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地球生まれでスキル無しな僕、冒険者パーティから追放されるも科学と技術を使って、超絶美少女な幼馴染の異世界貴族令嬢と婚約する~スキルに頼るお貴族様なんて全然怖くない!~  作者: GOM
第一章 僕、ティナと婚約する編。

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第14話 僕、ティナと夫婦ケンカする。

「どうして、わたしに任せてくれないの! カイト!?」

「だってティナには、まだこの仕事は早いよ!」


「おいおい、夫婦ケンカは止めて欲しいんだけど?」

<古来より、犬も食わぬとも言いますけどね>


 僕とティナ、今日はケンカをしている。

 ティナが受けようとしている仕事は、冒険初心者な彼女には荷が重いと思う。

 なので僕がまだ早いというと、ティナが怒ったのだ。


「どーして、カイトはわたしを甘く見るの? これでも、わたしは『天才』なのよ?」

「そうやってスキル自慢するのは、スキルを持てない僕への当てつけかい?」


 僕は、ティナの態度に苛ついてしまう。

 僕たちは逃亡者であるのに、当のティナは冒険者になってすっかり浮かれている。

 「天才」スキルがある為か、ティナは剣術も魔法もあっという間に初級レベルを越えている。

 しかしながら、戦いというものを甘く見過ぎている。

 一瞬の油断が命取りになるのだから。


 ……ティナ。君は、なんとしても僕が守る。だから、僕の前には出ないで欲しいんだよ。


「あ……。そ、そんなつもりは無いよ! だってカイトは凄いんだから!」

「僕だって、今はいっぱいいっぱいなんだよぉ。ティナみたいに、お気楽じゃいられないんだぁ!」


 例えティナに掛けられた呪いが解呪できたとしても、領主テオバルトから逃げ回る生活なのは変わらない。


 あの時、テオバルトを殺していたらとも思ったが、そうなれば大公派閥、ひいては王国全体が僕とティナの敵に回る。

 いつ、暗殺者が送られてくるのか分からない状態での逃亡生活。

 そんな悲惨な運命を、ティナには背負わせたくない。


 ……どうしたら良いんだろうか、僕。


「こら、ケンカはそのくらいにしておけ! アンタらお互いの事をもう少し考えな!」

<カイト様、ティナ様。いい加減になさってくださいませ。我々はチームなのですよ!>


「煩い! 僕は一人で出来る仕事を受けてくる! ティナは大人しくしてなさい。 (あね)さん、後は頼みます」

「カイト!」

「坊や!」


 僕は文句を言う2人を放置して、宿屋から冒険者ギルドへと向かった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「くそぉ。どうしてこうなる!」


 僕は深い森の奥、木漏れ日の中で襲ってくる怪物の群れと戦っている。

 簡単な薬草採取ミッションのはずが、森内で増殖していた大型甲虫に襲われている。


「硬い! くそぉ、火炎魔法は得意じゃないのに!」


 僕は、木々の根で歩きにくい中、師匠譲りの足さばきで甲虫の突撃を避ける。

 そして僕と大きさが殆ど変わらない甲虫の横腹に小太刀を根元まで突き刺し、捻る。

 ドバっと淡い緑色の体液が甲虫の傷から吹き出すのを、僕は避けた。


「これで、やっと二匹。はぁはぁ」


 どうしても重い打撃武器を使えない軽量級の僕は、こういう重装甲で突撃してくる相手の戦いは苦手だ。


 ……虫系は火炎魔法が弱点なんだけど、僕には攻撃魔法は使えないし……。


 魔法を使うには、それ相応の魔力、そして魔力を使う術式が必要だ。

 こちらの学校には通えなかった僕、魔法は師匠テオドルから教えてもらった簡単な物しか使えない。

 使えるのは、隠形系の戦闘補助魔法、生活に役立つ点火、造水、光源などなど。

 攻撃に使える術を、僕は持っていないのだ。


「ちきしょぉ!」

<カイト様、落ち着いて!>


 突撃してくる甲虫をなんとか避け、自分から大木にぶつかった奴の首に、僕は小太刀を突き刺して切断する。


「まだ、何匹も居るのか。こうなったら……」


 僕は、秘蔵の地球武器を使う事を考える。


「こんな奴らに、残り少ない秘蔵品を使う事になるなんて……」


 僕は背嚢から破片手榴弾を出そうとし、眼を甲虫から一瞬離してしまう。

 その時、背後からの突撃を喰らって、軽い僕はダンプカーに跳ねられる様に数メートル吹き飛ばされてしまった。


「くぅぅ。あ、しまった!」


 ……ティナに背後を気を付けろとか、甘く見るなって言ってたの。僕自身が冒険者を甘く見てたんだ。ああ、こんな処で死んじゃうなんて……。ごめん、ティナ。僕が悪かったよぉ。


 受け身はするも背中を強く打っていて、倒れたまま身体が痺れて身動きが出来ない僕。

 自分に迫り来る大きなコガネムシっぽい甲虫を見ている事しかできなかった。


「ティナ!」


 僕は最後に目を閉じ、後悔しながらティナの名前を叫んだ。


「カイトぉ! 助けに来たよぉ!!」


 そんな時ティナの声が響き、目を開くと僕を襲おうとしていた甲虫が燃え上がった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「カイト! どうして、わたしから離れちゃうの! ずっと一緒だって言ってたじゃない!」


「はぁ。そんなに文句言うのなら、ケンカなんてしなきゃ良いのに」


 食堂で朝からワインを飲んで、文句ばかり言うティナ。

 カイトに逃げられて、一人寂しがっている。


「わたしだってホントは不安なんだよぉ! 一人で全部背負わなくても良いのにぃ!」


「まあ、そこが男の意地って奴だな。可愛い彼女には見栄を張りたいものさ。ただ、そこで彼女の事が見えなくなるのは、まだまだ未熟者だね」


 ぐちぐちと文句をずっと呟くティナ相手にグローアは、苦笑しつつもなだめるように話す。

 人生経験が長いグローアから見れば、成人になったばかりや成人直前の二人は、まだまだ子供。

 お互いを深く愛し合っている分、その愛情に振り回されているのが可愛くて実に微笑ましく思える。


「まあ、今日のところは坊やの思う様にさせておきな。坊やにも頭を冷やす時間が必要さ」


「うん。わたしも言いすぎちゃったし……」


 ティナも、自分の発言が酷かったのを思い出す。

 カイトが一番気にしている「スキル」について、自分の物を自慢するように言ってしまったからだ。


<グローア様! ティナ様! 申し訳ありません、カイト様がピンチです! 現在、南の森の中で大型甲虫と交戦中です>


 そんな時、何処からかルークスの声が聞こえた。


「ん? 『賢い箱』って、坊やと一緒じゃないのかい?」

「え! カイトが危ないの!?」


<カイト様がお持ちになられているのは、遠隔端末のひとつに過ぎません。ワタクシの本体は王都の地下にあり、各端末とは量子暗号超空間通信で繋がってますから。あ、今はそれどころではないのです!>


 ティナがカイトに貰ったペンダントから、ルークスの声が聞こえる。

 ティナの安全のために、カイトは小型端末を持たせていたのだった。


「じゃあ、坊やを迎えに行こうか!」

「はい! カイト、今度はわたしが助けに行くよ!」

<早速の夫婦ケンカ、困ったものですね>


 でも、仲直り出来るのなら、それで良いじゃないでしょうか?

 今まで違う生活をしてきた二人、習慣も環境も大きく違いますからね。

 時にはぶつかり合い、本音を言い合うのも大事です。

 では、明日正午の更新をお楽しみに!

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