今や民衆に大人気の姫様だものね。大公様もティナの人気にはあやかりたいんでしょ? まあ、大公様が敵に回るよりは良いんじゃない? 可愛い僕のお嫁さん、ティナが皆に人気なのは僕も嬉しいよ」
「お、お嫁さん!? わ、わたし……。だーいすき、カイトぉ!」
ティナはソファーから振り返りながら立ち上がり、僕に抱きつく。
僕もティナを抱き返して甘やかす。
ティナのおかげで今、僕は幸せだ。
上級魔神エドモンの討伐、それは大公派閥として無視できないティナの実績となった。
自らの派閥内に巣くっていた魔神を倒してくれたという表向きの理由。
更に僕という幼馴染との恋を選んだという恋愛話、庶民受けがとても良いらしい。
これらを総合して話題沸騰、大人気の姫ティナを大公派は放置できなくなったらしい。
今更になってティナが成人後、女男爵の爵位を与えるという話になっている。
「とにかく、今後大公様と一戦やって革命を起こすにしても、貴族社会の中から変えていくにしても、爵位は無駄にはならないと思うよ。それに大公様も僕とティナの婚約については文句は言っていないから、大公様の動きに今は乗っておくほうが良いと僕も思うんだ。その方がティナの身も安全だしね」
「カイトも、わたしの事をちゃんと考えてくれているのね。わたし、カイトのお嫁さんになれるなら何でも良いけど、カイトのお母様と妹さんにはちゃんとご挨拶したいから、カイトが地球に帰られるように頑張るね」
<そうですね。とりあえず、ワタクシの能力も今後十年程度は現状を維持できますので、その間に決着を付けるのをお勧めします。ワタクシがいなくなれば、通信や情報支援が出来ないでしょうし>
僕が最大限戦えるのはルークスが使える間、どうしても時間制限はある。
「あら、ルークスはずっとわたし達と一緒じゃないの?」
「悲しいけどルークスにも寿命があるんだよ、ティナ。僕のやりたいことにはティナとの結婚はもちろん、地球に帰る他にもルークスの寿命を延ばすというのもあるんだ。地球とかつて繋がっていた『門』は、ルークスの本体があるのと同じ遺跡だしね」
<お二人にご心配頂き、ワタクシ嬉しいです。ワタクシの本体は王都の地下。メンテは政変後、八年前より行われておりません。また位置把握や通信に使う人工衛星の寿命は、推進剤残量からして残り十五年もありません。ワタクシ本体の電源である小型モジュール炉も寿命は二十年も残っていないでしょう。ですが、ワタクシが動く間はお二人を最大限バックアップしますね>
ルークスの本体、そこは王都にある地下遺跡の中。
地球と繋がっていた「異世界門」の主機も、その遺跡内にある。
子機な門が他にも数機あって、物流とかはそちらで行われていた。
大公によって門は全て破壊されたとも聞くが、もし一部でも機能が残っていれば地球と通信くらいは可能かもしれない。
生き別れた母や妹と連絡をしたいというのも、僕の望みだ。
「大公様が一番に押さえた遺跡にルークスがいるのね。でも、大公様はルークスを壊さなかったのね? どうしてかしら?」
<そこはワタクシにも不明です。ともあれ、今は大公様のお考えに乗りましょう。向こうがティナ様人気を利用するのなら、こちらも大公様の意向は最大限利用しても良いのです>
「そだね、ルークス。ということで、これからも一緒に頑張ろうね、ティナ」
「うん、カイト」
僕達は抱きしめ合って、キスをした。
<御馳走様です、ティナ様、カイト様。ああ、ワタクシ、砂糖を吐く機能が欲しくなりますです!>
◆ ◇ ◆ ◇
大公派閥との話し合いがひとまず終わった後、僕とティナはグローア姉さんのご両親や仲間達を集めて礼をした。
「皆様、わたくしにこれまでご協力頂き、ありがとう存じます」
「僕達の為に危ない橋まで渡って頂き感謝しています」
「おいおい、ティナちゃん。今更お貴族様してどうするんだい? もう俺達は一連托生、チーム『紅蓮』さ。これからもカイトやティナちゃんは俺の仲間だぜ!」
「んもぉ。レオンの馬鹿ぁ。ティナちゃん、努力して貴族令嬢としてお礼を言ってくれたんだから、ちゃんと騎士として受け止めてあげなきゃダメじゃん!」
「ん!」
ティナ、正式に女男爵となることを決めた。
僕も、女男爵の婚約者として大公からも認められた。
また、仲間達もティナの願いから全員、女男爵フローレンティナ・デル・アイレンベルクに仕える事になった。
公的にはレオンは筆頭騎士、マルテはお抱え魔術師、ヴィリバルトもお抱え神官だ。
……グローア姉さんは、ティナが貰うであろう領地に新しく神殿を立てたいそうだし、トビアスは泣く泣く学都に帰る事になったんだ。
「と言いましても、わたくし。いえ、わたしは偉そうに皆様を配下としてみる気は無いの。わたしはただの小娘、公の場以外では今まで通り若輩者、冒険者仲間としてご鞭撻お願いしますね、お兄様、お姉様」
「いつ聞いてもお兄様の響きが良いな」
「でしょ、レオン。あたしもお姉様って呼んでもらえて嬉しいな」
「ん、ん」
ティナ、先程までは貴族らしい笑みでカテーシで皆に礼をしていたけれど、顔を上げてからは年相応の可愛い笑顔になって小首をかしげながら皆に今後の事を頼んだ。
……うわぁ、可愛いよぉ。ティナ!
「くぅぅ。ティナ様。ボクは必ず学都で偉くなってティナ様の元で働きます! 是非とも、もう一席は魔術師の席を開けておいてくださいませ」
「はいはい。トビアスは先生の元で頑張ってね。またティナちゃんと一緒に冒険に行くときは呼んであげるから」
そんな可愛いティナから離れるのを悔しがるトビアス。
慰める姉弟子なマルテだが、しょうがないからティナとも相談して今後も何かあれば彼も呼んであげる事にしている。
……僕やルークスも、高機動車を動くように直した事から学都の大学からお呼びが掛かっているんだ。時々で良いから機械関係や科学技術に関して説明して欲しいんだって。それにティナの呪いの解析はまだまだ途中だし。
ティナの呪いは、現在大学でも研究中。
まだ今しばらく僕は「蛇の生殺し」を味わう訳だ。
「はぁ。あたし、結局『不幸』から逃げられないのねぇ」
「そうかしら、ネリーお姉様。ハウスキーパーとして今後もお願いしますね」
「ふん! お給金、たくさん宜しくてよ」
テオバルトが失脚、シェレンベルク伯爵家が崩壊して、仕事先を失ったネリー。
彼女と仲良くなっていたティナは、彼女を筆頭メイド、ハウスキーパーとして雇った。
今後ティナが屋敷を得たのなら、ネリーはそこでメイドたちの長として頑張ってもらう予定だ。
「ははは! これで一見落着だね。坊や、でもこれからが大変だよ? ティナちゃんを公私ともに守らなきゃなだしね。アタシらを頼っても良いから、もうケンカなんかするんじゃないぞ」
<そうですよね、グローア様。ワタクシも困るなら、砂糖を吐くくらい甘い雰囲気の方が大好きです!>
「はい、僕は絶対にティナと一緒に幸せになります!」
「もちろんなの。わたし、ぜーったいにカイトのお嫁さんになります! ちゅ!」
油断していたのも悪いが、僕はいきなりティナに抱きつかれキスシーンを皆の前でしてしまった。
「あらあら。今の若い子は大胆ですね、貴方」
「そうだね、母さん。グローア、お前も早く旦那捕まえて、私たちに孫の顔を見せて欲しいな」
「……考えておくよ。はぁ、アタシも頑張って良い人見つけようかねぇ」
……巻き込んでごめんね、姉さん。
◆ ◇ ◆ ◇
「【パイモン】、これは面白くなってきたよ。しかし、キミと同類がまだコチラに残っていたなんてね」
<ルークスとやら。おそらくですが、ワタクシと同じ量子計算機筐体内の別AIでは無いかと。こちらから干渉も出来ませんが、同じデーターベースを使っている様なログが確認できます>
質素ながら品の良い部屋の中、長方形の鏡に話しかける黒髪の青年がいる。
彼はLEDランプの灯りの下、大公への報告書に書かれたティナやカイト、そしてルークスについての記述を興味深く見ている。
「そうかい。じゃあ、大公様にお願いして破壊することも出来ないね。でも、ボクの願いを叶えるのを邪魔をするなら容赦はしないよ、坊や達」
<では、今後とも監視をしておきます、【マスター】>
「頼むよ、パイモン。大公様や魔神達を裏から操り、世界の破滅をボクは望む。その為に地球からの介入を止めたんだからね。さあ、次はどう動こうかな?」
青年は薄暗い部屋の中、闇のような笑みを浮かべた。
(第一章 完)
<作者様。最後の彼らは何ですか!? ワタクシ、気になりますです!>
えっとね、ルークス君。
第四の壁を越えて本来知らない事を知るのは違反だぞ。
「そうなのじゃが、先が気になるのじゃ! そこは理解するのじゃ、ルークス殿」
<チエ様、流石は先輩でございます>
もー、君たちは勝手にここで話し合わないでよぉ。
<ということで、ここにてカイト様とティナ様のお話、第一章はお終いです。続きを早く書いてもらえるよう、チエ様と一緒に作者様を脅迫しますので、しばし再開をおまちくださいませ>
ちょ、君達。
何するの……、いやーん!
<では、ブックマークや評価、感想を楽しみにしていますです>
「ばいらななのじゃ! 次に会うのを楽しみにしておるのじゃ!」




