第24話 僕、ティナに慰められる。
「じゃあ、僕は先に部屋に帰ってますね」
僕は、殺人の感覚に怯えているのを仲間達に心配させたくないので、先に一人宿屋二階へと上がる。
「カイト、ちょっと待って! お姉さま。今日は、わたしカイトと寝るからごめんね」
「え、ちょ。他の皆が困るんだけどぉ」
「今日は、良いのぉ! レオンお兄様、ヴィリバルトお兄様。今晩はカイト借りますね」
僕の腕に自分の腕を絡ませ、豊満な胸まで押し付けて問答無用に二階へと引っ張るティナ。
僕は何も言えずに、そのまま引っ張られていった。
「お兄様……。うん、実に良い響きだねぇ」
「ん!」
「ティナちゃん、ガンバ!」
「今日は、坊やをゆっくり癒してやりな」
「ふん! 若いって良いわねぇ」
仲間達からの声援を受けて、僕はティナの寝ている部屋に引っ張られていった。
◆ ◇ ◆ ◇
「あの……」
「カイト、無理しちゃってるでしょ? さっき手が震えているの見ちゃったの」
薄明かりな部屋、またまた僕はティナに抱きしめられて、共にベットの中に居る。
……ティナにもバレちゃっていたか。グローア姉さんにはバレてたけど、もしかして他の皆にも気が付かれていたのかな?
「……ティナにも分かっちゃったか。僕、人を殺すのに中々慣れないんだ。殺した人達にも家族がいるとか思っちゃうと……」
「もー、カイトはお人好し過ぎるのよぉ。向こうは問答無用でこちらを殺しに来ているの。殺しに来ているんだから、殺される覚悟は向こうにもあるはずよ?」
色んな作品に引用されている有名な作家の方の作品に「撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ」という言葉がある。
その通りだとは思うけれども、簡単に心を整理、納得出来るモノでもない。
<アメリカはレイモンド・チャンドラー様の作品主人公『フィリップ・マーロー』様の御言葉に似ていますね。原文の意味では技量が足らないと危険だから撃つなという意味でしたが、日本御翻訳版では覚悟の問題になってます>
……こういうウンチク突っ込み、ルークスは好きだよねぇ。
「ふーん。地球でも同じなんだ。それより、わたしはカイトが生きてくれている方が良いの。悩んで弱っているカイトも可愛いけど、カッコいいカイトの方がもっと好きよ!」
「ティナ……。そうだよね、僕は死ぬわけにはいかないし、それ以上にティナを傷つける奴らは許せないもの」
ティナは僕を包むように抱きしめてくれ、頬にキスをしてくれる。
僕もお返しにティナをギュっと抱きしめ返した。
「カイト、まだ手震えてる?」
「ん? もう大丈夫だよ。ティナのおかげでね」
柔らかくて触り心地の良いティナを抱きしめられたので、僕の心の中は落ち着いている。
更に、どこか甘いティナの香りが僕を暖かく包んでくれてる。
「じゃあ色んなところ触って良いよ、カイト。今日は特別に許してあげるね!」
「あのねぇ。本番できないのに触っても困るだけなんだけど?」
僕が落ち着いたのを確認して、ティナがまた調子に乗り出す。
僕に豊かな胸を押し付けつつ、蠱惑的な笑みを浮かべるティナ。
「確か男の子は、アレ出さなきゃ終わらないんだったっけ? わたしの『中』にはお誘い出来ないけど、大好きなカイトのなら手とか口でも……、きゃん、痛い!」
「調子に乗り過ぎだよ、ティナ! 君は本来なら公爵令嬢。僕じゃ触るどころか近づくのも難しい高貴な身分なんだよ?」
<ティナ様、あまりに露骨でございます。こちらはR15範囲まででございますので>
男の性的生理状況を知っていながらも、僕を誘うティナ。
僕が大好きなのは理解しているけど、無理してもらう意味は何も無い。
僕はティナを汚してしまう事はしたくないし、全部ちゃんとしてから、呪いを完全に解いてからティナと一緒になりたい。
なので、僕はティナの頭に軽く拳骨を落とす。
……ルークスは謎な事いっているけど、確かにR18な事は呪いがあるからやっちゃダメだものね。
「むぅぅ。わたし、面倒なだけの貴族なんてもう嫌なの! わたしはカイトだけ居たら、他には何もいらないわ!」
「そういう訳にはいかないよ。未来を見ないと……」
ティナの呪いを解除した後、間違いなく領主テオバルトとの対決が待っている。
あの男は、絶対にティナを奪った僕を許さないだろう。
……ティナの安全を確保するなら、領主や大公と戦う事にかもしれない。だったら、ティナは貴族社会へ戻る必要もあるんだ……。僕から一時離れた方が安全かもしれない……。
「未来なんて、もうどうでも良いのぉ。カイトだけが欲しいの、わたし」
「僕もティナが欲しいよ。でもね、ティナが安全に過ごすには貴族社会に戻って領主たちと戦う事も有り得るんだ。そうなった場合、今みたいな事は……」
ぎゅっと僕の首に手を回してくるティナ。
僕もティナを抱きしめるも、こんな事がずっと出来るとは思えない。
ティナとは離れたくはないけれども、地球人との結婚なんて貴族社会じゃティナの隙になりかねない。
「イヤ! わたしはずっとカイトと一緒なの。あ、そうだ! カイトもわたしの夫、公爵家の配偶者として貴族になれば良いじゃないの! イヤらしいテオバルトや意地悪な大公倒して国を平和にして、地球への扉ももう一回開けば、完全に皆ハッピーエンド!」
「ちょ、ちょっと待って! そんなに簡単に大公様を倒すなんて言わないでよぉ!」
すっかり興奮状態のティナ。
眼の色が薄明かりの中キラキラと輝いていて、襲撃を受けて不安だった先程までとはすっかりと違う。
「うん、決めたの! わたしが国を元に、いやもっと素敵な国にしちゃうの! そうして誰にも文句言わせないようにして、カイトとずっと一緒に暮らすんだ。地球にも新婚旅行にいっちゃお! うんうん、これ素敵な未来計画」
うふふと笑いながらも、鼻息も荒く笑顔が怖い。
「もー、ティナったら。まあ、そうなるかどうかは別にして、一緒に居たいのは僕も同じ。だから、これからも宜しくね」
「うん!」
僕達は、唇を触れ合わせる。
そして、しばしそのまま過ごした。
<私めはお邪魔虫なので、録画しつつもスリープモードにしますね>
僕は、意地悪なルークスの呟きを無視して、ティナを抱きしめた。
ルークス君がすっかり暗躍している気もしますが、まあ良いでしょうね。
二人の幸せが最優先ですもの。
では、明日の更新をお楽しみに!
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