第39話 僕、本気で戦う!
「オラオラ! 逃げないと轢いちゃうぞー」
僕は高機動車、4WDのオートマ大型ディゼール車を運転する。
この自動車は、元々は自衛隊の備品、政変時に異世界に放棄されていた物。
それが学都カールスブルグの王立大学に研究材料として保管されていたが、八年も放置されればバッテリーも上がっている上にエンジンオイル等も固化していて動かなくなっていた。
「坊や、あんたはこういうものを使えたんだ?」
「いえ、姉さん。僕は運転免許も無いですし、自動車整備の技術も無いですよ? ルークスに教えてもらっただけですからね。さあ、突っ込みます」
……バッテリーは、中の硫酸入れ替えて魔法で充電。エンジンオイルとかはこっちで入手出来て代用できるヒマシ油を使ったんだ。燃料はオリーブ油をアルカリ処理したバイオディーゼル。こういうのは僕だけじゃ何も分からなかったから、ルークスが居なきゃ無理だったよ。
幼少期に遊んでいたドライブゲームのノリで運転をする僕。
パンツァーファーストの爆発で倒れた兵士を避けつつ、巻き上げられなくなった城門を強引に乗り越えた。
館の敷地内に突っ込んでから、僕は車体横に設置したスモークディスチャージャ―を起動、周囲に白リン煙幕弾をまき散らした。
「さあ、煙幕が効いている間に、降りて戦いますよ、姉さん。僕らの役目は『客引き』ですので、お忘れなく」
「あいよ、カイト。アタシ、銃撃つの始めてだけど、適当でいいんだよね」
「はい、姉さんが持っているのは軽機関銃。弾ばらまく奴なので、照準は適当で。ただ、当たったら相手は確実に死にますから、普通の兵士さんには適当に外して撃って脅しと牽制で宜しくです。もちろん僕には、当たったら痛いから当てないでくださいね」
僕は、姉さんに冗談半分に説明しながら姉さんのと同じ.223口径NATO弾を使う自動小銃に銃剣を付けたものを座席から持ち出した。
「さあ、行きますよ、姉さん!」
「あいよ、坊や」
白煙で満たされた中、僕と姉さんは戦場に飛び出した。
◆ ◇ ◆ ◇
僕達は困惑していた門番とかを殴り飛ばして、領主館に踏み込んだ。
豪華な扉を蹴り破って玄関ホールに入ると、そこには多数の騎士、兵士が待ち構えていた。
……マスケット銃を持つ兵士さんはいるけど、弓矢は無し。魔術師らしい人も近くには居ないかな? なら、先手で脅せば安全になりそう。
「一応、警告はしますね。僕は領主様とフローレンティナ様のご結婚に異議ある者として参上しました。領主様やご家族を害する気はございません。ここを通して頂けますか? さもないと実力行使を致します」
僕は自動小銃の引き金から指を外し、銃口を上に向けてから平和的話し合いを提案した。
無益な殺し合いは、出来るだけやりたくないからだ。
……一応、プラン通りならテオバルトは生かしたままの予定なんだ。アイツには死ぬよりも惨めに生きる方が罰になりそうだし。
「そんな事、誰が信じる!? 本日はテオバルト様の大事な結婚の日。オマエのようなガキの言うことなど信じられるか!? モノども、コイツらが動いたら撃て。騎士はスキル発動だ!」
しかし、騎士団の偉いさんらしい人が僕達を睨み、配下の兵士さん達に銃撃とスキル使用を命じる。
そして沢山の銃口が僕と姉さんに向かってきた。
騎士の人達も、スキルなのか剣や身体をオーラで光らせる。
「はぁ。フュルヒテゴットさんが言ってたけど、騎士団の中にも執事の配下が居るってのは、この事かな。残念だけど殺し合いをしよう。姉さん!」
「はいな!」
僕は合図をする。
説得と挑発をしている間、姉さんは神聖防御魔法を詠唱。
ちょうど、敵の銃口が向かってきたときに魔法は完成していた。
「ごめんね。僕は警告したから!」
僕は、容赦なく銃口を騎士団の偉い人に向ける。
その瞬間、兵士達の銃が火を噴くも、姉さんによる角度、被弾経始を付けて形成された魔法障壁によって弾は僕達へと向かわずに反らされていく。
……いくら魔法によるバリアー、弓矢や魔力弾相手なら無敵でも、銃弾相手はきついからね。なので、逸らさせて弾く様にルークスが姉さんに頼んだんだ。この手の知識はルークス、様々だよ。
<さすがはグローア様。ワタクシが授けた理論を見事に実践してくれてます>
「『賢い箱』は、色々と役に立つからね。さて、アタシらも撃つよ」
「……うん」
逆に僕と姉さんの銃が火を噴き、障壁には影響されず弾丸は音よりも早く飛翔、騎士や兵士の身体に真紅の華をいくつも咲かせた。
「ぐわぁ」
「なにぃ、連発銃だとぉ。あれはチキューの武器だ!」
僕達の銃口から弾が飛び出すたびに、バタバタと兵士らが倒れていく。
スキル発動した重装甲の騎士も、銃弾には敵わずに撃ち殺される。
また奥から魔法弾を撃ってくる魔術師もいたので、僕は狙撃して撃ち殺した。
五メートル程離れたところに居る、騎士の持つ盾や柱の陰から撃ってくる兵士の集団がいたので、僕はそこに攻撃手榴弾を放り込んだ。
ドカンという鈍い爆発音と共に吹き飛ぶ騎士や兵士達。
圧倒的な鉄の雨、科学の暴力の前では、個人の持つ「スキル」など何も役に立たない。
「に、逃げろー!」
「魔術師も勝てないのか!?」
「こいつら、バケモンだぁ!」
「し、死にたくないよぉ」
爆発が起きた後、兵士や騎士達はすっかり戦意を失い、パニックして逃走していく。
僕は自動小銃を下ろし、逃げ惑う彼らを見逃した。
「ふぅ。姉さん、前に進みますか?」
「坊や、大丈夫かい? 顔が真っ青だぞ。随分と撃ち殺しちまったからかい?」
大きくため息をついた僕が声を掛けると、姉さんは逆に心配そうな顔をして僕に話しかけてくれた。
「正直、大丈夫じゃないです。でも、ティナを救うために僕は覚悟をしました。敵対してくるなら容赦はしないと……」
「そんなに青い顔で言う台詞じゃないよ、坊や。でも、おそらくここから先は只の兵士や騎士は来ないさ。この状況を知っちまえばね」
姉さんの視線の先、玄関ホールは壁が弾痕まみれになり、床には多くの兵士や騎士らが倒れ、血の海が広がっていた。
……く! 自分がやった結果から目を逸らすな!
僕は喉元まで胃液が上がってくるのを感じながらも、空になった小銃の30連マガジンを交換しつつ、心配させないように笑顔で姉さんに答える。
「それを心から望みますね。じゃあ滑らないようにして先に行きましょう、姉さん。ティナが待っている」
「あいよ!」
僕と姉さんは無人な血の海を踏み越え、ティナがいるであろう大広間、宴会場へと足を進めた。
<ミリタリーネタが多い話ですね。ですが、これらを使いこなせるのもカイト様の実力でございます>
いずれ、コラムや活動報告あたりで私が書いた一連作品に出てきた銃火器などの説明をしますね。
では、明日正午の更新をお楽しみにです。




